セナさえ居ればいいし
「美味しかった」
セナと料理屋さんに入って、料理を食べ終えた。
私が食べてる所を美少女がにこにこしながら見てくるんだから、当然、視線は集まるよね。いつもの事とはいえ、いたたまれない気持ちになった私は、そう言いながら、そそくさとお店を出た。
「良かったです!」
すると、私の言葉を聞いたセナは、笑顔でそう言ってくれた。
私は可愛いなぁと思いつつ、適当な話をしながら、セナと一緒に街を歩いていると、人だかりが見えてきた。
「人だかりが出来てる……行ってみよ、セナ」
私は興味本位でそう言った。
私一人だったら、絶対行ってみようなんて思わなかっただろうけど、セナがいるから、そう思った。
「マスターには必要のないものですよ?」
すると、セナはあの人だかりがなんで出来てるのか分かってるのか、そう言ってきた。
「なんの人だかりか分かるの?」
「はい」
「なんの人だかりなの?」
「マスターには必要のないものです」
私が聞いても、セナはそうとしか答えてくれない。
セナは答えてはくれないけど、人だかりに歩いていく私の事を止める気配もないから、見ちゃだめなものでは無いんだと思い、私はセナと手を繋いで、人だかりの方に歩いていった。
「……奴隷?」
「マスターには必要のないものだったでしょう?」
人だかりの中心にいたのは、首輪を嵌められた、綺麗なエルフのお姉さんだった。
そして、それを見た私は思わずそう呟いた。
そんな私の呟きを聞いたセナは笑顔でそう聞いてきた。
……笑顔で、もちろん可愛いんだけど……なんだろ、ちょっと、怖い? いや、セナだから、怖くはないや。
「うん、いらないね」
なんであのエルフのお姉さんが奴隷になったのかは知らないし、無理やり、奴隷にされたのかもしれないけど、私には関係ない事だし。……そもそも私はセナさえいれば、それでいいし。
「そうですよね。マスターには私がいますもんね!」
私の言葉を聞いたセナが、嬉しそうに、そう言ってきた。
「うん」
私はそんなセナの言葉に頷きながら、セナを少しだけ、抱きしめた。
「セナ、行こっか」
そして、抱きしめるのをやめた私は、そう言った。
あのエルフのお姉さんを買うつもりなんてないんだから、ここに居ても、意味が無いと思ったから。
「はい!」
セナが頷いてくれたのを確認して、私はセナと一緒に、人だかりを離れた。




