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近くに居たい

 少し歩くと、すぐに料理が出てくる宿屋が見つかった。

 すぐに見つからなかったら、その辺の人に聞かなくちゃだめだから、すぐに見つかって運が良かったなと思いながら、セナと一緒に宿屋に入った。

 そして、一人部屋を借りてから朝食を頼むと、すぐに借りた部屋に持ってきてくれた。……私たちが一人部屋を借りたからか、セナの方を見て不思議そうにしていたけど、何も言わずに戻って行った。

 

「マスター、美味しいですか?」

「うん。美味しいよ。……ただ、もう手持ちのお金が銅貨八枚しかないよ」


 だから、強制的に一人部屋を借りるしか無かったんだよね。……まぁ、お金があったとしても、この前みたいにセナが節約のためにって言って、一人部屋を借りたかもしれないけど。


「だったら、私がお金を稼いできますよ。マスターはここでゆっくりしててください!」


 セナはそう言って、部屋から出ていこうとする。

 私はそんなセナを咄嗟に抱きしめて、止めた。

 

「ど、どうかしましたか? マスター」


 ……抱きついてから思ったけど、普通に手を取るだけでもセナは止まってくれた気がするけど……ま、まぁいいや。


「わ、私も行くから、待ってて」

「マスターがいてくれるのは嬉しいですけど、私は一人でも大丈夫ですよ。マスターは休んでてください」


 セナがそう言うのを聞いて、私は思わず、セナを抱き止めてる腕に力が入ってしまった。


「ま、マスター?!」

「わ、私が、セナの近くに、居たいの……邪魔、だろうけど、セナから離れたくないの……」


 私は少しづつ恥ずかしくなってきて、目から涙がこぼれ落ちそうになるのを必死に我慢しながら言った。

 セナに早く何かを言って欲しい。……私はこの沈黙の時間が無限に続くような錯覚に陥りながら、セナの言葉を待った。

 セナに拒絶されたくないという思いから、更にセナを抱きしめる腕に力が入ってしまっているけど、セナからしたら私の力なんてたかが知れてるから、大丈夫。


「マスターが邪魔なわけありません! わ、私も、マスターと離れたくない、ですから。……だ、だから、マスターにそう言って貰えて、う、嬉しいです!」


 そう言って、セナからも抱きしめてくれた。

 そんなセナの顔を見ると、顔を赤らめながら、嬉しそうにはにかんでいた。



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