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賢者になったドワーフ娘(仮)  作者: いりよしながせ
賢者になったドワーフ娘
124/128

124.最後の製作

城下町とを結ぶ魔動鉄道の試運転も順調に行われ、それに合わせ、乗務員、駅、線路維持管理業務、車両のメンテナンス要員の教育も行われ約1カ月が経過し、やっとで開業の運びとなった。


開業の式典は城下町側で行われ、王様を始め多くのマルティ王国の偉い人たちが参加をした。ただ、ドワコ領側からは、最大の功労者であるドワコは参加しなかった。代わりとしてドワコ領からはデマリーゼが出席している。体調不良説など色々な噂が流れたが、王様や王妃など一部の人はその理由を知っていたが、王妃が気を利かせ他の人には言わないように配慮をした。もちろん王子もその事を知らなかった。


そして無事に式典が終わり魔動鉄道が開業した。運賃は平民にとっては馬車を手配するよりもはるかに価格が低く設定されているため、気軽に利用して移動が出来るようになっている。それ以外は値段がそれ相応に設定してあるので、それなりの利用がありそうだ。



その頃ドワコはと言うと・・・。


「ドワコさん。お加減はどうですか?」


エリーが優しく問いかけるが、ドワコはそれ所じゃなった。


「もうダメかも・・・ちょっときつい・・・」


ドワコは産気付いていた。

すでに村の助産師が砦に来ていて万全の状態で準備が整えられていた。



それから少し経ち、ドワコは元気な男の子を出産した。


「ドワコさんお疲れ様でした」


エリーがドワコの汗を拭き労った。


「さすがにこれはきつかったかも。でも何か充実感はあるかも。」


ドワコはベットで横になったまま、隣で布に包まれた状態で置かれた生まれたばかりの子供を見ながら言った。


「今日は一緒に生まれた子供と過ごすと良いですよぉ。でも明日からはメルディスがその役目を引き継ぎますので、ゆっくり休むのはそれからですね。」


そう言ってエリーは部屋から出ていった。そして部屋にはドワコとその子供が残された。


「なんか不思議な感覚だな。まさか子供を産んでしまうとは・・・。」


元々男だったわけで、勢いだったとはいえ子供まで生んでしまった。なかなかできない経験をしたなと生まれた子供の頭を撫でながら思った。


「でも、こうしていると幸せな気分になるかも。」


ドワコは少し休むことにした。



ドワコ領はドワコが元気な男の子を生んだと言う事が広がりお祝いムードになっていた。ドワコ領側からも中央広場で振る舞い酒や各種食べ物や飲み物が提供され、領民はそれを片手に大いに盛り上がった。



翌日、ドワコの部屋にメルディスが来た。


「ご主人様、あとの事は私にお任せください。責任を持って立派な子に育て上げてみせます。」


「メルディス。よろしくお願いしますね。」


ドワコは生まれた子供をメルディスに託した。


「それではご主人様はゆっくり休んでください」


そう言ってメルディスはドワコの子供を抱いたまま部屋から出ていった。

同じ砦内にいるので会おうと思えば会えるが、少し寂しい気持ちにドワコはなった。


「さてと、ドワコさん。」


入れ替わりでエリーが部屋に入って来た。


「どっ、どうしたの?」


「いつまでも名無しじゃ可哀想ですよね?名前決めました?」


「あっ、その話か。レオって名前はどうかな。」


「良いんじゃないですかぁ?こっそりと父親の文字を入れて来るとはさすがドワコさんです。」


「たまたまだから」


エリーに痛い所を付かれたドワコだったが、何とか釈明してみせた。



翌日からドワコは通常の業務へと戻った。来る日も来る日も仕事に追われ、あっと言う間に半年が経過した。


「カカ様今日もお仕事ですか?」


既にそれなりの言葉を話すようになったレオがドワコに言った。


「ごめんなさいね。今日もお仕事だからメルディスの言う事をよく聞いて良い子で過ごすのですよ?」


「はいカカ様」


「それじゃメルディス、お願いしますね。」


「はい、かしこまりました。」


メルディスにレオを任せ、ドワコは仕事を始めた。ドワーフの子供の成長は早いようだ。生まれて半年で言葉を話し、普通に歩いている。人間より3~5倍程度早いようだ。だが、成長もすぐに止まり、それから先は体が大きくならないらしい。これは創造主が過度に強くなり過ぎない為に施したものだという説もあるが、真意は定かではないそうだ。


