私が気にしてないんだから
あれから少し経ったところで、私はセナに運ばれながら眠った。
夜だったし、セナの体温で眠くなってきちゃったから。
「マスター、起きてください」
「んっ」
そして、私はセナに起こされた……耳元で優しく。
……いきなり耳元に声をかけられて起こされた私は、そんな声が出てしまった。
「せ、セナ」
「はい、どうかしましたか?」
セナは小さく、こくん、と首を傾げて、不思議そうに聞いてきた。
「み、耳元で、そんな起こし方しないでよ」
「……いや、でしたか?」
私がそう言うと、セナは悲しそうに聞いてきた。
嫌なわけじゃない。嫌なわけじゃないけど、セナにあんな声
聞かれて、恥ずかしいんだよ。
「は、恥ずかしい……から」
私は顔を赤くして、恥ずかしい気持ちのまま、セナにそう言った。
「大丈夫ですよ。可愛かったですから」
すると、セナも恥ずかしそうに、そう言ってきた。
そんなことを言われた私は、更に顔に熱が溜まっていくのを感じて、目に涙が溜まっていった。
「そ、それで、街、とか、ありそう?」
私はそんな気持ちを誤魔化すように、そう聞いた。
「街は無いんですけど、村ならありましたよ?」
「じ、じゃあ、そこに寄って行こう」
食料を持ってたら、わざわざ寄らなかったかもしれないけど、食料がないから、私は村に行くことにした。
……後、今の顔をセナにあんまり見られたくなくて、早く話を進めて下ろして欲しかったってのもあるけど。……まぁ、行かない場合はセナから、私の顔が見えないように、抱きつくつもりだったけど。
そして、下ろしてもらった私は、セナから顔を背けながら、村まで案内してもらった。
そして、村が近づいてきたところで、どうせバレるだろうと思って、私はセナに言った。
「セナ、村に着いたら、何か食べられる物を買って、また街を目指そっか」
「あ……食料……私の、せい、ですか?」
セナは食料を忘れていることに気がついたみたいで、思い詰めたように、そう聞いてきた。
「違うよ。私が忘れちゃっただけだから。食料を買う時間くらいあったしね」
「で、でも……」
私がそう言っても、セナはまだ申し訳なさそうな顔をして、何かを言おうとしてくる。
「……じゃあ、一つ私のおねがいを聞いてくれたら、許すって事にしよ?」
だから、私はそう言った。
「……え? い、いや、そ、それは……当たり前のこと、です。マスターに言われたことを叶えるのは、当然です」
「だったら、ちょうどいいよ。村から食料を貰ったら、川で水浴びをしたいんだよ。……そろそろほんとに汚くなってきてるだろうからさ。……その時に、私を守ってよ。それと、水浴びが終わったあと、私の事を温めてよ」
私はほんとに気にしてないんだから、セナに、私が気にしてないことでそんな顔をして欲しくなくて、私は咄嗟に思いついたことを話した。
「え、でも、それは、むしろご褒――」
「だめなの?」
まだセナが何かを言おうとするから、私はそれを遮って、そう聞いた。
「だ、だめじゃないです! や、やります! 任せてください!」
「うん。お願い」
セナが元気になってくれて良かったと思いながら、私はセナと手を繋いで、村に向かった。




