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105.聖女交代

「おはよう。リオベルク。」


「おはようドワコ」


ドワコが自分の部屋に戻ると、ちょうどリオベルクが目を覚ましたようだ。


「良く寝れた?」


「まあいっぱい動いたしな・・・良く寝れた気がするよ」


「それなら良かった」


ドワコが優しく声をかけた。

ドワコはリオベルクの支度を手伝い、皆が集まっている会議室へと向かった。


アリーナ村で第3護衛隊と一緒にいたエリーも砦に戻ってきている。そして神殿のシスターであるメロディもこの場にいた。


「それでは皆さんおそろいのようですので、会議を始めます。まず、現在の我が軍の動向です。撤退した第3~第5騎士団の率いる残存兵およそ1000名がマルティ城へ帰還しました。そして我が領の第3護衛隊と第4護衛隊がドワコ領に帰還。別働隊であるサンドラ隊が引き続き港町を占領しています。現在、第2騎士団と平民兵およそ2000が東側の国境警備に当たっているようです。」


エリーが手早く説明する。

ドワコ領側は第1~第4護衛隊の4人の隊長がそろっている。ジョレッタは姉のカーレッタの事を気にしているようでチラチラと見ている。


「そしてこれからの事です。まず王妃様、王子様、ジョレッタ様は急ぎ城へ戻っていただきます。護衛は第3、第4護衛隊が行います。そしてドワコ領からは、ドワコさんと私とメロディさんが同行します。以上です。ご質問のある方は挙手をお願いします。」


王妃様が手を上げた。


「先程の話に上がったメロディと言う人物は?」


「この神殿でシスターをしています。今回は訳ありで同行していただく事になります。」


王妃の質問にエリーが答えた。


「初めまして。わたしはドワコ領の神殿で巫女・・・シスターをしています。メロディと申します。よろしくお願いします。」


メロディが自己紹介を兼ねて挨拶をした。



そして会議が終わった。


「姉さん久しぶり」


「ジョレッタも元気そうで良かったわ」


手を取り合うジョレッタとカーレッタをドワコは見ていた。とても仲が良さそうだ。

聞こえてくる話を聴く感じでは、城までは一緒に行動するような話をしている。こちらとしては特に問題は無いので好きなようにさせようと思う。



一行は第3、第4護衛隊の率いる魔動装甲輸送車に分乗し魔動戦車、魔動自走砲も率いてマルティ城を目指した。また同時刻に第2護衛隊がブリオリ港へ行き、補給を済ませた試作船と軽空母を出航させマルティ王国の北側にある、サンドラ隊が占領している港を目指した。


マルティ城下町に到着し、そのまま城を目指す。現在、全住民は避難中の為、城下町は人がいない状態になっている。治安維持の為、衛兵が巡回しているのを何度か見かけた。


城の前で第3、第4護衛隊を待機させ、ドワコとエリーとメロディ、そして王妃と王子とジョレッタは城の中に入って行った。


準備もあるので会議が始まるまで少し時間があった。ドワコとエリーとメロディは聖女の執務室へと向かった。


「ここが聖女様の執務室なんですね」


メロディが部屋の中を見回す。使用頻度も低いので私物は置かれておらず、必要な書類や資料だけが置かれた状態となっている。


「それで、メロディさんを連れてきた理由は?」


一番気になっていた事をエリーに理由を尋ねた。


「それはですね。メロディさんに聖女になってもらおうと思いまして。」


「「え?」」


2人が驚く。


「ドワコさんはこれから大変な時期になるので、聖女の仕事を続けるのは負担がかかると思うんですよ。そこでこの国で2番目の回復魔法の使い手であるメロディさんにお願いしようと思います。大丈夫です。期間は少しの間だけですし、その間は戦争などの紛争も起りませんので借り出されることもありません。ドワコさんもそんなに聖女の仕事してませんでしたしね。沢山お金がもらえて仕事も楽ですし、最高クラスの上級貴族特権まで頂けちゃいますよ?と言う訳でこれ聖女服です。よろしくお願いしますね。」


エリーがどこからともなく聖女服を取り出し、何かを操作するような動作をするとメロディの服が突然無くなった。


「えっ?キャー」


全裸になり、あわててメロディは胸を押さえてしゃがみ込んだ。


「あっ、ごめん、ごめん。脱がせすぎた。」


エリーが謝りまた何かを操作するような動作をするとメロディの下着が戻った。


「服が無いからこれを着るしかないね?」


エリーが無理やり巫女服を取り上げ、メロディ用に仕立てられた聖女服を着せた。


「エリーが無理を言ってごめんね。良くわからないけど、あとはよろしくね。」


「はっ、はい。未熟者ではありますが何とか頑張ってみます。」


聖女交代の話し合いが終わり、ドワコは聖女の座を譲る事にした。



会議が始まる時間になり3人は会議室に向かった。

少し疲れた様子の王様が座っていて、その横には王妃と王子が座っている。


「ドワコ、エリー、この度は大儀であった。そなたらの活躍でこの国の危機が去った。改めて礼を言うぞ。」


「「勿体ないお言葉でございます」」


王から礼を言われた。ドワコだけかと思っていたらエリーも連名で言われたので2人合わせて返礼をした。


「王様にご報告があります」


エリーが切り出した。


「ドワコ様は健康上の都合でこのまま聖女の仕事を続けられなくなりました。そこで代わりの者としてメロディを連れてまいりました。どうか彼女に聖女の任をお与えください。」


「わかった。それではメロディ前へ。」


「はい」


メロディは王の前に跪いた。


「ドワコ、良いのだな?」


「はい」


王様の問いにドワコは答えた。


「わかった。それでは、メロディ。そなたに聖女の任を託す。これから国の為に尽くしてくれ。」


「かしこまりました」


聖女の引継ぎを終えて、案内されメロディは王族の横にある聖女の席へ腰かけた。


「だが、これでは国の為に尽くしてくれたのにも関わらず降格と言う形になってしまうな。」


「父上、一つ空いている席がありますよ。」


そっと横でリオベルクが王様に告げた。


「そうか。そうだな条件は満たしているようなので検討するに値するな。」


王様は考えるしぐさをして言った。


「すまんが、ドワコへの待遇については、また後日改めてと言う事になりそうだ。それまでは領主として今まで通り国のために働いてくれ。」


「かしこまりました」


保留され、次の議題へと入る。


「まず、北の占領している地域の事だが・・・。」


「私たちは次の作戦にただいま占領の任に当たっている兵士たちを使いたいのですが、代わりの兵を城より派遣してもらえないでしょうか?」


エリーが申し入れを行った。


「それは構わないが、その兵たちをどうするつもりだ?」


「海路よりミダイヤ帝国の北側より侵攻します。そして拠点確保を行います。また、この作戦行動を行う部隊は元ミダイヤ帝国のサンドラ姫の率いる部隊が行います。そして拠点に関しては王様より自治権をお与えください。そしてドワコ領護衛隊は東側より侵攻し、北部制圧の補助を行います。」


「それでは東側より侵攻した部隊は北側と南側から来た部隊から挟み撃ちにならないか?」


エリーの作戦について王様が疑問に思った事を投げかける。


「その辺は大丈夫です。航空部隊が空爆を行い南側の兵は足止めさせます。」


「ドワコ領は空から攻撃できる部隊がいるのか?」


「はい、それなりの航空戦力を保有しております。」


「まあ我々の部隊では力不足でどうする事も出来ない案件なので好きなように動くが良い。もちろん自治権に関しても認めよう。」


「ありがとうございます」


こうして軍によるミダイヤ帝国侵攻についての作戦が決定した。


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