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持ってるなら、早く出してよ

「すぅ……はぁ……」

「せ、セナっ! ほんとに、無理、恥ずかしいから! 臭いから!」


 わざとらしく、匂いを嗅ぐ音を出して、私よ匂いを嗅いでくるセナに対して、私は顔を熱くしながら、そう言った。


「ますたぁ……ごめんなさい。我慢、出来ないです……」


 すると、そう言って、セナは更に私の匂いを嗅いでくる。

 私の力じゃ引き剥がせないし、私は受け入れるしかないことを悟って、抵抗を辞めた。

 ……うぅ、最近、セナの我慢が効かなくなってきてる気がする。……我慢しなくても、私がセナのことを嫌いになったりしないって分かってるからかな。……こういう、恥ずかしい事じゃなければ、我慢しなくてもいいけど、こういうのは、出来れば我慢して欲しいよ。

 ……と言うか、私のこんな汗臭い今の匂いを嗅ぐのなんて、何が楽しいんだろう。






「せ、セナ、これ以上は、もうダメだから。これ以上はほんとに、嫌い、になるよ」


 しばらく時間が経って、一向に終わる気配がなかったから、私はそう言った。

 仮に、これ以上匂いを嗅がれたとしても、別に嫌いになったりはしない。でも、こう言わないと、やめてくれないと思ったから、そう言った。

 

 すると、セナはビクッ、と一瞬震えてから、恐る恐ると言った感じで、私の真っ赤に染まっている顔を見つめてきた。


「……ごめん、なさいマスター……嫌いに、ならないでください……」

「……やめてくれたら、ならないから」


 セナが涙目でそう言ってくるから、私は安心させるように、そう言った。

 

「……はい。ごめんなさい」

「……やめてくれたし、セナのことは好きだから、そんな顔しないで」


 さっきまでと違って、しゅん、とした感じのセナに、私はそう言った。

 ……もう今の匂いは嗅がないで欲しいけど、そんな顔はされたくないから。


「セナ、タオルとか、持ってない?」


 セナが離れてくれたおかげで、汗でセナとベタベタしていたのは無くなったけど、汗をかいてることに変わりは無いから、私はダメ元でそう聞いた。

 そもそも、タオルなんて拭くものを持っていたんだとしたら、私が汗を気にしてる時に出してくれてるはずだし。


「ありますよ。使いますか?」


 そう言って、セナは当たり前のことかのように、黒い渦みたいなのの中から、タオルを取り出した。

 ……いや、持ってるの? じゃあ、さっき出してよ。


「さっき、出して欲しかったんだけど」

「……私も、忘れてました」


 怪しい。

 怪しいけど、もう済んだことだし、タオルを受け取って、汗を拭いた。

 ……汗を拭いても、セナがさっきくっついてきてたせいで、体がベタベタする気がするんだけど。

 ……はぁ、水浴びしたい。それか、服脱ぎたい。……痴女じゃないんだし、脱がないけどさ。

 

 もう、匂い嗅がれちゃったんだし、このまま、セナに持ってもらって、寝ようかな。……いや、やっぱり、一度下がれたとはいえ、嫌だな。

 もう、地面で寝ようかな。地面は芝生だし、多分、大丈夫でしょ。


 そう思って、私は汗を拭いて、タオルをセナに返したあと、地面に横になった。

 セナは何故か、私が返したタオルを見つめていたから、私が地面に横のなったのに気がつくのに、少し遅れていた。

 ……嗅がないでよ?


「ま、マスター!? 何してるんですか!?」

「何って、寝るんだよ。疲れたし」

「で、でも、汚いです! いつもみたいに、私が抱えますから!」

「……大丈夫」

 

 汚いのは汗でどちみちだし、いつもみたいには今日は無理だから、私はそう言って、眠りについた。

 いっぱい歩いて、足が痛かったこともあって、すぐに眠りにつけた。


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