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100.ドワコ誕生祭

翌日、ドワコは砦を追い出された。


「ドワコさん。お疲れでしょう?アリーナ村の温泉施設に予約を入れておきましたので、しばらく休養されると良いと思いますよぉ。」


そうエリーに言われ、すでに準備が整えられ魔動装甲輸送車まで用意してあった。すでに確定事項らしい。


「まあ折角だから休養してくるよ」


ドワコは断れないと判断して渋々行く事にした。


「それでは今回、同行するのはこの3人です」


エリーが3人を呼んだ。トテトテとドワコの前に来た。


「サンドラとジェシーとアオリアさん?」


ジェシーはドワコ付きのメイドなのでわからなくもないが、まあサンドラはご主人様と慕ってくれるのでまだ許容範囲だ。なぜアオリアがいるのか理解できなかった。


「どうしてアオリアさんがいるの?」


「それはくじ・・・」


「コホン。コホン。」


エリーがわざとらしい咳をして話を中断させた。

そして4人は兵士が運転する魔動装甲輸送車に乗り込みアリーナ村を目指し出発した。


「そう言えばジェシーはアリーナ村は初めてだったよね?」


「そうですね。結局行くことが出来ませんでした。」


ジェシーはアリーナ村にドワコの工房があった時からメイドをしていたが、結局行く事も無くドワコは工房を閉めてしまった。そして完全に行く機会を失っていた。


「一緒に行けず、姉さんが悔しがっていました。」


「ジェーンは何をしているの?」


「それは・・・」


ジェシーは答えに困っているようだ。そこへサンドラが助け舟を出した。


「エリーさんに仕事を頼まれたみたいですよ。少し大掛かりなものみたいで手が離せないそうです。」


「そっか。それは残念だったね。仕事なら仕方ないね。」


その横でアオリアはドワコの顔をジーっと見ている。


「私の顔に何かついてる?」


「いっいえ・・・ドワコ様のお顔を何処かで見た記憶がありまして・・・」


そりゃあるでしょ・・・ドワコ領の神殿には設置していないが、他の神殿には女神像と称した少し美化されたドワコ像が置いてある。信仰の対象なので城下町の神殿にいた頃は毎日見ているはずだ。とドワコは内心思った。


「シスターの見習いってどう?辛くない?」


ドワコがアオリアに聞いた。指導するのがメロディなので辛いとかは無さそうな気がするけど。


「お腹が辛いです・・・」


「は?」


ドワコが理解できず聞き返した。


「神殿で出されるご飯が美味しすぎてお腹が出てきてしまいました」


そう言って服をばッとあげてお腹を見せた。


「プニプニですね」


隣にいたジェシーがアオリアのお腹をつまんだ。


「私も私も」


サンドラも気になったようでプニプニとアオリアのお腹をつまんだ。


「これは中々気持ちが良いです・・・」


サンドラが満足そうに言った。


「ドワコ様もよろしければどうぞ・・・」


恥ずかしそうにアオリアがドワコに言った。


「それじゃ少しだけ・・・」


ドワコが触ろうとした時、魔動装甲輸送車が石か何かを踏んだようで大きく跳ね上がった。そして勢い余ってアオリアの胸を揉んでしまった。


「ひゃん」


アオリアは小さな悲鳴を上げた。


「あっ、ごめん手が滑った。」


「ドワコ様なら構いませんよ?」


アオリアが言った。


「私も私も」


「良かったら私のも揉んでください」


ノリで言ったのだろうけど、サンドラとジェシーも負けないとばかり自分たちの胸を主張してきた。


「あん」


「くすぐったいです」


ドワコはこのままでは収拾がつかないと思い、それぞれの胸を揉んでみた。

そうこうしているうちに、アリーナ村に到着した。


「アリーナ村も久しぶりだなぁ」


魔動装甲輸送車の上部ハッチを開けてひょいと顔を出してドワコが言った。アリーナ銘品館のゴタゴタ騒ぎ以来、数カ月ぶりの訪問となる。ただ、のんびりとしていたそれまでの雰囲気と村の様子が少し違う事に気がついた。


「なんか村を囲っている柵が大きく頑丈なものに変わっているような・・・」


と言っても同乗している者はアリーナ村に来るのは初めてのようで誰も答えることが出来なかった。そして魔動装甲輸送車は温泉施設に到着した。


「ようこそいらっしゃいました。ドワコ様。」


温泉の女将に出迎えられ部屋に案内された。ドワコが利用していた時は平民用を利用していたが、今回は貴族用の部屋が割り当てられている。同行した3人もドワコと同じ部屋になっている。


