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気を遣ってるわけじゃないの?

 私はセナの体温が暖かくて心地よく、いつの間にか眠っていたみたいで、今目を覚ました。

 目を覚ました私は、直ぐにセナと目が合った。……一瞬だけセナの存在にびっくりしたけど、直ぐに昨日のことを思い出して、セナの存在に安心した。


「おはようございます、マスター」

「おはよう、セナ。……セナはちゃんと寝た?」


 私は街の方を見て、まだ門が開いてないのを確認してから、セナにそう聞いた。

 門が開いてないってことは、まだ朝になったばかりってこと。……そして、セナは今さっき起きた感じじゃない。……寝てないなんてことは無いよね? セナ。


「ね、寝ましたよ?」

「ほんとに? 嘘だったら怒るよ」

「う……ご、ごめんなさい、マスター。……本当は寝てません。……で、でも休みはしましたよ!」


 寝てないのに休んだって意味無いでしょ。

 でも、セナはもしもの時の為に私の護衛として起きててくれたんだよね……


「私の為に起きててくれたんでしょ? だったら今回は許すよ。……と言うか、ちゃんと交代で起きる時間を決めておくべきだったよ。私がちゃんと決めておけば、セナも寝る時間を取れたのに……ごめんね」


 私の危機感が足りてなかった。……昨日は自然と二人で寝るのかと思ってたけど、そんなわけないもんね。

 もし次の機会があったら、今度はしっかりしないと。


「ま、マスター、謝らないでください! むしろ起きてられて幸せでしたから!」

「セナ、気を使わなくて大丈夫だよ」


 悪いのは私なんだから。……そんなバレバレの嘘をつかなくてもいいよ。

 起きてられて幸せなわけないでしょ。……私だったら絶対寝たいもん。


「気なんて使ってません! ほんとに幸せだったんです! だ、だって……その、ね、寝てしまったら、マスターの体温を感じられないじゃないですか……」


 セナは少し顔を赤らめながらそう言った。


「い、いや……え? ほ、ほんとに幸せだったの?」

「はい!」


 私はセナの顔をじっくり見るけど、嘘を言ってるようには感じられない。

 

「だ、だから……もし、次野宿することがあっても、こんな感じに……その、マスターの体温を感じさせてください! ……そ、そうしたら私が見張りをしておきますから」

「それは……助かるけど、ほんとに寝なくて大丈夫なの?」

「大丈夫です! 眠ることより、私はマスターを感じたいです!」


 セナが恥ずかしそうにそう言う所を見ると、本気で言ってるんだと分かる。

 ……私も昨日はセナの体温が心地よくて寝ちゃったし、セナもそんな感じなのかな? ま、まぁ、セナが本気でそう思ってるなら、いいか。


「分かった。だったら、もし次こんな機会があったらよろしくね」

「はい! 任せてください!」


 ……次野宿するような時は、テントでも買うつもりだったけど、テントの中からじゃ見張りとか出来ないだろうし、テントは買わなくてもいいかな。

 ……私もセナとくっついてたら寒くないし。


 そして、そんなことをセナと話してる間に、街の門が開いてきた。

 

「セナ、門が開いたから、行こう」

「はい!」


 セナは私をお姫様抱っこしたまま、木から飛び降りる。

 私は衝撃が来ると身構えたけど、衝撃が来ることは無かった。

 私がそれを不思議に思ってる間にセナは街に向かって歩き出した。


「待って、セナ」

「どうかしましたか? マスター」

「下ろして」

「私なら大丈夫ですよ?」

「そうじゃなくて、私が恥ずかしいから」


 流石に街に入って、お姫様抱っこをされたままだと、色んな人に注目されてしまう。

 それは流石に恥ずかしい。

 だから、私はセナにそう言った。


「……分かりました」


 セナは私の命令だからと、渋々私を下ろしてくれた。

 ……そんなに私をお姫様抱っこしてたかったのかな。……まぁ、ここは私たちが逃げてきた街から近いし、すぐに出ていく予定だから。……その時にまたお願い。とセナに言ったところ、セナは笑顔で頷いてくれた。

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