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104.プロポーズ

前線にいるはずのドワコが正反対の場所で現れ、城から避難してきた幹部たちは驚いた。


安心したのか涙を浮かべながらリオベルクが飛び出しドワコに抱き付いた。


「無事でよかった。多数の敵を相手に敗走したと聞き、生きた心地がしなかった。すまぬ。私が聖女なんかにしてしまった為に・・・辛い思いをさせてしまった。そしてやっと自分の気持ちを伝える事ができる。ドワコお前を愛している。この戦争が終わったら結婚してくれ。」


「まあまあまあまあ」


リオベルクの言った言葉を聞いた王妃はすごく感激した様子で声を上げた。


「私の国ではこの戦争が終わったら結婚してくれと言うのは死亡フラグと言ってですね・・・言った人は死んじゃうんですよ?」


「「「えー」」」


ドワコが思っていたことを口に出してしまった。

そして死ぬという言葉を聞いて皆が驚きの声を上げた。





数日前、ドワコは35000の敵兵を相手に勝利した。だが、目の前に転がる死体の山を見て吐き気を覚えた。だが、これは自分が行ったことだと言い聞かせ、その光景を目に焼き付けた。そして早く戦争を終わらせなければならないと心に誓った。


「聖女様ご無事ですか?」


心配して引き返してきた治療部隊の一部の兵がドワコの前に集結した。

ドワコは気持ちを切り替え言った。


「見ての通りこの戦闘は我々の勝利です。この事を早く城の方へ伝えてください。私は聖女としての務めを果たしましたので、一度領地に戻る事にします。あとの処理はお願いします。」


「了解しました。それでは我々は城へ報告に戻ります。聖女様、道中お気をつけて。」


「ありがとう。あなたたちもお気をつけて。」


ドワコはそう言って治療部隊と別れた。ドワコはそのあと死体の中を歩き、ある物を探した。

しばらく探していると目当て物を発見した。


金属で出来た筒に木の柄が付いている武器、銃を探し当てた。


(これがミダイヤ帝国で使われている銃か)


形状はドワコの知っている銃に酷似しているが、ドワコ領で使用している自動装てんして連射ができるタイプではなく、単発銃のようだ。一度撃つと薬莢を捨て手動で弾の再装填が必要になる。


(この技術を何処から仕入れたか調べる必要がありそうだな)


だが、この場所での戦闘は勝利したが、現時点での戦況が把握できていない。エリー達がどうなったのかもわからない。城に情報が入るのは数日後になるだろう。一番手っ取り早く情報を手にできるのはドワコ領と言う事になる。偵察機を飛ばし、リアルタイムで無線よる報告が行われているはずだ。


ドワコはワイバーンを呼び出しドワコ領へ向かった。


そしてドワコ領に戻り護衛隊の基地で詳細報告を受けた。

エリーの居場所を確認してドワコはアリーナ村に向かいエリーと今後の行動について話し合った。


「ドワコさんは王子様の事をどう思っていますか?」


エリーは戦争とは全く関係ない話をしてきた。


「どうって・・・」


「今度、ぱぱーっとヤッちゃって子供作っておくといいですよ?」


「へ?」


エリーからとんでもない発言が出た。

そして真剣な顔になり言った。


「実はですね・・・ドワコさんに残された時間ってそんなに長くないんですよ。これ、どういう意味か分かりますか?」


「何か病気にかかっているとか?」


ドワコには自覚がないが聞いてみる。


「いえ、至って元気ですよ?」


「ヒント、アイテムボックスに入っている図面。」


「図面・・・あー忘れてた」


まえにオサーン公国で倒したデュラハンが持っていた図面だ。そういえば中身を確認していなかった。ドワコは図面を取り出しクリエイトブックに書き込んだ。そしてクリエイトブックを見た。


「賢者の石?」


「そうです。これを完成させると終わってしまうんですよ・・・。でも完成させないといけない物なんです。」


「何が終わるの?」


「それは今の時点では言えません。また時期が来たらお話しします。」


ドワコはエリーの言いたいことがさっぱり理解できなかった。

そしていつもの顔に戻り今後の行動について話をした。


「この後の事ですけど、結論から言いますと、ミダイヤ帝国を潰します。」


「本当に結論から来ましたね」


「方法については私が戻ってから皆で話し合うことになると思います。とりあえず数日、時間を潰してもらうことになります。そして砦に戻ったときに人生の大きな選択肢が現れます。私のアドバイスを参考にどのような選択をするかはドワコさん次第です。今はその時ではありませんので、それまでは温泉にでも行って時間を潰しましょう。」


