セナの方が
「だめです。マスターは足が治るまで、私がずっと抱えて歩きますから」
私が下ろしてと言っても、セナは下ろしてくれずに、そう言ってきた。
「い、いや、それは嬉しい、けどね? 依頼だってあるでしょ?」
だから、下ろして? そういう意味を込めて、そう言った。
「大丈夫です」
ただ、セナは下ろしてくれずに、一言だけ、そう言ってきた。
どういうこと? 確かに、セナなら私を抱えたままでも、魔物くらい倒せそうだけど、過保護なセナがこのまま、魔物を倒そうとしたりするかな。
多分しない。……じゃあ、大丈夫ってのは嘘ってこと? ……それも、なんか違う気がする。
「ほんとに? 嘘じゃない?」
そうは思ったけど、一応、そう聞いた。
「私はマスターにそんな嘘、つきません」
すると、そう言ってきた。
……もういいや。どうせ、下ろしてはくれないってのは分かったし、諦めよ。筋肉痛とはいえ、足が痛いのはほんとだし、ここはセナに甘えよう。
そう思って、私はセナに抱きついた。
「んへへ」
セナに抱きつくと、私の胸が更に押し当たった。
すると、さっきとは違って、セナは幸せそうに、笑みを漏らしていた。
……最近、私も変態っぽくなってたけど、セナの方が変態だよね。……まぁ、私も嬉しいから、いいんだけど。
「セナ、ありがとね」
そう思いながら、私はそう言って、セナの頭を撫でた。
「マスターの役に立つことが私の幸せですから」
すると、幸せそうに、そう言ってくれた。
……こうやって、セナにくっついてると、私も幸せで、眠たくなってくる。
「マスター? 眠たいんだったら、眠ってもいいですよ」
私がセナの頭を撫でながら、眠気を我慢していると、セナがそう言ってくれた。
さっき起きたばっかりだし、子供じゃないんだから、そんなに寝ないよ。
「寝ないよ」
「そうですか」
……まぁ、目を閉じるくらいなら、いいかな。
瞼が重いから、閉じるだけでも、楽だし。
「えへへ、マスター……」
「……んー、よしよし」
目を閉じながら、薄れゆく意識で、私は可愛いセナの頭を撫でた。