ドワコが仕事に復帰してからは内政はさらに磨きがかかり、転移組の貢献も重なり村の発展に大きく寄与した。今でも村と名乗っているが、実際は都市クラスまで発展している。外的には村と名乗っておいた方が周辺国から警戒されないだろうと言うエリーの配慮だ。



それからさらに3カ月が経過し、内政は完全に軌道に乗った。あとはこれを維持するだけで、領の運営が授分できる程度になった。


「ドワコさん、そろそろでしょうか。」


エリーが執務室でドワコに切り出した。」


「そろそろって?」


「賢者の石を作る頃合いだと思います」


「そうか・・・そろそろお別れの時が近づいているんだね」


ドワコは転移組を元の世界に戻さなければいけないと考えていた。仮に子供をこの世界に置いたままでもそれを行わなければいけないと考えていた。(実はこれはエリーの擦り込みによる物で、実際は拒否権もあった事を知るのは後々の事になる)



砦の人気のない場所にあるドワコの工房にはドワコとエリー、そしてドワミがいる。


「ドワコ。何か用?」


ドワミはここに来るように告げられただけのようだった。


「忙しい所ごめんね。実はドワミにお願いがあって・・・。」


ドワコが切り出した。


「私で出来る事なら良いんだけど・・・」


「その前に少し待ってね」


そう言って賢者の石を作る素材を製作の用の箱に放り込んだ。そして王様からもらった杖の先に付いている宝石を力業でもぎ取り同じく放り込んだ。そしてクリエイトブックを取り出し賢者の石を製作した。


「綺麗な石だね。これ何に使うの?」


「元の世界に戻る為・・・かな」


ドワミの問いかけにドワコが答えた。


「え?それってどういう事?」


ドワミが聞き返した。


「ここは私が説明しますね。実はドワコさんはここの世界の方では無いんですよ。もっと遠くの場所から来た存在・・・かな。この国の宗教って知ってる?」


エリーが代わりに説明を始めた。


「まあ、私は他所から来たからあまり関心は無いけど、昔この国を救ってくれた女神様を信仰するんだっけ?」


「そうそう、それ。」


ドワミの答えにエリーが肯定した。


「それで、その女神様と言うのがドワコさんなんです。」


「なんか女神様と言われたら納得できるかも。ドワコって何をさせても規格外だし。」


ドワミは納得したように言った。


「実はドワコさん天界に帰らないといけないんです。その為にこの賢者の石が必要になるんです。」


「えっ?これ賢者の石だったの?製作に携わる者はこれを目標にしていると言われるくらいの伝承級の品物って聞いたことがあるけど、本物って存在したんだね。」


ドワミは驚いたように賢者の石を見回した。


「あと、お供の人も一緒に帰る事になるかな。聖女のメロディさんとドワコさんがミダイヤ帝国から連れて来た5人が該当します。」


「えっ?あの人達って天界の人だったの?」


「まあそういう事になります。それで、ここからがドワミさんにお願いになります。後はドワコさんから説明しますね。」


そう言ってエリーはそっと一歩下がりドワコに譲った。


「えっと、ドワミにお願いと言うのはこれを預かって欲しいんだ。」


ドワコはクリエイトブックを閉じてドワミに渡した。


「使い方は見ていたから覚えているよね?レオが大きくなるまで預かっていてほしいな。その間、魔動機関係の製作はドワミにお願いするよ。」


「そういう事ね。女神様のお願いじゃ断れないよね。わかったよドワコ。これは預かっておくね。」


そう言ってドワミはドワコからクリエイトブックを受け取り魔動機関係、魔石燃料などの製作にかかわる引継ぎを受けた。

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