買い出し
金貨50枚という大金を手に入れた俺たちは、さっそく街で買い出しを始めた。
まずは子供たちの服だ。あの子たちはボロボロの布きれのような服しか持っていない。これから寒くなるし、温かい服が必要だ。
俺は街で一番大きな衣料品店に入った。
「い、いらっしゃいませ……ひぃッ!」
店番の老婆が、俺の顔を見てカウンターの下に隠れようとした。
俺は極力、紳士的に振る舞うことを心がける。
「すまない。子供服が欲しいんだ。5歳から12歳くらいの男女のサイズで、丈夫で温かいものを」
「こ、子供……服……?」
老婆がおそるおそる顔を出す。
俺は少し考え、商品の棚からピンク色のフリルがついた可愛らしいワンピースを手に取った。
「例えば、こういうやつだ。アリス、どうだ? 似合うと思うが」
俺が巨大な手で、小さなフリフリの服を摘まみ上げる。
その光景は、老婆の目には「幼子を誘拐し、その服を剥ぎ取って戦利品として掲げているオークジェネラル」のように映ったらしい。
「あ、あげます! 差し上げますから! どうかその服の持ち主のことは忘れてあげてください!」
「ん? 代金は払うぞ。……この赤いコートもいいな」
「ひいい! ち、血の色がお好みで……!?」
結局、俺が選んだ服は「素材が良い」ものばかりだったのだが、店側の解釈としては「返り血が目立たない色」「逃走用の迷彩服」と思われたようだ。
大量の服を買い込み、次は雑貨屋へ。
ベッドのシーツ、毛布、食器、そしておもちゃ。
「アデル様、このぬいぐるみ可愛い!」
アリスが熊の縫いぐるみを抱きしめる。
さっき本物の熊を殴り倒したばかりだが、彼女の感性はたくましい。
「ああ、いいな。それも買おう。……店主、これを」
俺が熊のぬいぐるみをレジに置くと、店主は震えながら「呪いの依代ですか……?」と聞いてきた。
ただのプレゼントだと言っているのに、俺が触れた部分から黒い魔力が漏れているように見えるらしい(実際、静電気体質なのでパチパチしていた)。
こうして俺たちは、馬車一台分ほどの物資を買い込んだ。
帰り際、俺は荷台に積まれた山のような荷物を見て満足げに頷く。
「これで、あの子たちも人間らしい生活ができるな」
そのセリフを聞いた街の人々が、
「聞いたか……『人間らしい生活』だってよ……」
「つまり、ペットとして飼育するってことか……」
「なんて邪悪な……」
と噂していることには、気づかないフリをしておいた。
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