セナがいるから?
あれから結局宿が見つからなくって、私たちは街の外に来ていた。
「結局、宿見つからなかったね」
「そうですね。でも、私はマスターと一緒にいられるのなら、何処であっても幸せですよ」
私が残念そうにそう言うと、セナが微笑みながらそう言ってくれた。
「……私も、幸せだよ」
私はそれが嬉しくて、顔がだらしなくにやけそうになるのを抑えながら、そう言った。
まぁ、幸せなんだけど、宿、どこにあったんだろう。……街に宿がないなんてこと、ないと思うし。
そう思いながら、セナにお姫様抱っこで抱えられた私は、落ちないようにセナに抱きついた。
すると、いつもみたいに私の胸がセナに押し当てられた。そのままセナの顔を見るけど、特にいつもと変わった様子はなくて、可愛い顔で首を傾げてきた。
やっぱり、あの時、私の胸に視線を感じたのとかって、勘違いだったんだな。……もし、あの時見てたんだとしたら、セナは私の胸が好きってことになる……と思うし、好きなんだったら、押し当てられたら何か反応があると思うし。
そう思って、私はセナの顔を見るのをやめて、セナに体を預けながら、目を閉じた。
移動しておくから、もう寝てていいってセナが言ってくれたから。
セナの体温のおかげで、すぐに眠りにつけた私は、朝になって、セナの腕の中で目を覚ました。
「……ん、セナ、おはよう」
「おはようございます、マスター」
目を覚ましてすぐに、私はセナの体温を感じながら、そう言った。すると、セナがそう返してくれて、当たり前のことなんだけど、嬉しくなった私は、セナにギュッとした。
「セナ、街に行きたいから、下ろして。朝食、食べに行こ」
そしてそのまま、私はそう言った。
「わかりました!」
「セナも、血を飲みたかったら、言ってね。……出来れば、夜がいいけど」
「はい!」
笑顔で頷いてくれたセナに、私はそう言った。
そして、セナは私の言葉に頷きながら、下ろしてくれた。
「マスター、そっちはダメですよ?」
街に入って、昨日の宿? みたいな建物があった方向に進もうとしたところで、セナはそう言って、私の手を握ってきた。
「セナ? 別に、昨日の建物に行こうとしてるわけじゃないよ? あっちに、昨日歩いてる時に、料理屋を見つけてたからさ」
「そ、それでも、だめ、です。今は特にダメです。……あっちにも、料理屋はあるので、あっちにしましょう」
セナは申し訳なさそうに、そう言ってきた。
……まぁ、別にどうしてもあの料理屋が良かった訳じゃないから、別にいいんだけど、私はセナになんでダメなのか、聞いてみた。……昨日は聞かなかったけど、今は、昨日とはセナの様子が違って、聞いてもいいと思ったから。
「ま、マスターには、私がいるからです」
すると、そう言ってセナが抱きついてきた。
よく分からないけど、まぁいいやと思って、一瞬だけ、私もセナに抱きついてから、セナが言う料理屋に向かった。




