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110.2人のメイド

ドワコとエリーは冒険者ギルドへやって来た。


「えっと・・・あったあった。これこれ」


エリーは依頼の書かれた紙が貼ってあるボードの前に行き1枚の紙をはがした。近くで見ていた冒険者が話しかけて来た。


「おいおい、お嬢ちゃん冒険者ギルドは初めてかい?これは金ランクの冒険者が受けられる依頼だぞ?お嬢ちゃんたちが受けられる依頼は黄色の紙じゃなくて茶色の紙だぞ。」


「「「はははは」」」


その様子を見ていた冒険者たちは大笑いしていた。

その人たちを無視してエリーはドワコに言った。


「貴族の身辺警護の依頼です」


そう言って依頼書をドワコに見せた。


(えっと何々?ある貴族の護衛をする任務だ。金ランク2名、報酬は応相談、面接を受け条件に納得できるなら依頼が始まるようだ。断った場合のペナルティも無いようだ。とりあえず初期の条件である金ランク2名は満たしているので後は面接次第になりそうだ。)


エリーとドワコが受付カウンターに行き手続きをする。


「あの嬢ちゃんたち本当に依頼書を受付に持って行っちゃったよ」


「「「はははは」」」


笑い声が聞こえて来た。


「えっとギルドカードの提示をお願いしますね」


受付嬢がドワコとエリーにギルドカードの提示を求めた。


「「はいどうぞ」」


2人は声をそろえてギルドカードを提示した。


「ありがとうございます。お二人とも条件を満たしているので手続きに入らせていただきますね」


「「「エー」」」


周りから大きな声が上がった。



ドワコとエリーは依頼先の屋敷へ向かった。


「ここだよね?」


「ここですね」


貴族の護衛依頼だと思って来たドワコだったが、その屋敷・・・と言うより普通の一軒家なのだが、どう見ても貴族の屋敷には見えない。


「本当にここでいいの?」


「大丈夫ですよ」


そう言ってエリーは敷地に入っていった。ドワコも慌ててその後に続いた。

そして玄関のドアの前に立ち呼び鈴を鳴らした。家の中に「チン」と言う音がして中から年配の女性が出てきた。服装からして家政婦さんとかそういう感じだ。


「どちら様でしょう?」


年配の女性がドワコとエリーに言った。


「私たち、冒険者ギルドの依頼を見てきました。」


「そうですか。ようこそいらっしゃいました。どうぞお入りください。」


主人に伺いを立てるわけでもなく家の中に案内された。そして奥の部屋の前に立ちドアをノックをした。


「ぼっちゃま。冒険者ギルドから依頼を見てきたという方がいらっしゃいました。」


「そうか、入ってくれたまえ。」


「失礼します」


年配の女性は軽く一礼し部屋に入りドワコとエリーを招き入れた。


「よく来てくれた。えっとギルドの依頼を見てきたのだな?2人ともかなり幼そうに見えるが、本当に金ランクなのか?」


家の主人が言った。年齢は若く幸薄そうな青年のように見える。


「どうぞ」


ドワコとエリーはギルドカードを見せた。


「本当に金ランクだったんだな・・・失礼した。」


「それで依頼と言うのは?」


エリーが主人に聞いた。


「依頼内容は簡単だ。私の護衛をしてもらう。問題なのは報酬の事だ。」


依頼書には応相談と書かれていたのでドワコには金額がわからない。


「実はだな・・・今持ち合わせが余りなく、一時金と言う形で最初に払い、出世した時に残りを払わせてもらいたい。と言う内容なのだが・・・。実は何人か依頼を見て来てくれたのだが、この話をした時点で怒って帰ってしまったのだ。」


「そりゃそうでしょ。報酬を出世払いでって言ったら誰だってそう言うと思いますよ。特に金ランクなら冒険者の中では上位クラスになるし、それなりにプライドもあると思いますから。」


ドワコは正論を主人に言った。


「エリーもそう思うでしょ?」


ドワコはエリーに同意を求めたが異なる返事が戻ってきた。


「出世払いとはお金以外の物を求めても良いのですか?」


「それは私が出来る範囲の事になるがそれでも良ければだが。」


「その言葉忘れないでくださいね。わかりました。引き受けましょう。」


「「え?」」


ドワコと年配の女性の2人が声を上げた。この女性も無理な依頼だと思っていたようだ。


「そうか。引く受けてくれるか。私はギルバートだよろしく頼む。」


「私は魔導士のエリー、そしてこちらが剣士のドワコさんです。ちなみに私たちはとある国で上級貴族の側近も務めていたこともありますので、それなりの作法は身に着けていると自負しております。よろしくお願いしますね御主人様。」


「よろしくお願いします。御主人様。」


エリーは手早く挨拶をして、その後に慌ててドワコが続いた。


「それでは私たちは明日から任務に就かせていただきますので、今日はこれで失礼します。」


ペコリと頭を下げエリーは退室しドワコもその後に続いた。


「ご無理を言って申し訳ありません。まさか引き受けていただける方がいるとは思いませんでした。坊ちゃまをよろしくお願いします。」


「私たち体は小さいかもしれませんが、大船に乗った気持ちで安心してください」


そう言ってギルバート邸を後にした。



「エリー、あの依頼受けてもよかったの?」


宿に帰る途中ドワコはエリーに尋ねた。


「そうですね。本当に冒険者を馬鹿にした内容で普通なら受けませんよ。まあ私たちは目的さえ達成できれば、お金持ちなのでそんな些細な事は気にしませんけどね。」


確かにドワコは今まで聖女として国からもらった報酬、領地が交易で稼いだお金など多額の収入があり、かなりお金持ちになっている。エリーも領主の補佐と言う立場でそれ相応の報酬を貰っているので、生活には困っていない。


宿に戻り、夕食を宿で取り、シャワーを浴びて早めに寝ることにした。もちろんエリーと一緒だ。ドワコはエリーの心地よい暖かさですぐに眠りについた。朝起きると2人は裸で抱き合っていた。


「ドワコさん、おはようございます。昨夜は激しかったですね。おかげでまだ眠いですよぅ。」


エリーはそう言ったが、ドワコはそのような記憶もなく十分な睡眠もとれたのでスッキリしている。


「昨夜はそのまま寝たから何もしてないと思うけど?」


「今から・・するんですよぅ。ていっ」


「エリー、変なところ触らないで。」


「ここか?ここがええのか?ぐへへへへ。」


朝から2人でイチャついてしまった。


「それじゃ今日からこれを着てくださいね」


エリーがドワコに服を渡した。フリフリのメイド服だった。


「実は私とお揃いなんです」


と言っていつの間にか着替えたエリーがくるりと回りメイド服を見せた。ドワコはフリフリの服は好きでは無いのだが、エリーに服を隠されてしまい、これしか着るものが無かった。起きた時に服が無かったのはこれを着せるためだったようだ。


「それでドワコさんは刀を帯刀しておいてください」


「どうして?」


「そうしておくと戦闘メイドに見えるでしょ。それだけでも護衛としての抑止効果になります。」


普段ドワコは武器をアイテムボックスに入れている為に帯刀することは無い。必要な時に取り出して装備する。一方、エリーもいつもは見えないように服の下に、ウェストポーチを付けてその中に魔法書を入れているが、今日は直接手に持ち、私は魔導士ですよと言うのをアピールするようだ。


「私もこうしておけば、ただのメイドには見えないはずです。」


2人は準備を終えてギルバート邸へ向かった。

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