昇格試験
昨日ギルドを出てから、一昨日街に来た日みたいにセナと一緒に歩いて宿を探したんだけど、結局見つからなかったから、また、私は街の外でセナに抱えられながら、セナの腕のなかで目を覚ました。
「……セナ、おはよ」
「おはようございます、マスター」
「……ギルド、行こっか」
「はい!」
挨拶をしてから、私はセナにそう言った。
まだ眠いけど、遅れて昇格試験が受けられなくなったら、困るから。
「お待ちしておりました。奥へどうぞ」
ギルドに入って、受付の人の前に行ったところで、そう言われた。
「あ、本日はどうもよろしくお願いします」
私たちは言われた通り、奥に向かうと、そう言って、頭を下げてくる小太りの男の人がいた。そして、その隣には、もう一人、男の人がいた。
「……こちらこそ、よろしく、お願いします」
まだ、どういう感じなのかは分からないけど、私は取り敢えず、そう言った。
セナは私の隣にいるけど、特に何も言わずに、私の隣に立ってくれてる。
「私はもしもの時の為の、保険だとお思い下さい」
私が絶対に一人だったら、喋れなかっただろうなと思っていると、商人の人の隣にいた男の人がそう言った。
まぁ、そうだよね。……私たちはまだ護衛なんてやったことも無い素人だし、そういう保険がないと、この商人の人もなんの実績もない私たちを護衛になんてしないよね。
「分かりました」
そう思いながら、私はそう言った。
「それでは早速、私はシルヴに向かわせてもらいますので、護衛をよろしくお願いしますね」
「分かりました」
商人の人が私たちに向かって、そう言ってくるから、私は頷きながら、そう答えた。
……シルヴって、どこだろ。……あの街と反対方向だといいな。……そうじゃなかったら、私を追ってるであろう人がいるかもしれないし、たとえ居なかったとしても、またこっちに戻ってくるのが面倒だし。
そう思いながら。
そして、私が頷いたのを見た商人の人と、保険の人は、私たちに着いてくるように言って、ギルドの裏に向かった。
ギルドの裏に来ると、二頭の馬が繋がれた、荷馬車が置いてあった。
商人の人と、保険の人は、その荷馬車に向かって、入っていった。そして、馬に何かを言ってから、荷馬車を引かせ始めた。
「お二人も、ちゃんと護衛ができるのなら、入ってくれても構いませんよ。どうしますか?」
そして、商人の人がそう聞いてきた。
「セナ、中に入ってても、大丈夫そう?」
私は小声で、セナにそう聞いた。
どうせ、セナのオーラ? 的なので、魔物なんて寄ってこないだろうけど、一応私はそう聞いた。
と言うか、魔物が寄ってこない場合って、試験どうなるんだろう。……普通に達成ってことでいいのかな。……セナのおかげで近づいてこないなんて、言えないし。……それで吸血鬼なんてバレたら、困るから。吸血鬼は普通、日光の下を歩けないから、気が付かないだろうけど、一応ね。
「大丈夫ですよ、マスター。私なら、荷馬車の中でも、ちゃんと守れます。……あ、それとも、私がマスターを抱えましょうか?」
「馬車でお願い。……恥ずかしいからね」
そう聞かれた私は、セナの事が嫌だと勘違いされないように、そう言った。
「……分かりました」
すると、セナはしょんぼりしながら、頷いてくれた。
私は申し訳なく思いつつも、セナと一緒に、荷馬車の中に入った。
すると、さっきまで大人しくしていた、荷馬車に繋がれている馬が急に暴れだした。




