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113.町の攻防戦

先ほどサンドラがいるサザランドにエリーから連絡が入った。


数日後に、このサザランドとミダイヤ城との中間付近にある町で、今はドワコ領が占領している所に、敵の大規模な侵攻作戦が計画されていると知らされた。


サザランド城はサンドラの部隊が侵攻する時に破壊されたために、司令部は港に停泊している試作船に置かれている。すでにサザランドの街に空港が作られドワコ領の前線基地として機能している。軽空母は積み荷と艦載機をすべて降ろし、補給の為ブリオリに帰還している。艦載機は空港に配備されドワコ領から飛び立った魔動戦闘爆撃機と共にかなりの数が待機している状態だ。


「それで今回は町に攻め入る敵を返り討ちにするよう指示が出ていますけど・・・」


サンドラが第2、第3、第4護衛隊の隊長であるベラ、ケイト、カーレッタの前で言った。


「これはエリー様からの指示ですよね・・・そうすると作戦的には可能だと言う事ですね。敵数は5万、対する我々は総数260程度で数の上では圧倒的に不利ですね。」


カーレッタが言った。あくまでも人数での比較だ。


「主砲の射程内なら良かったのですけど、今回は戦場が内陸部になるために使用はできませんね。」


今回は圧倒的火力を誇る試作船の主砲が使用できないのをベラは残念がる。


「このサザランドと周辺を守るためにサンドラの部隊を100ほど残し、第2、第3、第4護衛隊およびサンドラ隊が航空機による支援を行うと言う形になりそうですね。」


ケイトが人数の振り分けを提案した。

そして大まかな作戦が決まり、各部隊は移動を開始した。


今回の作戦ではわずかな守備隊を残し、ほぼ全軍で町の防衛にあたる。魔動戦車6台、魔動自走砲6台、魔動装甲輸送車9台、魔動戦闘爆撃機多数、偵察用の魔動飛行機が数機か参加することになり、ドワコ領の保有する魔導兵器群の7割程度が集結する事になった。


部隊が町への移動を完了し、防衛作戦が始まった。まずは偵察用の魔導飛行機が飛び敵軍の位置を把握する。敵軍の人数が多いため、すぐに発見することが出来た。その方角に魔動自走砲が砲塔を向け準備を始める。位置が特定できた時点でサザランドの空港から魔動戦闘爆撃機が飛び立ち敵軍に向かい爆弾を降下していく。これが何度も繰り返されたが、敵軍は進軍を諦めず、魔動自走砲の射程に入った。6台の魔動自走砲から一斉に砲撃が開始される。およそ射程は15kmあるので敵兵が町に到着する頃にはかなりの数が減ると思われる。降り注ぐ砲弾と空からの爆撃の中を抜けてきた敵兵はおよそ5000ですでに9割の損傷率だ。そこへ魔動戦車と魔動装甲輸送車が突入し、掃討作戦へと移る。硬い装甲におおわれた魔動戦車と魔動装甲輸送車には歯が立たず、敵兵は軍隊としての統率をすでに失っていた。逃げるミダイヤ帝国の兵士たちを容赦なく倒していく。戦闘は決着し、兵器の性能で圧倒するドワコ領の護衛隊の圧勝であった。




「・・・が今回の戦闘の戦果になります。」


ミダイヤ城の会議室で行われている軍議で武官より報告された。

戦闘に参加者した前回の会議に出席している者はほとんどがいなくなり、皇帝とギルバートを除くと運よく撤退できた継承権を持つ者が僅かに残るだけとなった。


「すでに我が国はマルティ王国へ対抗できるだけの戦力が無くなった訳だが・・・。」


皇帝が力無く答えた。

既に戦闘から数日経過しており、抵抗する戦力を失ったミダイヤ帝国は次々と領土を奪われていき、残っているのはミダイヤ城下町と城だけになってしまっている。


「そうだ、奴らなら何か起死回生の策を持っているかもしれん。連れてまいれ。」


皇帝が命令し、近衛兵が会議室を出て言った。

そして少し経ち、鉄の首輪をかけられ、手を拘束された状態で5人の男女が連れて来られた。ドワコは1人に見覚えがあった。以前、免許の写真で見た三浦裕太だ。髪はぼさぼさ、髭も伸びた状態だったが、服がこの世界の物とは異なる物を着ていた。それは他の4人も同じであった。経年の為かかなり汚れているように見えるが、明らかに縫製やデザインが異なっている。


「お前たちには以前もう用無しだと言ったが、ここで一つ仕事をしてもらおう。結果次第ではその首輪を取って開放してやってもいいぞ。」


その言葉を聞いた5人は驚いたように顔を上げた。


「いま我々の国は敵国の侵攻を受け危機的な状況に陥っている。この打開策が無いか聞きたい。」


皇帝がそう言い、武官が5人に現状の説明と敵国の戦い方について説明をした。


「敵国・・・マルティ王国ですが、航空機による攻撃を行っているようです。」


5人の内の一人が答えた。


「航空機とは初めて聞く言葉だ。どういう物か説明せよ。」


皇帝が説明を求めた。


「航空機とは空を飛ぶことのできる機械です。今回マルティ王国が使用したと思われる物は、それに地上攻撃用の爆弾と言う物を積み、敵陣にそれを降下する事で爆発させ損害を与える爆撃機と言うタイプだと思われます。」


「それに対抗する手段は無いのか?」


「対空砲、または戦闘機により空から直接攻撃すると言う事になると思います。」


「戦闘機と言うのは?」


「これは空での戦いに特化した航空機です。このような爆撃機に対しては多大な戦果を挙げる事が可能だと思います。」


「ではそれを作ってもらえないか?」


「それは無理です。私たちには航空機に関する知識も、動力に関する知識もありません。なので我々で作る事は不可能です。」


皇帝の問いに無理だと答えた。


「では、何処からともなく飛んでくる爆発する物は何かわかるか?」


「野砲か自走砲の類かと思いますが、現物が確認できていない以上申し上げることが出来ません。」


「ではこちらの攻撃が全く効かなかった鉄でできた馬車に付いて何かわかるか?」


「形状を聞く限りでは戦車と装甲車ではないでしょうか?」


「詳しく教えてくれないか?」


皇帝が詳細を知りたいようだ。


「戦車とは戦うための車。硬い装甲におおわれ、火力のある戦車砲・・・大きい銃みたいなものです。が搭載され戦いに特化された物です。装甲車は、主に兵員の輸送等に使いますが、これも機銃などの兵装があれば装甲を生かし前線で攻撃用として使用する事も可能です。これらが出る戦闘では銃や剣や槍、弓などを装備する歩兵は全く役に立たなくなります。これの対処法は同等の戦車で対抗する方法もありますし、対戦車砲で対抗する事も出来ます。また航空機による攻撃も有効です。ですが我々5人ではそのような技術は無く、どうする事も出来ません。」


「マルティ王国は一体どこでそのような技術を手に入れたのだ」


5人の内の1人が答え、皇帝が悔しそうな表情で言った。


「わかった。5人を元の場所へ戻してまいれ。」


「「はっ」」


近衛兵が5人を連れて行った。


「役立たず共が・・・。」


皇帝が小さな声で言った。

そして軍議は振出しに戻った。

戦車などの数え方ですか、本来、両と表記する方が正しいかもしれませんが、車の発展型と言う意味で台を使用しています。

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