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種族なんてどうでもいい

「私は吸血鬼ですよ?」

「え?」


 セナは当たり前の事のように、自然とそう言った。


「冗談じゃなくて?」

「はい」


 ……セナが吸血鬼? ……あの物語とかで出てくる、あの吸血鬼? ……本人の口から言われても、全然信じられないんだけど。

 そもそも、日光の下を普通に歩いてるし。


「それがほんとだとしたら、なんで日光の下を歩けてるの?」

「私はマスターに作られた存在ですから、始祖のようなものだからですよ」


 ……全然意味がわからない。

 なんで私が作った存在だと始祖になるの?


「……もしかして、マスターは私が吸血鬼だと、嫌……ですか?」


 私が微妙な反応をしたからか、セナが悲しそうに、そう聞いてきた。

 そんなセナの様子を見て、私は慌てて答える。


「ううん。嫌じゃないよ」

「ほんとですか?」

「うん。ほんとだよ」


 だって、セナの種族がなんだろうと、セナはセナだもんね。

 それに、人間なんかより、よっぽど吸血鬼の方がいいよ。……まぁ、セナが人間であっても、セナであるならなんでもいいんだけどね。

 だからほんとに種族なんてどうでもいい。

 セナに向かってそう言うと、セナは恥ずかしがりながらも、嬉しそうにしていた。


 そして、セナに案内してもらい、私たちは冒険者ギルドにやってきた。


「マスター、ここで合ってますか?」


 セナは冒険者ギルドの見た目を知らないからか、そう聞いてきた。


「うん。ありがと、セナ」

「はい! 役に立てたなら良かったです」


 セナにお礼を言うと、私はギルドの中に入った。

 中に入ると、一気に中にいた人たちの視線が集まった。

 思わず私の足がすくみそうになった所で、セナが手を繋いでいる手に少し力を入れて、ギュッとしてくれた。

 うん。……大丈夫。私にはセナがいるんだから。……何も怯える必要なんてない。

 私はお礼の意味を込めて、セナの手を握り返すと、受付の人の所に向かって、堂々と歩き出した。


「この子と冒険者になりに来ました」


 受付の人の前に立ち、私はそう言った。

 すると、受付の人は驚いた様子を見せてから「かしこまりました」と言って、作業をしだす。

 

「おいおい、こんなガ――」


 後ろから何か声が聞こえたと思ったら、突然何かが倒れたような音が聞こえた。

 私はびっくりして、後ろを振り返ると、大きな男の人が倒れていた。


「マスター、ただの酔っ払いです。気にしなくても大丈夫ですよ」

「そうなの?」

「はい」


 まぁ、それならいいか。

 普通に体が大きくて、怖いし。関わらない方がいいよね。


「は、発行が終わりました」


 何故か受付の人が怯えながら、冒険者用の身分証を二枚渡してくれた。

 そして、そこにはEランクと書かれていた。

 確か、EランクからSランクまであるんだよね。……まぁ、私たちは身分証代わりに使えて、二人で不自由なく暮らせるくらいお金を稼げればいいから、Cランク位を目指せばいいかな。


「はい、こっちはセナの分ね」

「ありがとうございます!」

「じゃあ、適当な依頼を受けよっか」

「はい、任せてください!」


 私は、セナが喋る度に周りの人達が怯えるのを不思議に思いながら、セナと一緒に依頼を受けた。

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