どうしたの?
セナと一緒に部屋を出て、宿の人に夕食を頼んだ。
私の分だけって言うと、いつも通り怪訝そうな目で見られたけど、特に何も聞かれずに、部屋でお待ちください、と言われた。私が部屋で食べたいって言ったから。
「セナ、私が夕食を食べたら、追っ手が来る前に、この街、出よっか」
私は、部屋に入ってから、セナにそう言った。
もう夜だけど、今日は、いっぱいセナとくっついて……色々されて、いっぱい寝たから、眠れる気がしないし、それだったらさっさと街を出て、あの街から離れようと思って。
「……はい、分かりました」
すると、セナはそうやって、頷いてくれた。……ちょっと残念そうだけど。……嫌なのは私もだけど、逃げない訳にはいかないから、私は、何も言わずセナの頭を撫でた。
私がセナの頭を撫でると、セナは嬉しそうに、軽く、私にギュッとしてきた。そして、私が頭を撫でやすいように、そのまま、頭を少し下げてくれた。
私はそんなセナの様子が可愛くて、笑みを漏らしながら、セナの頭をそのまま、撫で続けた。
しばらくそうしていると、部屋の扉がノックされた。
私は、さっき頼んだ夕食を宿の人が持って来てくれたんだと思って、私のことを軽くギュッとしてきているセナから離れようとしたら、力を強めてギュッとしてきた。
「ん、セナ? どうしたの?」
嫌なわけじゃないけど、今は夕食を受け取らないとだめだから、私はセナにそう聞いた。
すると、今度はセナが何も言わず、私の頭を撫でてきた。
「せ、セナ?」
いつも、私がセナの頭を撫でることはあっても、私がセナに撫でられることは無かったから、初めての感覚で、さっきのセナみたいに、セナのことを軽くギュッとしそうになるけど、私はそんな気持ちを抑えて、もう一度、どうしたの、と聞いた。
すると、私がそう聞いた瞬間、さっきより強く扉がノックされた。
私は急に扉がドンドン音を立ててノックされたことにびっくりして、セナに抱き着いてしまった。
「……殺す」
私がすぐにセナから離れようとすると、セナの胸に顔を押し付けられて、頭を撫でられた。
その時、セナが何か言ってた気がするけど、服越しとはいえ、大好きなセナの胸に顔を押し付けられた私は、動揺して、うまく聞き取れなかった。




