10.パーティーを組んでみた
今日もダンジョンに潜りいつもの場所で鉄のワニを狩っていた。
最近武器の受注が多くなって素材である鉄の在庫を確保しておきたいというのもあった。
少し間が開き休憩をしていると男3人のパーティーが階段を下りてきた。最近では顔なじみになった前衛職でがっちりとした体格の盾持ちジャック、槍を装備したすらっとした長身の中衛職ポール、弓矢を装備したドワコほどではないが背の低い後衛職スミスである。
「ドワコさんこんにちは今日も一人で頑張っているんだね」
「ジャックさん、ポールさん、スミスさん今日も4階層を目標ですか?頑張ってくださいね。」
「ありがとう。それじゃ行ってくる」
と言って3人のパーティーは奥へ進んでいった。
最近、作業になってきている鉄のワニ狩りも少々飽きてきた。奥へ行ってみたい好奇心が出てくるようになった。さすがにこの先どうなっているかわからないのでソロで進むのは大変危険だ。そろそろパーティーへ入って複数で奥へ進んでみるのも良いかなと考えるようになっていた。そういう事を考えていたら先ほど奥へ入って行ったジャック、ポール、スミスが戻って来た。
「この先に少し強い魔物がいて3人だと厳しい少し手伝ってくれると助かる。」
とジャックが言った。
奥が気になっていた所でこの誘いは断れない。
「いいですよ。少し奥が気になっていたのでお供させていただきます。」
「ありがとう」
「よろしく」
「よろしく頼むよ」
と言う訳で急遽パーティーを編成して奥へ進むこととなった。
色々な魔物と遭遇したが、攻守バランスの取れたパーティーの敵ではなかった。さらに進むと大きな巨人のような魔物が現れた。
「こいつはトロルと言ってかなり耐久力があって厄介な魔物なんだ。油断するなよ。」
とジャックが言い戦闘態勢に入る。
ジャックが盾を構えトロルの初撃を受ける。ポールがその横から槍で突き、スミスが弓矢を味方に当たらないように放つ。決定打が不足しているようだ。そこでドワコは鉄のハンマーを構えトロルに一撃を加える。トロルは吹っ飛び壁にぶつかり魔石になった。
ジャックとポールとスミスは呆気にとられていた。苦戦を覚悟していた相手を一撃で倒したドワコに。
少し間をおいてからポールが言った。
「ドワコすげーな。トロルを一撃で倒してしまうとは。」
3人はドワーフだから力が強くて当然なんだろうと納得することにした。しばらくすると4階層へ降りる階段を発見した。何度か行ったことがある3人はこの先の状況を理解していた。
「この先が4階層になる。俺たちのパーティーはトロルがいない時は4階層を少し進んだあたりまでが限界になる戦いが厳しくなるので十分気を付けてくれ。」
とジャックが告げる。ドワコはこの先が4階層になることで少しワクワクしてきた。
4人が階段を降りて少し進むと数種類の大量の魔物が襲ってきた。
「ちょっとこれはまずいかも」
とスミスが不吉な言葉を発する。数が多すぎる。とにかく戦うしか無さそうだ。
「数が多すぎる。各自の判断で戦ってくれ!」
とジャックが指示をして4人は散開する。ジャックは盾で受けつつ剣で攻撃して行く、ポールは槍を振り回し薙ぎ払っていく、スミスは距離を保ち弓矢を放って応戦しているが次の矢を準備するまで少し時間がかかるため徐々に苦戦をしている様子だ。ドワコもハンマーを振り回し応戦するが数が多すぎる。吹っ飛ばしても次から次へと魔物が襲ってくる。とうとう隙を突かれスミスが魔物の攻撃を受け倒れる。負傷したようだ。即座に状況を察知したジャックがその救助に向かい襲い来る魔物の攻撃を防ぐ。なんとかスミスを回収し後方に下がる。ポールとドワコはその援護に回る。ちょうど4人が固まった状態で魔物と対峙する格好となっている。魔法攻撃をするのは今しかないと判断する。
「ポールさん今から範囲攻撃をするので少し時間稼ぎをお願いします」
「何をするかわからないが承知した」
鉄のハンマーと皮の盾をアイテムボックスへ収納して魔法書を取り出す。魔法を使用するときは両手を開けた状態で魔法書を持たないと発動しない。
広範囲に影響が出るようにイメージして魔法を唱える。
「ファイア」「ウィンド」
火が出現し風の効果で広範囲に広がっていく。そして魔物を焼き尽くしていく。
この時本人は知らなかったが、結果的に複数の属性を掛け合わせることで発動させる複合魔法と言う物を使用していた。
「ストーン」
複数の石が魔物に飛んで魔石に変わっていく。
「ウォーター」
高圧の水が魔物に向かって行き魔物に大きな穴をあけ魔石に変えていく。
これを数セット繰り返す。魔法は同族性の物は連続して使用できず一定の間を開ける必要がある。次に同族性の魔法が使用できるまでの時間稼ぎに他の属性の魔法を使用すると言うやり方をしないと魔法による連続攻撃ができない仕様となっているようだ。これは練習をしている時に気が付いた法則だ。
この攻撃で魔物はいなくなり魔石が沢山転がっている状態となった。ひと段落したので負傷したスミスの様子を見に行く。
「スミスさん大丈夫ですか?今回復しますね。」
やっとで回復魔法を使う時が来た。負傷したスミスには悪いが実験台になってもらう。
「ヒール」
スミスの傷が嘘のように塞がっていき苦痛にゆがめていた顔が元に戻った。
これくらいの傷なら全快する訳ね。なるほど。
「ありがとう。ドワコさん。まさか魔法が使えるとは思えなかったよ」
スミスがお礼を言って全員で魔石の回収を行う。かなりの量が回収できた。その足でダンジョンから出る事にした。
「今日はありがとう。本当に助かったよ。」
とジャックにお礼を言われ、集めた魔石の一部を受け取った。
「また機会があったらよろしくな」
「次は足を引っ張らないように気を付けるよ」
と挨拶を交わし解散することとなった。
今日は沢山頑張ったからよく寝られそうだ。沢山魔石の入った袋をアイテムボックスへ入れて帰路についた。




