人間なんて、みんな……
「護衛、ありがとうございます」
セナが私のことを離してくれて、私がセナから離れたところで、ちょうど、商人の人がそう言って、目を覚ましてきた。
そして、そのまま私たちに、持ってきてなさそうだからと、朝食を渡してくれた。
「ありがとう、ございます」
私は商人の人にそう言って、頭を下げた。
「……セナの分も貰ったけど、セナって食べれるの?」
そして、商人の人が朝食を食べるために戻って行ったのを確認した私は、セナにそう聞いた。
「マスターが食べてくれて、大丈夫ですよ」
「……いや、そんなに食べられないよ」
「でしたら、私が持っておきますね」
そう言って、セナはこの前のギルドで使っていた赤黒い渦のようなものを出して、そこにセナの分として貰った朝食を入れていた。
……魔物が入れてあった場所に入れられたものを食べるのは、少し抵抗があるし、本当にもしもの時のために、とっておいてもらおうかな。
「ありがとね、セナ」
「はい! マスターの役に立てたのなら、良かったです」
私がお礼を言うと、セナは微笑みながら、そう言ってくれた。
「……セナ、これも入れておいて」
そう言って、私は、私の分として貰った、朝食をセナに渡した。
別に、お腹がすいてないわけじゃないけど、自分で買ったやつか、セナが買ったやつじゃないと、嫌だ。……あの人が、変なものを入れてる可能性だって、全然あるし。一応、私たちは逃亡中の身だし、普通にギルドでは犯罪だって起こしてるし、どこかでそれを知って、私たちを売ろうとしてるかもしれないんだから。
……人間なんて、みんな自分の利益を優先するんだから。……あの時、私はそれを知ったんだから。
「マスター、大丈夫ですか?」
私がそう考えていると、セナが心配そうに私の顔を覗き込んできた。
「大丈夫だよ?」
私が朝食を食べる気がないから、聞いてきたのかな? それだったら、もう何回も我慢したことあるし、ちょっとくらいなら、大丈夫だよ。
そう思って、私はそう言った。
「マスターには、私だけがいますからね?」
「……? 分かってるよ?」
「えへへ、そうですよね」
すると、セナが急にそう言ってきた。
いきなり、どうしたんだろう。そんな分かりきったことを言っきて。
よく分からなかったけど、私は首を傾げながら、そう言った。
すると、セナは嬉しそうに、頷いてくれた。
「そろそろ、出発しますよ」
そして、セナとそんな話をしていると、商人の人がそう言ってきた。
私は商人の人に頷いて、セナと一緒に荷馬車に向かった。
セナがいてくれたら、何があっても大丈夫だと思うから。