そして、ドワコはエリーと一緒に数日間、アリーナ村の温泉施設に滞在して疲れを癒した。





そして今、砦の会議室にいる。


「王子様への返事は今日の夜にします。それでよろしいですか?」


「わかった。良い返事をもらえることを願っている。」


ジョレッタの表情が心なしか暗くなっているようだ。


「それでは現在マルティ王国が置かれている状況を説明します」


ドワコが気持ちを切り替え城から来た者に説明を始めた。


「まず、東側での戦闘ですが、こちらの被害は約5千・・・ほぼ壊滅ですね。」


「それは報告で聞いています、続きをお願いします。」


王妃が続けるように言った。


「そして私が殿を務め敵部隊を排除しました」


「さすがドワコですね。一人であれだけの兵を相手に戦えるなんて他の人じゃ無理ですよ。」


王妃が納得したようにうなずいた。


「続いて北側から進軍してきた10万の兵ですが、我々の護衛隊とジム領の警備兵の合同軍で殲滅排除しました。それと同時進行で別動隊が離反した国の城を直接攻撃して降伏させ、現在、我々の部隊が占領しています。」


「と言う事は我々の勝利なのか?」


王妃が聞いてきた。


「確かに敵を排除したと言う事だけを見れば勝利となります。ですが、本当の勝利はミダイヤ帝国を潰す事で得られるでしょう。」


「我が国をはるかに超える国力を持つ国相手に勝てるのか?」


「わかりません。ですが、マルティ王国にはミダイヤ帝国に侵攻するだけの戦力がありません。それについてはドワコ領に一任していただきます。」


「私の一存ではわかりましたとは言えませんが、王の方へは私からも進言いたしましょう。」


「城下町は無傷で、今後戦闘の心配もありませんので、城下町からの避難民の方々には戻っていただくことになると思います。魔動車の方を手配しますので、一度に全員は無理ですが、日数は少しかかるかもしれませんが、順番にお送りします。さすがに2日かけて歩いて帰って下さいというのは大変なので・・・。」


「わかりました、避難民の事についてはよろしくお願いします。」


経過と今後の予定について主にドワコと王妃の間で話が進められた。



そして会議が終わり、夜になった。ドワコはお風呂に入って体を隅々まで洗って自分の部屋に戻った。

リオベルクにはドワコの部屋に来てもらうように伝えた。


コンコン


部屋がノックされリオベルクが部屋に入ってきた。


「すみません。こんな時間に呼び出して。」


「いや、構わないよ。返事を・・・聞かせてくれるんだよね。」


「はい」


少し間を置き、ドワコは決心して伝えた。


「リオベルクの気持ちは十分に伝わりました。私も嫌いではありません。どちらかと言うと好きなのかもしれません。ですが、お断りしなければなりません。ごめんなさい。」


「そうか。わかった。色々すまなかったな。」


「ですが、お互い気持ちの切り替えができるように、今夜だけはこの体をあなたに預けます。そして明日の朝からは別々の道を歩みましょう。」


「ドワコ」


今まで気持ちを抑えていたリオベルクだったが、我慢ができなくなりドワコを抱きしめた。そのまま2人はベッドに入り長い夜を過ごした。



翌朝、ドワコはリオベルクが起きる前に浴室に行った。


「予想以上に痛い・・・」


浴室に入ると、王妃様が先に入っていた。


「おはようございます。王妃様。」


「あら、ドワコ?どこか痛むの?」


変な歩き方になっているドワコを見た王妃様はニヤニヤした表情でドワコに言った。


「いっ、いえ・・・大丈夫・・・です。」


ドワコはすべてを見透かされているようで焦っていた。


「昨夜はお楽しみだったのかな?それで嫁に来てくれる覚悟はできた?」


「その話は昨夜お断りしました」


「あら、残念。お似合いだと思ったのになぁ。そうすると思い出作りだったのかな?」


何かを察したように王妃は言った。


「息子のためにありがとうね。でもドワコがダメになったと言う事は次はジョレッタかな?」


王妃は次のターゲットを考える。


「痛むならドワコは回復魔法使えるのだから、それで治せるんじゃない?」


「その手がありました」


王妃に教えられ、ドワコはその手があったかと早速、魔法書を取り出し「ヒール」を唱え痛みの原因を取り除いた。


「でもね・・・治してしまったら、次もきっと痛いわよ。ふふふ。」


王妃が悪魔の微笑を浮かべながらドワコに言った。

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