答えになってない
荷馬車が街を出たところで、シルヴの方向がなんとなく分かった。
……やばい。この街に来る前に、いた街の方向だ。……もしかして、あの街がシルヴだったのかな。もしそうだとしたら、どうしよう……今のところ、追われてはないとはいえ、多分、あのギルドに報告することになるもんね。
私が色々考えて、不安になっていると、セナが何も言わず、私に肩を寄せてきてくれた。
私はそんなセナのおかげで、さっきまで抱えていた不安な気持ちが一気に吹っ飛んで、思わずセナの名前を呼びそうになるのを抑えた。
一応、人がいるしね。……それに、試験中だし。
そして、しばらくの時間が経った。
私とセナは保険の人に見えないようにしながら、隣同士に座って手を繋いでいる。試験中にこんなことするのはよくないと思うけど、どうせ私は何も出来ないし、セナが居れば大丈夫だと思うから。
今まで、街に移動する時だって、魔物なんて見たことないし。
「おい! 馬を止めて、馬車を置いていけ!」
私がそう思っていると、突然外から、そんな声が聞こえてきた。
「な、なんだあぎゃあああぁぁぁぁ」
と思ったら、今度は突然そんな叫び声が聞こえてきた。
……どうしたんだろう。セナは隣にいるし、保険の人が何かやったのかな。
そう思って、私は保険の人がいる方向を見たんだけど、保険の人は外を見て、唖然と口を開けているだけだった。
私はセナがなにかしたのかと聞こうと、セナの方を見たんだけど、何故かセナの方を見た瞬間、私はセナに抱きしめられて、頭を撫でられた。
「セナ? いきなり、どうしたの?」
「マスターが可愛かったんです」
私がそう聞くと、セナは答えになってない、意味のわからない返事をしてきた。
……意味は分からないけど、私はセナに頭を撫でられるのがちょっとだけ心地よくて、そのまま体を預けようとしたけど、今が試験中なのを思い出して、私は聞いた。
「セナ、護衛、大丈夫そう?」
「はい、大丈夫です!」
すると、セナは自信満々にそう答えてくれた。
私はそんなセナの様子を見て、大丈夫そうだなと思って、保険の人も、商人の人も、唖然としていたから、今度こそ、セナに体を預けた。




