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どれだけ過保護なの!?

 ゴブリン討伐の依頼を受けた私たちは、森の中に来たんだけど……魔物どころか、動物すら現れない。


「……セナ、魔物が出てくるように、セナのオーラ? って言えばいいのか分からないけど、抑えられない?」

「……ごめんなさい。これでも抑えてる方なんです」


 セナは申し訳なさそうにそう言う。

 まぁ、それなら仕方ないよね。……でも、どうしようかな。……セナが居なかったら当然魔物は寄ってくると思うけど、セナが居ないと勝てないんだよね。


「セナ、ゴブリンの位置とか分からないの?」

「それは分かります。でも、近づくと直ぐに逃げちゃって……」


 逃げるって言っても、ゴブリンよりセナの方が早いはず。……と言うことは、私が居るからセナがゴブリンを倒せないのか……


「セナ、私のことは一旦はいいから、ゴブリンを狩ってきてよ」

「だ、だめです。マスターから離れて、その間にマスターに何かあったらどうするんですか!」


 セナは私に抱きついてきて、絶対に離れないとアピールしてくる。


「ちょっとくらい大丈夫だから」


 セナなら直ぐに戻ってきてくれるだろうしね。

 そもそも、セナのおかげで近くに魔物は居ないんだから、ここから動かなかったら、少しくらいはほんとに大丈夫だと思う。


「で、でも……」

「どうせお金が無くちゃ生きていけないからさ。……私が戦えれば一番良かったんだけど、戦えないから……」

「そんなことないです! ……分かりました。すぐに戻ってきますから、マスターはここから動かないでください」


 セナは私に抱きつくのをやめて、そう言う。

 

「うん。お願いね。……あ、それと討伐部位証明は左耳だからね」


 私はセナにそう言いながら、耳を入れる用の袋を渡した。


「分かりました。直ぐに戻ってきます!」


 セナはそう言って袋を受け取ると、一瞬で私の前から姿を消した。

 ……さっきは大丈夫って言ったけど、セナがいなくなると一気に不安になってきた。

 

「大丈夫。セナなら直ぐに戻ってきてく――」

「マスター! ただいま戻りました!」


 そう言いかけたところで、セナが戻ってきた。

 

「いや……え? えっと、セナ?」

「はい、どうかしましたか?」

「ゴブリン、ちゃんと狩ってきた?」

「もちろんです!」


 そう言ってセナは自信満々に袋の中を見せてくれた。

 そこには気持ち悪いくらいゴブリンの耳が入っていた。


「……すごい、ね」

「はい!」


 私はそんな言葉しか出てこなかった。

 だって、セナがゴブリンを狩りに行く前に、あれだけ私を心配するくらいだから、何かがある可能性があるくらいの時間がかかるんだと思ってた。……なのに、一瞬で戻ってきた。……いや、こんな短時間で戻れるのに、あれだけ心配するってどれだけ過保護なの!?

 

 私はそんなセナの気持ちが嬉しくも、恥ずかしくなり、血飛沫ひとつ浴びてないセナの頭を撫でて誤魔化した。


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