安田記念
書きたくなったので主人公のいないレースというものをフルで書いてみました。
宝塚記念は(多分)次回からになります。
某競馬番組
『こんにちは。日曜ウルトラ競馬のお時間です。
本日は春のマイル王決定戦、GⅠ安田記念を中心にお送りしていきます。阪神のメインレースは3歳以上3勝クラス、グリーンステークスです』
『春のマイル王決定戦に相応しいメンバーが揃っております。そして、本日のゲストもそれに相応しいお二方。元調教師の臼井 最強さん。そして競馬本の時野 稔さんです。本日はよろしくお願いします』
『『よろしくお願いします』』
『さぁ臼井さん。本日の安田記念は臼井さんも調教師時代に勇者とも変態とも呼ばれたあの名馬で勝利した思い出深いレースだと思われますが、いかがでしょうか?』
『そうですね。まず前年の覇者ネクストボーイ。香港マイルからの直行と約半年振りのレースとなります。
そこにドバイターフ2着のゲイリーホーン、高松宮記念の覇者ブランギャルソン、前哨戦であるマイラーズカップを勝ったランドトニーと昨年のマイルチャンピオンシップの上位組がどういったレースを見せるのか。
またはヴィクトリアマイル連覇のメイディアーマがウオッカ以来のヴィクトリアマイル、安田記念を連勝で飾るのか。
絶対王者不在のマイル戦線に一つの決着が着くのか。はたまた戦国時代が続くのか。本当に楽しみなレースですね』
『ありがとうございます。時野さんにもお話を聞きたいところですが、もうすぐ東京10レース発走時刻の時間となります。10レースは3歳以上3勝クラス麦秋ステークスです。それではどうぞ』
***
某動画配信
『どうもこんにちは~。えー、今日は安田記念が行われるということで色々話していきたいと思います。
まず今回の出走馬ですがはい、ドーン
1枠①番 ブランギャルソン
2枠②番 スペシャルボディ
2枠③番 ランドトニー
3枠④番 トゥルーパレード
3枠⑤番 ウィットマン
4枠⑥番 ゲイリーホーン
4枠⑦番 グラスレーサー
5枠⑧番 ネクストボーイ
5枠⑨番 シカベラ
6枠⑩番 ウメノキソードマン
6枠⑪番 カノンウィンド
7枠⑫番 スターフォーリナー
7枠⑬番 ライジングフェロー
8枠⑭番 メイディアーマ
8枠⑮番 ネスラー
こんな感じになりましたね。GⅠ馬が5頭6出走する激戦間違いなしのメンバーとなっています。
そして現在のオッズですが、
1番人気 ブランギャルソン 3.3倍
2番人気 ゲイリーホーン 3.8番
3番人気 ネクストボーイ4.4倍
4番人気 メイディアーマ 5.9倍
5番人気 ランドトニー 9.8倍
と、5頭が一桁人気の大混戦となっていますね。
1番人気ブランギャルソンは前走高松宮記念を勝ったことと昨年の3歳マイル王という、東京1600mの実績があるということで1番人気になったのではないでしょうか?
個人的には昨年のスプリンターズステークス覇者グラスレーサーよりランドトニーの人気が高いことに驚きましたね。
恐らくグラスレーサーは前走高松宮記念11着の大敗が響いているのでしょう。
そして各馬の一週前追い切りと直前追い切りを見た私の本命なんですけど、今回の安田記念、本命は③番ランドトニーを選びました。
その理由なんですけど、初勝利からこれまでマイル戦において掲示板を外した事のない抜群の安定感。前々走の中山記念は1800mで15着と大敗したものの、前走マイラーズカップではGⅡ初制覇と勢いに乗っています。
そして一週前追い切りでは今年の天皇賞(春)覇者ヴェンデッタと併せ、先着するなど心身ともに充実している様が窺えます。
GⅠ2勝馬を併せとして起用する等、笠原厩舎も本気で厩舎2頭目のGⅠ馬誕生を狙っていますね。
それでレースの展開なんですけど、今回はガチガチの逃げ馬がいないのでスローペースか遅めのミドルになると思います。その中でトゥルーパレードとウィットマン辺りが前に出て、その後ろにブランギャルソンやメイディアーマ。中団にネクストボーイやグラスレーサーがいて、ランドトニーやゲイリーホーンはいつも通り後ろと有力馬はそれぞれ自分の得意な場所に位置取ると思われます。
そして最後の長い直線でその末脚を遺憾なく発揮し初GⅠタイトルを手に入れて欲しいですね。
では本命を発表したところで買い目なんかも発表していきたいと・・・』
***
「これが3度目のGⅠ挑戦。3度目の正直お願いしますね、横川さん」
「えぇ。前走同様トニーを万全の状態に持ってきてくれた笠原厩舎さんに報いるためにも今日ここで決めたいですね」
東京競馬場のゲート前では安田記念に出走する各馬が輪乗りをしていた。
その中にいるランドトニーと横川 光典。そしてランドトニーの厩務員、井上 泰斗がゲート入りを待っていた。
「トニーは基本的にフクオと一緒ならどんなハードな調教も上機嫌でこなしてくれますから。本当、フクオ様々ですよ」
「前走もそのお陰でしたか。昨年のマイルチャンピオンシップではフクオ君が怪我で離脱していた為、ピークに持っていけず3着に留まりましたからね。万全ならあの結果も変わったかもしれません。
今日はそれを証明しますよ」
「よろしくお願いします。あ、ファンファーレですね」
そう言い会話を終わらせ、誘導に従い特に嫌がらずゲート入りを済ませるトニー。
枠入りは順調に進み全馬がゲートに収まる。
ガシャン!