貴族生活に耐性の無いアオリアが部屋を物珍しそうに見ている。

その横でジェシーが手早く荷物の整理を行っている。


「あのー。神殿の方へ挨拶に行こうと思うのですがよろしいでしょうか?」


部屋を見終わったアオリアが遠慮がちに言った。


「見習いだから先輩のシスターへの挨拶は大事だよね。いいよ。それじゃ私も付いて行こうかな。」


サンドラは先に温泉に行っているので、ジェシーにその事を告げ、2人は神殿に向かった。


「こんにちは」


「あっ、これはドワコさんいらっしゃい。」


アリーナ村の神殿を任されているシスターが出迎えた。


「はっはじめまして。私はドワコ領の神殿でシスター見習いをしているアオリアと言います。近くまで来ましたので、ご挨拶にと思い伺わせていただきました。」


「まぁドワコ領から。それは遠い所からようこそいらっしゃいました。えっ・・・ドワコ領・・・ドワコさん・・・。」


シスターが何か考え事をしだした。


「もしかしてドワコ領と言うのはドワコさんが治めているのですか?」


「そうですよ。領主様です。」


シスターの問いにアオリアが答えた。


「これは大変失礼しました。そうとは知らず以前は大変失礼な対応をしてしまい申し訳ありません。」


「いえいえ、その頃は領主ではありませんでしたのでお気になさらず。」


「そう言っていただけるのなら助かります」


ホッとした様子のシスター。この様子なら実は聖女なんですとは言えないよね・・・。


「それでは聖堂でお祈りをさせていただきますね」


「どうぞ、女神様もお喜びになられると思いますよ。」


シスターが聖堂に案内しアオリアは祈りを捧げようとして固まった。


「あっ・・・あ・・・・」


口をパクパクさせて聖堂に置かれている女神様とドワコの方を交互に見ている。


「どうされました?アオリアさん?」


様子のおかしいアオリアを気遣ってシスターが話しかけた。


「い・・いえ何でもないです。取り乱してすみません。」


そう言って女神像に祈りを捧げた。

そしてドワコとアオリアは神殿を出た。出た所でアオリアはドワコに聞いてきた。


「前に神殿長からドワコ領には女神様がおられると言う話を聞きました。その時は信じていなかったのですが、女神像を見て確信しました。女神様とはドワコ様だったのですね。」


「女神像はかなり美化されているから、私だと気がつかれた事は無かったんだけどなぁ・・・。」


勘の鋭いアオリアに負けてドワコは白状した。


「でも、色々と混乱する事になるから他の人に言っちゃだめだよ。知っているのはシスター・メロディを含めて数人しかいないから。」


「わかりました。ドワコ様。」


そして2人は宿泊施設に戻った。そしてサンドラとジェシーを含めた4人で温泉に入った。サンドラはその前に1度入っているので2回目となる。


「それじゃお嬢様。お背中お流ししますね。」


メイドのジェシーが当然とばかりにドワコの後ろに陣取った。


「それじゃ私も日頃のお礼もかねて」


サンドラは全身泡まみれになりドワコに抱き付いてきた。


「私もご奉仕させていただきます」


そう言ってアオリアも参戦した。4人は裸の状態で泡まみれになりドワコは色々な所を触られた。もちろんドワコも3人の体を触り返した。4人はそれぞれの体の感触を堪能し、湯船に浸かった。


「普通のお湯とは違って温泉は落ち着きます」


ドワコがホッとした表情で言った。


「本当にそうですね・・・この温泉を作った人に感謝しないといけませんね」


「それじゃお嬢様に感謝してくださいね」


サンドラが言った事にジェシーが返した。


「もしかしてこの温泉ってご主人様が作ったの?」


驚いた表情でサンドラが言った。


「さすがドワコ様です」


アオリアは信仰する女神様の作った温泉の心地よさを楽しんだ。



数日間アリーナ村の温泉に滞在し、ドワコ領へ戻って来た。そして魔動装甲輸送車は砦に向かわず、護衛隊の基地に向かった。


そしてドワコは魔動装甲輸送車から降りると、領地の幹部も含めた沢山の人たちが整列してドワコの帰りを待っていた。


「お帰りなさい。ドワコさん」


エリーが代表してドワコに言った。


「ただいま。それでこれは何?」


ドワコが降りた航空機用の滑走路には沢山の人が集まっている。そして周りには色々なお店も出ている。何かのお祭りのように見える。


「これですかぁ・・・」


エリーが勿体ぶった様子で溜めに入る。その横で一緒に乗っていたサンドラ、ジェシー、アオリアもエリー達の方へ加わった。


「せーのーぉ」


エリーの掛け声に合わせ皆が声をそろえて言った。


「「「ドワコさん(様)誕生日おめでとうございまーす」」」


声に合わせてサイドに並べられた魔動自走砲から「ズドーン」と空砲が鳴り、中に仕込まれていた紙吹雪が舞った。


他の人に聞こえない小さな声でエリーは言った。


「ドワコさん、この世界に来てちょうど1年になるんですよぉ。誕生された日と言う事でみんなでお祝いする事にしました。」


「えっ・・・何・・・ずるいよー本当に・・・」


ドワコは突然お祝いされたのに驚いたが、理由を聞かされ何とも言えない気持ちになった。気がつくと目から涙が出ていた。


そしてエリーが何処からともなくマイクを取り出し宣言した。


「そ・れ・で・は・・・お待たせしました。第1回ドワコ誕生祭の開催デース。」


色々な所に取り付けられたスピーカーからエリーの声が聞こえ開会が宣言された。


そして会場にいた人たちが大きな歓声をあげてお祭りが開始した。

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