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夕食

 宿も取れたということで、私たちは夕食を食べに、お店に来ていた。


「セナは何を食べる?」

「私は大丈夫なので、マスターが食べてください」


 ……いやいやいや、いくら私でも、それは無理だよ。

 だって、私何もしてないんだよ? セナが働いて稼いでくれたお金で、私だけ夕食を食べて、セナが食べないなんてありえないでしょ。


「大丈夫ってことないでしょ。食べないと」

「マスター……その、私の種族を思い出してください」


 セナは小声で、他の人に聞こえないように、耳元でそう言ってきた。

 耳元で話されて、変な感じになっちゃったけど、それを無視して、私はセナの種族を思い出す。

 そっか、吸血鬼だもんね。……食べられないのか。


「そういうこと」

「はい。そうです。……それで、なんですけど……もし、マスターがよろしければ、後でマスターの血を飲ませてくれませんか? ……あっ、だ、だめなら大丈夫ですから!」


 セナは遠慮がちに、また耳元でお願いしてきた。

 

「もちろんだめなんかじゃないよ。部屋に行ったら、飲んでいいからね」

「は、はい!」


 だめなんて言うわけが無い。

 セナのおかげで私は今、夕食を食べられるんだから。


「じゃあ、私だけ頼むね」


 そうセナに言ってから、私は適当な料理を頼んだ。

 その際、私の分だけを頼むのを、怪訝そうな目で見られてしまった。

 あの人の目で気がついたけど、事情を知らない人から見たら今の私ってかなり性格が悪いよね。セナの前で私だけが夕食を食べるんだから。

 い、いや、他人の目なんて気にせずに、食べよう。


 そう思った私は、怪訝な目で見られながら、夕食を食べ終えた。

 そして、その間セナは、私の食べている所を幸せそうに見ていた。

 ……正直それが一番恥ずかしかったかもしれない。






「美味しかった」


 私はそう言いながら、宿の借りた部屋に入った。

 そして、部屋に入った私は、宿屋の人に貰ったお湯が入った入れ物にタオルを入れ、タオルをよく絞ってから取り出す。


「セナ、私が体を拭いたら血を吸っていいからね」

「あっ、ま、待ってください!」


 服と下着を脱いでから、そう言って私が体を拭こうとしたところで、セナが妙に顔を赤らめながらそう言った。

 

「どうしたの?」


 私は手を止めて、そう聞いた。


「あ、えっと……拭く前に、飲みたい、です」


 セナは耳の先まで真っ赤にしながらそう言った。

 いや、まぁ私としてはいいけど、そこまで恥ずかしがることかな? ……吸血鬼的には恥ずかしいのかな。


「いいよ」


 能天気にそう考えた私は、指をセナに向けながら、そう言った。

 あの牢屋で飲まれた時と同じ感じだよね。

 あの時はまさかセナが吸血鬼なんて思わなかったなぁ……そもそも、セナがこんなに強いことすら知らなかったし。


「あ、あの、マスター……」

「ん? 飲まないの?」

「あ、あの時は緊急だと思ったので、指から飲みましたけど、ほ、ほんとは……く、首元から飲みたいです……」


 セナは更に顔を真っ赤にさせながら、言いにくそうにそう言ってきた。

 まぁ、私的には、そうなんだって思うだけだ。


「うん。いいよ」


 私は、首元の髪を退けながら、そう言った。


「あ、後ろ向いてた方がいい?」

「い、いえ、そのままで大丈夫です」


 セナはそう言いながら、私に近づいてくる。

 私は少し痛いのを覚悟して、目を閉じた。


「ひゃっ」


 すると、首元をセナに舐められた。

 噛まれて痛いのを覚悟していた私は、びっくりしてそんな声が漏れてしまった。

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