***
『連覇か、春の短距離王か、女王の君臨か。
さぁ、今週はどんなドラマが待っているのでしょうか。府中5週連続GⅠのラストは安田記念。
既に各馬の枠入りが始まっております。レースの鍵を握る1番人気ブランギャルソンは既にゲートの中。
最後に大外⑮番ネスラーが収まりまして全馬ゲートの中。
伝統の府中マイル安田記念スタートしました。
やや④番トゥルーパレード出遅れたか。落馬ぁ!②番のスペシャルボディが落馬です。スペシャルボディがスタート直後に江口騎手が落馬しています。
スタート直後から波乱の展開となりました安田記念!
先行争いですが、⑪番カノンウィンドが先頭。⑤番ウィットマン赤い帽子、続いて高松宮記念覇者①番ブランギャルソンが続き、その外から④番トゥルーパレードが上がっていく。
それに続いて⑩番ウメノキソードマン、その後ろに前年の覇者⑧番ネクストボーイここにいた。久々のレースですネクストボーイ。
その外ヴィクトリアマイル覇者⑭番メイディアーマが先行グループを形成。
その後ろ中団グループに③番ランドトニー外に⑫番スターフォーリナー、⑬番ライジングフェロー、空馬一頭挟んで⑦番グラスレーサー。
そこから後方グループにドバイ帰り⑥番ゲイリーホーン、そして離れて最後方に⑮番ネスラーという形になりました。
各馬3,4コーナー中間大けやきの向こう側。一頭落馬し14頭での争いになりました今年の安田記念。
3歳マイル王カノンウィンド先頭1馬身のリード。ウィットマン2番手、内からは春のスプリント覇者ブランギャルソンがじわじわと先頭を窺っているぞ。
さぁ、最後の直線コースに入った!
外からはグラスレーサー、スターフォーリナーに更に外からゲイリーホーンも上がってこようとしてきている!
大混戦の安田記念!どの馬が来てもおかしくない!残り300m坂を登る!!
最内カノンウィンド頑張っている!ブランギャルソンは外に進路を取った!中を割ってグラスレーサーだ!外からはゲイリーホーン!
メイディアーマは伸びが苦しい!
残り200m!ネクストボーイはまだ中団!中団でもがいている!ゲイリーホーンだ!ゲイリーホーンが先頭!グラスレーサーまだ頑張っている!グラスレーサー頑張っている!しかしゲイリーだゲイリーだ!カノンウィンドは馬群に沈んだ!
そして外から黒い帽子、ランドトニー横川 光典が来た!ランドトニーがやって来たー!届くか!?届くか!?二頭並んでゴールぅぅぅぅ!
ランドトニーか内でゲイリーホーンか!?
2頭並んだ瞬間、競馬場全体が息を飲んだような錯覚に襲われたような。とにかく凄い競馬を見せてくれましたこの2頭!
時計は1分31秒5。4F 45秒9 、3F 33秒1という競馬。
大激戦のゴール前、一旦はグラスレーサーが先頭に立ちましたが、そこを外からゲイリーホーンとランドトニーが強襲。
最後の直線を改めてカメラで確認。解説、斎藤 肇さんです。』
『いい競馬でしたねぇ。レーサーが一旦出たんですけど、外からゲイリーが必勝パターンで差したところにランドトニーがそれ以上の末脚で並んでくるというね。本当、身震いするようなキレでした』
『スローモーションで見る限り、これランドトニーが差しきってますか?』
『差しきってますね。うわ、凄いなこれ』
『ランドトニーは5歳で初GⅠ制覇。笠原厩舎はヴェンデッタに続き厩舎2頭目のGⅠ馬ということになります』
『厩舎ってそれぞれ特色があってスプリントが得意だったりダートが得意だったりするんですが、笠原調教師のところはマイルと長距離GⅠ獲得ですか。凄いですね』
『今後が楽しみですね。さて、では今のレースをもう一度振り返ってみましょう・・・』
***
「いよっし!よくやったぞトニー!」
レースを観ていた笠原は拳を握りしめ、管理馬の勝利を喜んでいた。それもGⅠともなれば喜びもひとしおである。
「これでうちの厩舎にGⅠ馬が2頭か。もう1頭いるOP馬のメタトロンが予定している次走のプロキオンステークスに勝てば重賞馬が3頭になるな。ただ、なぁ」
笠原厩舎には現状オープン馬3頭が所属しているが、どの馬も古馬である。今年の3歳世代はまだどの馬も勝ち上がっていない。
今週から2歳新馬も始まっているが、今年笠原が預かっている新馬は調教が遅れているため、レースに出るのはまだ大分先だ。
つまり笠原厩舎は現状この3頭で持っている状況だ。
今年は大丈夫。来年も恐らく皆は現役だろう。しかし再来年は?もし怪我で引退となったら?
勿論フクオ達が引退したらすぐ経営難に陥る訳ではないが、のんびりもしていられない。
つまり、今年から来年が勝負の時だ。フクオだけでなく、トニーがGⅠ馬になったことで、マイラーを育てた実績も出来た。
これで来年は今年よりも多くの馬を預かれる下地になるだろう。
「あぁ、いかんいかん。今はこんなことを考えている場合ではないか」
トニーのオーナーを迎えねば。自身の所有馬初のGⅠ勝利だ。フクオの時の水嶋さん同様相当喜んでいるに違いない。
「フクオと言えば次は宝塚記念か。フクオの大一番だが・・・何とか上向いて欲しいものだな」
トニーのオーナーを迎えるべく移動しつつ、笠原はポツリと誰に聞かれるでもなく呟いた。
ナイスネイチャバースデードネーションの寄付額が4000万を越えていて驚きました。
ちなみに1/4000は私の赤スパです。




