122.乳母
翌日、ドワコ達一行はドワコ領へと戻る事にした。主力部隊は既にドワコ領へ帰投しており、残っている人を輸送するため数台の魔動装甲輸送車だけ残っている状態である。
ドワコとエリーが1台の魔動装甲輸送車に乗ろうとすると、自称奴隷のエルフ女メルディスが一緒に乗って来た。
「2人きりってズルいですよ。私もご主人様と一緒に乗ります。」
そう言ってドワコの横に座った。ちなみにドワコを挟んで反対側にはエリーが座っている。
「エリー様怒らないんですね?」
恐る恐るメルディスはエリーに聞いた。
「怒って欲しかったらいつでも怒りますけど?一つ頼みたい事があるので今回は大目に見ます。」
すでに魔動装甲輸送車は残っている人が分乗し、ドワコ領を目指して走行している。
「私に頼みたい事ですか?」
「とても重要な話です」
「エリー様の頼みなら何でも聞きますよ?私奴隷ですし。」
「聞き分けが良い子は好きですよ」
そう言ってエリーはメルディスの頭を撫でた。
「それじゃ遠慮なく言うよ。メルディスにお願いとは乳母になって欲しいって事です。」
「乳母ですか?どなたのお子さんですか?」
「ドワコさんの・・・」
メルディスが固まってしまった。
「・・・えっとご主人様とエリー様の子ですか?」
「なら良いんだけど・・・残念ながら違う方との子です。ただ誰の子かは詮索しないでくれると助かるかな。」
「はぁ・・・」
メルディスはわかったようなわかっていないような微妙な顔をしている。
「それで引き受けてくれる?」
「ご命令と言われるなら。引き受けますよ?」
「ありがとう。ドワコさんもそれで良いですか?」
「は、はい」
実はよくわかっていないドワコだったが、とりあえず了承の返事をした。
「一応私の予想通りなら男の子が生まれるはずなので、メルディスが上手くやれば妻にしてもらえるかもだよ?」
「ご主人様が私の義母になるんですね・・・それはそれでイイかも。お義母様と呼んでいいですか?」
エリーの冗談交じりの提案を本気になって聞いているメルディス。本当にやりそうな気がするとドワコは思った。
「いいよねエルフは寿命が長くて。若い状態を長年維持できるからドワコさんの子供が成人しても十分射程圏内だし、さすがにこれで86歳だなんて誰も思わないよねぇ。」
「「え?」」
エリーの一言にドワコとメルディスは驚きの声を上げた。
「メルディスって86歳だったの?」
「恥ずかしいから黙ってたはずなのにどうして知ってるんですか?」
ドワコが聞くと本人も認めた。
「私に隠し事をしようなんて400年早いですよぉ」
「さすがエリー様・・・」
メルディスは白旗を上げた。
「ドワコさん、ここでの慣習で上級貴族は乳母が子育てをするのは話しましたよね?」
「はい」
「ここで不思議な事が1つ起こるんですよ」
そう言ってエリーはメルディスの服を剥いだ。
「キャー。いきなりこんな所でハァハァ。私興奮してきますよ?」
素っ裸にされたメルディスは白い肌がほんのり赤みがかって興奮してきているようだ。
「まあ今回は下脱がす必要は無かったんだけど・・・ついでと言うか手が滑ったというか・・・てへぺろ」
エリーが可愛くてへぺろをしてみせた。
「それでですね・・・よいしょっと」
エリーはメルディスの豊満な胸を揉みだした。
「エリー様そんな事をされたら感じてしまいます。ハァハァ。」
「こんなものかな・・・うりゃ」
「ひゃん」
メルディスは可愛い声を上げた。すると先からは白い液体がツーっと出て来た。
「はい、開通完了!貴重なエルフ乳ですよ。ドワコさん味見してみます?」
エリーに言われドワコは非常に興味が出てしまい、言われるがままに片方の胸に食いついた。
「それじゃ、もう一つは私が。」
そう言ってエリーは反対側の胸に食いついた。
「微妙に甘いような気がします」
「私も知識として知ってはいますが、味わうのは初めてです。これはなかなか美味しいかも。」
