左手
左手
これは、高校生くらいの時に見た夢だ。
夢なのに、普通の夢と違う、おかしな夢だった。
夢の中で私は、人通りの多いところで、ただ立っていた。
いや、正確には指一本すら動かせず、金縛り状態で、ある一点を凝視させられていた。
人がザワザワと通り過ぎる中で、少し離れたところに、誰かの左手首から指までが宙に浮いていた。
人差し指だけがスッと伸びていて、何かを指していた。
周りの人たちは行き交うだけで、誰もそれに気づかない。
私に声もかけない。
ゾッとした。
宙に浮かぶ左手は、確かに何かを指さしている。
何を見せようと言うのか。
全く分からない。検討もつかない。
と、声が聞こえた。
ーこれを見ろ。
絶対に嫌だとなぜだか思った。
何か、得体の知れない力が頭や首にかかってきていた。左手の指す方向に無理やり私を向かそうとしてきた。
私はあらん限りの力で抵抗した。
ーこれがお前が『昔』に犯した罪だ。
ーよく見ろ。
ー見なければならない。
私は、心の中で、『そんな前のことを言われたってどうしようもない!』と叫んだ。
『そんな、私が産まれる前のことを、私に言われたって、どうしようもない!』と一生懸命に叫んだ。
左手は何かを指さし続けていた。
青白く、くっきりと空中に浮かんでいた。
人々に焦点が合わない中で、私は力に抗い、浮かぶ左手だけをにらんでー…
その後の記憶は、ない。
あの左手の示す方向に、一体何があったのか。
いまだに本当に分からない。




