キスとは違った感じ
……早く、少しでも早く、追っ手が来てる可能性があるから、逃げないとだめなんだけど、今日くらいは、セナとこうしてたいな。
セナとキスをして、そんなことを考えてたのが、まだ辺りが明るかった時。
そして今は……宿から外を見ると、もう真っ暗だった。
……確かに、そうは思ったけどさ、ほんとに、セナとイチャイチャするだけで一日を過ごしちゃったんだけど。……しかも全裸で。
「マスター? どうかしましたか?」
私が軽い自己嫌悪に陥っていると、セナが可愛らしく首を傾げながら、私の腕の中でそう聞いてきた。
そんなセナの様子を見ると、別に一日くらいいいかって考えになってくるけど、いいわけがない。……私は早く、追っ手なんかが来ない場所に行って、セナと二人で平和に暮らしたいんだから。
と言うか、あの貴族、いつまで追ってくるんだろう。……ずっとだろうなぁ。……貴族って、しつこいから。
「んっ」
私が無言でそう考えていると、セナが急に私の唇をこの前みたいに、舐めてきた。
「せ、セナ?」
さっき、私からキスをした訳ではあるけど、唇を舐められるのは、キスとは違った、何か、胸の奥からゾクゾクと込み上げてくるものがあるっていうか、とにかく、キスとは違うから、変な声を上げてしまったのを誤魔化すために、私は直ぐにセナのことを呼んだ。
「私との時間なのに、マスターが、私以外の人を考えるからですよ。ちゃんと、私のことを考えてください」
すると、セナはそう言ってきた。
「ちゃんと、考えてたよ」
私は反射的にそう言った。
確かに、ちょっとだけ、余計なことを考えたかもしれないけど、ほんとにちょっとだし。
「ほんとですか?」
「うん。私はセナが大好きだから」
「えへへ。私もマスターの事が大好きですよ」
そう言って、最後にセナにもう一度短く、キスをして、私はセナから離れて、服を着だした。
その時、セナは残念そうにしてたけど、何も言わないでくれた。
……私も、出来ればセナとずっとこうしてたいって気持ちが伝わったのかな。……もし、そうだったら、嬉しいな。
「セナも服、着よっか」
「……はい」
私が服を着終わったところで、セナにそう言った。
セナは私の着替えを見るのに夢中だったみたいで、まだ裸のままだったから。
……嬉しいけど、恥ずかしい気持ちを抑えながら、私は服を着たセナを連れて、朝食……夕食を食べに行った。




