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106.ミダイヤ侵攻

会議が終わったところでエリーが王子に声をかける。


「王子様。少しよろしいでしょうか?」


「何か?」


「一つお願いがありまして・・・。ドワコさんはこれから大事な任務があるので、新しく聖女様になられたメロディさんの教育をお願いしたいのですが。」


「なぜそれを私に頼むのだ?」


エリーに言われ少し様子がおかしい王子様。王子が聖女をやっていたのは国家機密扱いの極秘事項だ。王子はドワコの方を見た。ドワコは手を大きく振り自分は知らないと主張する。


「言わなくてもわかるでしょ?エリオ・・・。」


「わーわー。わかったそれ以上言うな。」


王子はあわててエリーの口をふさぎ引き受けた。


「と言う訳で王子様が教育係をしてくれますので、頑張ってくださいね。メロディさん。」


「はぅ、頑張ってみます。」


教育係が王子と聞いてメロディは元気がなくなった。教育はドワコがする物だと思って気分的には楽だと思っていたが、思わぬ教育係が付き不安になっているようだ。



そして、一晩城で過ごし、翌朝、ドワコとエリーは第3、第4護衛隊と共に東に向けて移動を開始した。


ドワコとエリーは魔動装甲輸送車に乗り移動している。車内には運転する兵士以外は2人しかいない。だが、車内には沢山の物資が詰め込まれており、2人のスペースは決して広くない。


「サンドラについては驚いたよ。なぜ兵を率いさせるのかわからなかったけど、ミダイヤ帝国の姫様だったとはね。」


「正確に言えば3つあった派閥の1派閥のですが、一応正当な継承権も持っていますので、大義はあると思います。色々事情がありまして報告が後になりました。」


「自治権を認めさせたと言う事は、サンドラに占領したところを任せると言う事だよね。」


「そうしないとドワコさんに復興を押し付けられちゃいますからね。サンドラさんなら元々自分の国なので上手くやってくれると思います。」


「あとはミダイヤ帝国を潰す事だけど、どうして南部の攻撃計画が無いの?」


エリーが提出した計画には北部制圧とだけあり、本拠地の城がある南部への攻撃計画が付けられていなかった。その場では質問をしなかったが、ドワコはそれが気になっていた。


「それはですね。私とドワコさんが潜入するためですよ。調べたいことがあるんでしょ?戦闘中で調べるなんて無理だと思うので意図的に侵攻計画に組み入れてなかったんですよ。」


「どうしてそれを?」


「ドワコさんの事はすべてお見通しですよぉ。フフン。」


ドワコはミダイヤ帝国がどうして銃を手に入れたのかが気になっていた。エリーにはすべてがお見通しのようだ。


やがて部隊は東側の国境付近まで進んだ。


「止まれー止まれー」


護衛隊の一行が呼び止められた。


「見かけない部隊だな?所属を言え」


高圧的な態度で騎士と思われる人物が言った。


「我々はドワコ領に所属する護衛隊だ。現在、ミダイヤ帝国に進軍する為に移動しているところだ。」


護衛隊の車列の先頭にいた兵士が答えた。

昨日作戦が決まったために、前線の第二騎士団まで連絡が言っていないようだ。

不審がる騎士が待つように伝え、いったん下がり、騎士団長がやってきた。


「不審な部隊がいると報告を受けて来てみたが、見たことがない馬車だな。」


「これは騎士団長殿。ご無沙汰しています。」


ドワコが前に出て話を付けに言った。


「こっこれは聖女様。大変失礼しました。聖女様の部隊とは知らずに部下が失礼しました。」


「聖女は昨日辞めましたので、今はただの領主と言う身分です。」


「はぁ。そうでしたか。」


好待遇の聖女を辞めたと聞いて、不思議そうな顔をする騎士団長。


「それでは本当にこの部隊でミダイヤ帝国に侵攻すると言う事ですか?」


「はい。すでに王様の許可も得ています。」


「そうでしたか。引き留めて申し訳ありません。ご武運をお祈りします。」


「ありがとう。騎士団の方々も国境警備よろしくお願いします。」


「かしこまりました」


ドワコたちは戦闘用の魔動車に乗りこみミダイヤ帝国との国境へと進んだ。


「この辺かな。皆さん止まって下さい。」


エリーが騎士団と別れて少し行ったところで行軍を止めた。現在もエリーに預けた指揮権をまだ返してもらっていない状態なので、ドワコの命令が最優先だが、エリーの裁量で第3、第4護衛隊に対しては指示が出せる状態だ。


「エリーどうしたの?」


「ここで1発大きな花火をあげましょう。魔動自走砲、砲撃準備に入って下さい。調整は私がやります。」


そう言って1台の魔動自走砲に乗り込み砲塔を動かした。


「それじゃ後の残りも同じ方向に向けてください」


エリーの指示で他の魔動自走砲の砲塔も同じ方向を向いた。


「それでは各自のタイミングで1発だけ砲撃してください」


エリーが指示を出すと合計4台の魔動自走砲がバラバラのタイミングで砲撃を行った。

その後何事もなかったかのように国境に向かい進軍を開始した。


「うはぁ・・・これはひどい」


ドワコは国境に着いて思った。見事にミダイヤ帝国の国境砦が城壁をキレイに残した状態で中の建物だけなくなっている。元々ドワコ領の自走砲はピンポイント射撃を想定していないのだが、地図や偵察無しで目標に当ててしまうエリーには関係ないようだ。


「それでは戦車砲で砦の門を破壊して進みましょう」


魔動戦車が戦車砲を撃ち門が破壊された。そのまま護衛隊が突入した。だが、敵はすでに砦を放棄したようで抵抗はなかった。


「こうしておけばミダイヤ帝国も砦の中にマルティ王国軍が潜んでいるのではないか?と警戒して時間稼ぎができるはずです。その逆もありますが、他の部隊は攻める予定ありませんからね。」


