107.ミダイヤ帝国潜入
ドワコとエリーはワイバーンに乗り南を目指して移動していた。
「ドワコさん、一旦この辺りで降りますね。」
「えっ?はい。」
エリーが突然言い出し、2人は地上へ降りた。深い森の中で周りには村や集落などは見えなかった。
「ここに何かあるの?」
ドワコがエリーに聞いた。
「たぶん見れば私が何を伝えたいかわかると思いますよ」
そう言ってエリーは森の中を進んでいった。ドワコは周りを用心しながらエリーの後を付いて行った。
「ここです」
エリーが立ち止まった。
そこには大破した1BOXカーがあった。
もちろんドワコが元居た世界の車である。
「ナンバーまで付いてるし間違いないよね」
大破した車にはナンバープレートが付いていた。もちろんドワコが知っている地名が漢字で書かれている。
「【わ】から始まるナンバーだからレンタカーかな?」
「【わ】ってレンタカーなんですね。初めて知りました。」
「え?」
ドワコが思わず聞き返した。この世界にレンタカー・・・そもそもナンバープレートや車と言う概念がない。
「あっ・・・なんでもないですよぉ」
思わず、しまったと言う顔をしたエリーだったが、いつもの顔に戻り言った。
「この辺りに散乱している物、何かわかりますか?」
確かに色々と物が散乱している。テントだった物、リュック、携帯電話、ゲーム機などなど・・・。大破した車の中にはバーベキューセットなどアウトドア用品があった。
「キャンプでもしていたのだろうか・・・」
だがこんな場所でキャンプ・・・そもそもここは異世界である。車で気軽に来られる場所では無いはずだ。
「何かの原因でこちらに転移したのかもしれません。さすがの私でも原因まではわかりません。」
ドワコが質問しそうなことを先手を打ってエリーが答えた。一応使えそうなものが無いか物色してみたが、数年程度放置されていたようで、残された電子機器などは使用できなかった。
「おや?これは・・・」
ドワコは財布を発見した。中を確認してみると僅かなお金と学生証と免許証が入っていた。
「三浦裕太・・・か」
学生証はドワコの知っている大学の名前が書かれていた。念のために財布をアイテムボックスに収納した。
「ドワコさん、何かわかりましたか?」
「んーどうだろう。この車に乗っていた人物の一人の名前と顔がわかったくらいかな。おそらく荷物からして複数人いたと思うけど何処へ行ったんだろう?」
「きっと今から向かう所にいると思いますよ」
「そっか、調べる事が増えちゃったね。」
「そうでもないかもしれませんよ?」
エリーは思わせぶりな事を言ったがそれ以上は教えてくれなかった。
再びワイバーンに乗りミダイヤ帝国の城下町を目指し移動した。
城下町が近くなり、見つからないように手前で降り、近くにあった集落へ行った。
「ドワコさん、それじゃ今日はここで一泊しましょう。明日は乗合馬車で城下町を目指しましょうね。」
2人は集落を歩き奥へ進んだ。
「ここが宿屋みたいですね」
エリーが1軒の宿屋と思われる建物の前で言った。
そして2人で宿屋に入った。
「今日は宿泊かい?」
「はい、2人お願いします。」
宿屋の主人が話しかけエリーが答えた。
そして宿泊の手続きをして部屋に入った。
「ドワコさんお疲れ様でした。明日はいよいよ敵陣へ入りますよぉ。」
「そうだね。明日に備えて早めに寝ないと。」
それじゃお湯貰ってきますね。
エリーがお湯を貰いに部屋を出て行った。
そして少し経ち、お湯を貰ったエリーが部屋に戻って来た。
「それじゃこの宿はお風呂が無いので体拭いちゃいますね。ドワコさんも脱いでください。」
エリーが服を脱ぎ全裸になった。ドワコも仕方ないので服を脱ぎ全裸になった。
「お拭きしますね」
そう言ってお湯に浸したタオルを絞りドワコの体を拭きだした。
「それじゃお返しにエリーも」
ドワコはお返しにエリーの体を拭いた。二人で体の洗い合いをするのは良くあるのでドワコも慣れた手つきだった。ベットは1つしかないので2人寄り添うように入った。
「やっぱりドワコさんの匂いが変わってしまいましたね。甘い香りも好きだったですけど、今の温かみがあって抱擁されているような気持になる匂いも嫌いじゃないですよ。」
そう言ってエリーが抱き付いてきた。そして2人は眠りについた。
翌朝、出かける準備をしているとエリーが言った。
「ドワコさん、今から向かうミダイヤ帝国の城下町は人間以外の種族に対して差別がある場所です。アイテムボックスにマジックアイテムがあったと思いますのでそれを付けておいてくださいね。」
そう言えば、アイテムボックスにリオベルクから借りていたカツラか残ったままだった。遭難騒ぎで返すのをすっかり忘れていたドワコだった。
「どうしてそれを知っているの?」
どう考えてもエリーが知っているはずのない事だ。
「私はドワコさんの事なら何でも知ってますよぉ」
いつもの返答が戻って来た。
乗合馬車と言うのが、この集落から城下町まで出ているようだ。お金を払いドワコとエリーは馬車に乗り込んだ。馬車の中は城下町へ向かう他の人たちも乗っている。見た感じではほとんど冒険者のように見える。
「お嬢ちゃんたち、城下町に何しに行くんだい?」
向かい側に座っている冒険者風のおじさんが聞いてきた。ドワコはマジックアイテムの青髪のかつらをかぶり、エリーと並ぶと同年代の少女2人が旅をしているように見える。興味が出たようで話しかけてきたようだ。
「私たちこう見えても冒険者なんですよぉ。ほら。」
そう言ってエリーはおじさんにギルドカードを見せた。
「金・・・金だと?」
おじさんが驚いた。同乗していた他の人たちもエリーの見せたギルドカードを見て驚いた。
「エリー、いつの間に金になったの?」
「なんか色々やってたら金になっちゃいました」
エリーは今後必要になるアイテムを集めるために、時間のある時に依頼を受けていた。その為に魔法も上級魔法まで使用できるようになっていた。
「金なんて初めて見たよ」
同乗していた他の冒険者もエリーのギルドカードを興味深そうに見ていた。
乗合馬車は城下町手前の門で止まり、城下町に入る審査を受ける。
「それでは身分証の確認をするので各自準備してくれ」
衛兵が声をかけると馬車に同乗していた人たちが準備を始める。そして一人一人チェックを行う。
そして、ドワコとエリーの順番になった。
「それでは身分証の提示をしてくれ」
ドワコとエリーはギルドカードを提示した。
「ほほう、二人とも金ランクか。で?この城下町へはどのような用事だ?」
「はい、私たちは冒険者をしています。この城下町のギルドには私たち金ランクの冒険者でも満足できる内容の依頼があると聞き訪問してみました。」
「そうか。わかった。それでは入場税は1人大銀貨1枚だ。」
2人は入場税を払い城下町に入った。
「そんな税金があるんだね」
「私たちの所では馴染みがないですけど、他国では結構採用してますよ。」
「そうなんだ」
ドワコはそのような税金が存在する事に驚いた。
こうしてドワコとエリーはミダイヤ帝国の城下町へ潜入した。




