ただでさえ目をつけられてるのに
冒険者ギルドに入ると、中にいた人たちから視線を向けられたけど、話しかけられることは無かったから、そのまま、依頼が貼ってある場所の前に移動した。
……討伐依頼が無い。あ、でも、討伐依頼じゃなかったら、私もできるのか。
そう思って、討伐依頼じゃない依頼を見たんだけど……やっぱり無理かも。
だって、貴族からの変な依頼なんだもん。……やめておこう。……ただでさえ一人の貴族に目をつけられてるのに、違う貴族にも目をつけられたら、大変だから。
「セナ、やっぱり、今日はいいや。まだ暫くはお金、持ちそうだし」
「分かりました」
そう思って、私がそう言うと、セナは直ぐに頷いてくれた。
……一応、宿の場所は分かってるけど、どうしようかな。……さっさとあの貴族の手の届かないところに行きたい気持ちもあるけど、普通にベッドでセナと一緒に眠りたい気持ちもあるんだよね。
「お腹もいっぱいになったし、街、出よっか」
「はい!」
悩んだ結果、街を出ることにした。
ベッドで眠るのはもちろん気持ちいいんだけど、セナの腕の中で眠るのも、結構好きだから。
そう思いながら、セナと一緒に、街を出た。
そして、街を出たところで、私はセナと手を繋いだ。
「えへへ」
すると、セナが嬉しそうに、笑みをもらしていた。
「マスター、疲れてませんか?」
そんなセナと一緒に暫く歩いたところで、セナがそう聞いてきた。
……正直、ちょっと疲れてきたけど、体力を少しでもつけたいから、私は首を横に振りながら言った。
「まだ大丈夫だよ」
「そう、ですか」
すると、何故かセナは残念そうに、そう言ってきた。
よく分からないけど、私はそんなセナと手を繋ぎながら、歩いた。
……疲れた。
「マスター、大丈夫ですか?」
私が汗をかいてきた所で、セナがそう聞いてきた。
大丈夫じゃないけど、こんな汗をかいてきてるのに、セナに抱えられたくないから、私は大丈夫だと言った。
まぁ、夜になってきて、涼しくなってきたし、大丈夫でしょ。……多分。
「マスター、無理は、しないでくださいね?」
「……うん」
現在進行形で無理をしてると思うんだけど、私は頷いておいた。