「なるほど」


それから少し進んだところでエリーが進軍を止めた。


「ここから先は別行動になります。あとはケイトさんとカーレッタさんお願いします。北側のサンドラ隊とうまく歩調を合わせて敵をかく乱してください。」


「「了解」」


ドワコとエリーは第3、第4護衛隊と別れ別行動に移った。


「それではドワコさん。少し遠いですけど、ミダイヤ城へ向かいましょう。」






その頃、試作船と軽空母に乗って北側に展開中の第2護衛隊はサンドラ隊の回収作業を行っている。城から引き継ぎの部隊がもうすぐ到着するはずだ。それをもってこの場を撤収し、ミダイヤ帝国の北側から侵攻する計画だ。


「姫様、マルティ城より交代の部隊が到着しました。」


「それでは引継ぎが終わり次第、船に戻ります。」


報告を受けたサンドラは部下たちに撤収の指示をする。手早く撤収を終わらせ試作船と軽空母はミダイヤ帝国を目指した。



ミダイヤ帝国のサザランド。北側にある港町だ。それはサンドラ達の派閥の拠点として使われていた所だ。現在のミダイヤ帝国が攻めて来た時、一部の住民は船に乗り込み脱出をした。また、それらを守るために一部の兵士も難民に偽装し脱出した。その兵士たちの一部が現在サンドラの率いている部隊となる。


脱出をせずに、残った兵士たちは、サンドラを含む王族を守るために残り散っていった。またサンドラ以外の王族はすべて殺されていると思われる。重傷を負いつつも生きたまま捕らえられ、海路で輸送中に海賊に襲われサンドラはそのまま奴隷商人に売られたようだ。それをたまたま買ったのがドワコとなる。


(せっかく与えてくれたチャンスですから、是非とも作戦を成功させなければ。)


サンドラは気持ちを引き締め決意した。

現在サンドラ達の部隊は軽空母に乗っている。部隊を分け、片方は航空機による攻撃、残りは上陸部隊となる。船の運用は第2護衛隊が行っている。


「サンドラ聞こえる?」


試作船で船の指揮を取っている第2護衛隊隊長のベラから無線が入る。


「はい、聞こえます。」


軽空母の艦橋にいるサンドラは答えた。


「そろそろ目的地に到着します。航空部隊と上陸部隊の準備をお願い。」


「はい。了解しました。」


その後、船は停船し試作船の主砲2門が目的地の港町サザランドの方角に向けられる。命中精度を上げるためにかなり接近した場所に船は陣取っている。だが、敵方の人力で動く船ではそれなりに接近するまで時間がかかる距離ため、十分対処できる。そして着弾観測用のヘリが飛び立ち上空から状況を確認する。


「それでは砲撃開始」


ベラの合図で主砲が火を噴いた。射出された砲弾はサザランド城に着弾し爆発音と煙が上がった。何度か砲撃をしたのち艦載用に主翼が折りたためるように改良された魔動戦闘爆撃機が飛び立ち城と軍関係施設を攻撃していく。元々自分たちがいた街なのでどこに何があるかはすべて把握している。ピンポイントで主要箇所を爆撃した。


攻撃に気が付き、敵船が近づいてきたが、船に装備された機銃により沈められていった。海での抵抗が無くなった所でサンドラが率いる上陸部隊が上陸用の小型船に乗り込み陸を目指し進んでいった。その間も航空機による空襲が続き町中、火の手と煙が上がっていく。突然の攻撃にパニックになる兵士と住民。上陸した兵士たちは住民を誘導する班と攻撃を行う班と別れ、住民を安全な所へ誘導した。攻撃班はそのまま城を目指し進軍していった。所々で敵兵による抵抗があったが、自動小銃を装備する突入部隊に抵抗する術を持たなかった。そのまま城になだれ込み、敵の司令官を探した。


「見つけたぞー」


兵士の声がして、サンドラを含めた者たちが集まる。


「サンドラ姫・・・生きていたのか」


前にサンドラを捕らえた司令官が拘束されていた。


「おかげさまで生きてましたわ。この街は返していただきます。」


そう言ってサンドラは司令官に向けて銃の引き金を引いた。

司令官を倒し、サンドラの部隊は城を占拠した。そしてその後の敵兵を掃討しサザランドの街を取り戻した。辛うじてドワコ領の船が1隻接岸できる場所があったので、そこから第2護衛隊の魔動装甲輸送車、魔動戦車、魔動自走砲を降ろし、街の守りに使用した。また、一緒に乗っていた職人たちも降り、街の復旧作業を始めた。基本的に軍施設を狙ったために、住民の建物には被害を出さないように注意したが、街中の戦闘で若干の被害が出てしまった。またサンドラ隊に負傷した者が数人出た為、重傷者は魔導ヘリでドワコ領へ搬送された。


「サンドラ、お疲れ様。」


「お疲れ様でしたベラさん」


ボロボロになった城で2人は会った。現在、急ピッチで主要箇所のみだが修復作業を行っている。


「エリー様からの指示を伝えます」


「はっはい」


ベラはエリーから占領後に伝えるように言われていた事をサンドラに伝えた。


「この占領したサザランド、およびこれから占領していくだろう北部地域の自治に関する全権をサンドラさんに移譲するそうです。」


「え?」


「しばらく戦闘は続くと思いますけど、国の復興頑張ってくださいね。」


「はっはい。ありがとうございます。」


「私はエリー様の言葉を伝えただけですのでお礼は直接言ってくださいね」


こうしてドワコ領はミダイヤ帝国の北部に拠点を確保し、反撃を開始した。

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