二人っきりになりたいから
「マスター、そろそろ起きてください」
「……ん」
セナに優しくそう言われて、私は目を覚ました。……セナの腕の中にすっぽり収まりながら。
「私、知らない間に寝ちゃってたんだ」
私はセナの腕の中で、呟くようにそう言った。
「……保険の人とか、見てなかった?」
「大丈夫でしたよ」
「ほんと? じゃあ、試験、大丈夫そうかな」
別に、私は何もしてないし、セナだけでもランクが上がってくれるなら、全然いいんだけど、どうせだったら、セナと一緒がいいと思って、私はそう言った。
「はい、大丈夫ですよ。私がいますから」
「……ありがと、セナ」
最後のセナがいるからってのはよく分からないけど、セナなりに私を元気づけようとしてくれたんだろうから、私はそう言った。
そして、そろそろ商人の人も起きてくるだろうから、私はセナから離れようとしたんだけど、セナにギュッとされて、離れられなかった。
「セナ? そろそろ離れよ」
「……もう少し、だめですか?」
そして、私がそう言うと、セナは悲しそうに、そう聞いてきた。
……セナの体温が温かいし、私ももう少しこのままでいたいけど、商人の人が起きてきちゃうし、ちゃんと護衛をしてたように見せないとだめだから、私はセナにだめだと言った。
「……あいつが、起きてこないようにしてきたら、もう少し、このままでいいんですか?」
すると、セナは可愛く首を傾げながら、私にそう聞いてきた。
「……一応言っておくけど、二度と起きないとかじゃ、だめだからね? ……それに、起きてくるとしても、早くこの昇格試験を終わらせて、セナと二人っきりになりたいから、ほんとにだめ、だよ?」
念の為に、私はそう言っておいた。
すると、セナは私の言葉に恥ずかしそうにしながらも、嬉しそうに笑みを漏らしていた。
「分かりました。私も、早くマスターと二人っきりになりたいので、今は我慢します!」
「うん」
セナは私を抱きしめながら、そう言ってきた。
だから、私もセナに体を預けながら、頷いて、セナが離してくれるのを待った。
「護衛、ありがとうございます」
そして、セナが私のことを離してくれて、私がセナから離れたところで、ちょうど、商人の人がそう言って、目を覚ましてきた。




