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賢者になったドワーフ娘(仮)  作者: いりよしながせ
賢者になったドワーフ娘
121/128

121.転生者と転移者

今は食事の時間ではないために、食堂にはドワコ達8人しかいない状態だ。エリー、ドワコ、メロディが座り、テーブルを挟んで裕太達5人が座っている。


そして向かい合って座っている5人をメロディが見ている。


「あっ、そうか。見た事あると思ったら、キャンプに出掛けた大学生5人が行方不明になったって連日テレビのニュースやワイドショーで出てた人たちだ。何度か見た記憶があるかも。」


思い出したかのように、手を打ってメロディが言った。


「もしかして聖女様は、俺たちと同じ世界の人ですか?」


裕太がメロディに言った。


「まあそうなるかな。でもこれは他の人には言わないでね。あなた達はそのままの状態で来ているようだから転移だけど、私やドワコ様は何らかの原因でこの世界に生まれ変わった転生になるのかな。」


「えっドワコさんも転生された方だったんですか?」


「え?」


メロディが説明したが、ドワコの事については5人は知らなかったようだ。しまったと言う顔をしたが遅かった。


「まあそういう事になります。保護した理由も同胞だと言う事が大きな理由になります。」


「それでですか。俺たちの技術もいらないと言われたので疑問に思っていました。」


ドワコが答えて裕太は納得したようだった。


「それでドワコ様は、これからどうするつもりなんですか?」


メロディはこの5人をどうするのか気になるようだ。だが、ドワコもその理由が良くわかっていない。そこでエリーに聞く事にした。


「エリー、どうしてこの5人が必要なの?」


「別に必ず必要と言う訳では無いですよ?ついでみたいなものですよ。」


エリーが答えた。7人は良くわからないと言った様子でエリーを見た。


「実はですね。この世界には賢者の石と言うご都合主義的な石が存在するんですよぉ。ドワコさんは存在はご存知ですよね?」


「まあ、クリエイトブックに載ってるしね。」


そう言ってクリエイトブックを開き皆に見せた。


「これは何ですか?」


メロディがドワコに聞いた。


「これはクリエイトブックと言って、この本に書かれている素材を合成すると上に書かれている物が作れると言う本なんだ。それで、ここに賢者の石って書いてあるでしょ?この下に書かれている素材を集めると作れると言う訳。」


「なんかゲームみたいですね」


ただ、クリエイトブックには名称は書いてあるが、そのアイテムがどういう効果があるかなどは書かれていない。


「実は、素材は全部揃っているんですよ。」


そう言ってエリーは何処からともなく素材を取り出し並べていった。


「でも、これ1個足りないよね?」


ドワコが素材が1つ足りないのに気が付き言った。


「今日の任命式で杖を貰ったでしょ?その先っぽに付いている宝石が最後の1個です。」


「なんですと!」


エリーが言ったことにドワコは驚いた。


「この杖を作ったのは天才魔導士のエリカだからね」


「エリカ様と言うと・・・女神様と一緒に戦った伝説の天才魔導士のエリカ様ですか?」


メロディが神殿で嫌と言うほど教え込まれた知識にある人物である。名前だけですぐにピンと来たようだ。


「そうですよ。天才魔導士のエリカですよ。エッヘン。」


エリーは無い胸を張った。だが、ドワコ以外は何故エリーがその様な態度をするのかよくわからなかったようだ。


「それでその賢者の石と言うのはどのような効果があるの?」


今までほとんど口を開かなかった。小野麻衣が聞いた。


「麻衣ちゃん。それは良い質問だね。」


エリーが、政治関係の事をわかりやすく説明してくれるテレビで良く見る人の口調で言った。


「賢者の石と言うのは色々な効果があるけど、今回はドワコさんやメロディさんも含めて元の世界に戻るために使います。」


「でも私、向こうの世界では死んでるはずですけど???」


「同じく」


メロディとドワコが言った。


「実は2人共、実は死んで無いんですよ。その辺の説明は今説明してと言われても無理なんですけど、後でわかると思います。」


エリーはこれ以上聞くなと言う雰囲気で答えた。


「それじゃ俺たち本当に帰ることが出来るのか」


「帰れるんだ」


5人共帰れると聞いて本当に喜んでいるようだ。


「ただ、一つ条件があって1年ほど待ってほしいんです。ドワコ領はまだまだやらなければならない事業が山積みで、これを片付けなくてはいけません。少しでも早く終わらせるために、5人にも協力してほしいです。」


エリーが条件を付けて協力を要請した。


「確実に返してくれるならそれくらいお安い御用だ。出来る範囲になるが協力させてもらおう。」


転移組5人の協力も受けられるようだ。ドワコはこれから忙しくなりそうな予感がした。


「それでは明日、ドワコ領へ移動しますので準備しておいてくださいね。」


エリーがそう言って3人は宿を後にした。



夕食の時間まで少し時間があったので、以前ドワコが貧民街をゴッソリ建て替えたホープタウンへ行ってみるとこにした。


「この場所って、ドワコ様が聖女をしていた時、自費で建て替えちゃったと神殿でも噂になった場所ですね。以前は凄く活気がある集落だと聞きましたけど、あまり人の気配がしませんね。」


メロディの言う通り、真新しい建物群だが人の気配がほとんどなく、ゴーストタウンのようになっていた。


「これはどういう事?」


建て替えに日数はあまりかかっていないが、多くの労力とお金を使い建て替えたのだが、人がいなくなっていた。疎開した人たちは既に城下町に戻ってきているはずだ。ドワコは不思議に思った。


「ドワコさん、ここに人がいないのは当然ですよ。」


「どうして?」


「もっと稼ぎが良くて住みやすい場所を見つけたからですよぉ」


「あーなるほど。わかった。疎開したまま居付いてしまったわけね。」


ドワコ領の賃金は、この国の中では圧倒的に高い。おそらく周辺の国と比べてもその水準を維持している所は無いはずだ。それが一番下の層の人でも同じように適用される。金額だけで見れば城下町の比較的生活が豊かな平民並みの賃金が支払われる。しかも生活インフラも整っているため住みやすい。それは帰りたくなくなるのもわかる気がする。


「うちの領としては働き手が増えるので歓迎したい所だけど、城下町の働き手が減るのはマズくないかな?」


「そうですね。このまま行くと良くないかも知れませんね。でも今後の交通インフラの整備でその差も減って来ると思いますよ。城下町も経済が活性化されて自然と賃金も上がってきますよ。」


「それなら良いんだけどね」


ドワコは改めてドワコ領と城下町を結ぶ交通インフラの整備に力を入れようと思った。

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