ドワコとエリーはチウチウとメルディスの母乳を飲んでいる。
「なんか2人共赤ちゃんみたいです」
メルディスは胸に吸い付いているドワコとエリーの頭を優しく撫でた。その顔はお母さんの顔になっていた・・・ような気がする。
2人は母乳を堪能した後、メルディスの服を整えて何事も無かったかのような雰囲気になっている。
「しばらくはこの事は他言無用でお願いしますね」
エリーは前で運転している兵士に言った。兵士はコクコクとうなずいた。
それから少ししてドワコたち一行はドワコ領に到着した。
「久しぶりに戻って来た気がするよ」
「実際は1カ月くらいしか経ってませんけどね」
ドワコが言った事を横からエリーが釘を刺した。
到着に合わせ砦にいる人たちがドワコ達を出迎えに出ていた。
一緒に降り立った転移組の5人はドワコ領の様子を見て驚いているようだった。
「これだけ技術レベルが違えば帝国は勝てるはずがないな」
軍事関係に少し詳しい直樹がボソリと言った。
「お帰りなさいませドワコ様」
そう言ってデマリーゼが出迎えた。
「出迎えありがとう」
うしろの方からヒソヒソ声が聞こえて来た。
「ちょっとあの人、金髪の縦ロールだよ?本物初めて見た。ですわとか言うのかな?」
声からして莉奈だろう。本人が聞いたらきっと怒るよ。
実はドワコも初めて会った時に思ったが口には出さなかかった。
「それじゃ三浦さんたちは、しばらくこの領地を散策してみると良いよ。案内係に・・・そうだな、ジェーンとジェシーお願いできるかな?」
「「かしこまりました」」
「これ行動費ね」
そう言ってドワコはポケットマネーから金貨3枚を渡した。
「お預かりします」
ジェーンが代表で受け取り、そのまま5人を案内し魔動鉄道の駅へ向かった。
「それじゃ幹部クラスを集めて今後の方針について話し合います。デマリーゼ、声かけをお願い。」
「かしこまりましたわ」
デマリーゼが会議の準備に砦に戻った。
ドワコ領の幹部が会議室に集まっている。
「皆さんお疲れ様です。一番の懸案だった隣国との戦闘も終わり、ようやく内政に力を入れることが出来ます。軍部の方は引き続き魔石集めと訓練をお願いしますね。」
ドワコは会議が始まると軍部に対して指示を出した。
「次に人口の推移についての報告をお願いします」
「はい、現在この領の人口は2万人程度となっています。ミダイヤ帝国から難民として保護していた約1000人が故郷に戻り、城下町から避難してきた人でここに留まった人が12000人程度います。」
文官が報告した。
「ちょっと城下町の人を取りすぎたかな?」
「そうですね。思ったより多くここに残りましたね。」
ドワコの心配にエリーも肯定した。単純計算で城下町から5万人避難してきていたので38000しか戻っていないという事になる。いきなり人口の2割強が減った訳だから少々心配だ。
「これについては、この後の議題になる事案で、一緒に話し合うという事で次行きましょう。」
エリーが議題を先に進める。
「次にこの領と城下町を結ぶ街道整備についてと鉄道敷設についてです。街道整備については今までの実績があるので従来通りのやり方で問題ないと思います。ただ若干距離が延びるので工期もそれなりにかかると思います。あと、それに合わせて鉄道の敷設も行います。これについては親方とドワミを交えて話を進めて行こうと思います。次に元ムリン城近辺の再開発事業はどうなっていますか?」
ドワコが文官に尋ねた。
「再開発事業は土地、交通整備についてはすべて終了。農地確保もほぼ完了しています。町整備に関しては小規模の商業施設の建設、その他必要になる建物の建設もほぼ完了しています。分譲住宅地の販売状況は面積の30%程度が売れ、そのうち4割程度が住宅の着工に入っています。ただ現時点で完成したという報告はありません。」
分譲住宅地はかなり広大な面積が確保してある。3割売れたなら良い方だとドワコは思った。
その他必要な事項を話し合い会議は終了した。




