天皇賞(春)本番2
本日は桜花賞ですね。
正直今年の春の阪神は荒れそうなので予想するのは難しいですね。
とりあえず応援したいという思いがあるのはウォーターナビレラですね。
京都競馬場で行われる天皇賞(春)のファンファーレが鳴り、各馬がゲートインする光景を北海道は新冠からテレビの前で見守る人らがいた。
ヴェンデッタの生まれ故郷、及川牧場のスタッフ達だ。
「社長、緊張してないかな?」
「重賞、それもGⅠで緊張するなって方が無理ってもんだろ。それも生産者として現地にいるんだから」
「慣れるとしたら、それこそ大手の生産者ぐらいだろう。まぁ、実際はどうだかわからんから想像だが」
馬産地では出産シーズンと種付けシーズンの真っ只中ということもあり、及川牧場も多分に漏れず繁忙期だったが、自家生産馬のGⅠ出走ということで全員ではないが多くの従業員がテレビの前にいた。
「それにしてもスカイシャワーの血筋からGⅠ馬が出るとはなぁ」
「お前それ菊花賞の時も言ってたじゃねぇか」
「そうだったか?でも時代に逆行する配合を繰り返してて内心心配だったんだよ。スカイシャワー自体、近親にも目立つ勝ち馬もいない血統だし」
それを聞いていた年配の従業員が答える。
「スカイシャワーの5代母の姪がメリーナイスの母だと先代が言っていたぞ?」
「遠すぎません?つかチップトップ牝系だったんですねスカイシャワー」
「そろそろゲートイン終わるぞ。ひとまず見守ろうじゃないか」
「ヴェンデッタの年で中央で勝ち上がったのはヴェンデッタだけだからな。頑張って欲しいよ」
そう会話を絞め、各自テレビ画面に集中し始めるのであった。
***
「勝てぇ・・・勝てぇ・・・」
「勝つのよぉ・・・勝ってぇ・・・」
「姉さんに母さん何やってるの?」
「念を送っているのよ。某アニメでやってたの」
「ほら、雄大もヴェンデッタちゃんに念を送りましょう」
馬主席の方では水嶋一家がヴェンデッタの応援を行っていた。某願いを叶える玉を巡るバトル漫画に出てくる、主人公の必殺技のようなポーズをしながらぶつぶつと呟く様を応援と言えばだが。
なお、水嶋 穂高本人は招待と言う形で招いていたヴェンデッタの生産者である及川牧場社長、及川 叶太といた為、巻き込まれるのを回避していた。
「水嶋さん、ご家族と一緒にいなくてよろしいので?」
「気にしないでください。私がいなくても家族は家族で楽しんでおりますから」
念を送るなどという奇行から逃げるための方便として自分といるんだろうなと及川は察したが、わざわざ指摘する必要もないと特に何も言わなかった。
「そういえば、ヴェンデッタの今後のローテーションはどうされるおつもりで?」
なので、前々から聞きたかった事をぶつけることにした。
天皇賞(春)が終わると長距離重賞はほぼなくなる。その為今後は距離適正的なアドバンテージのない距離でのレースになる。
そこをどう考えているのか聞いてみたかった
「そうですね。今日の結果次第ですが春は宝塚記念も出そうかと思っています。秋についてはその結果次第ですね。
すいません、いくつか案はあるんですがまだ決まっていないというのが本当のところでして」
「いえ、こちらこそ少々性急でしたね。まずは今日の結果次第。そのとおりかと思います。あぁ、そろそろファンファーレですね」
及川の言うとおりファンファーレが鳴り、ゲートインが始まる様子を見ながら穂高は考えていた。
及川に海外遠征の事を話していいものか?まだ本決まりではなく、無くなる可能性は十分にある。
やはり、全てはこのレース次第かと結論付け、穂高は心の中で家族がやっているようにヴェンデッタに向けて念を送り始めるのであった。
***
某SNS
@○○○○○○
天皇賞(春)は3200mで行われる日本GⅠの中でも最長距離を誇る伝統の長距離重賞だ
|
@○○○○○○
どうした急に
|
@○○○○○○
近年では中距離レースが重要視され、長距離レースの地位低下が加速しステイヤー血統はほぼ途絶えたと言っていい
|
@○○○○○○
前年の覇者ゴールドアローズも特別ステイヤー血統というわけではない
|
@○○○○○○
確かにゴールドアローズの父や母父は菊花賞や天皇賞(春)を勝った馬ではないな
|
@○○○○○○
そんな中、ヴェンデッタは両親の血統を4世代遡れば菊花賞5勝(本馬も含めれば6勝)、天皇賞(春)6勝と恐ろしいまでの成績を残しており、ヴェンデッタ自体菊花賞、阪神大賞典と長距離重賞2連勝と波に乗っている
@○○○○○○
どうした急にが展開されていて草
@○○○○○○
等と言っている間にゲートイン終わったな
@○○○○○○
スタート!
@○○○○○○
ソプルタァァァァァァァァァレェェェェェ!
@○○○○○○
本来前目の競馬するソプルターレが後ろか。終わったな
@○○○○○○
スタートはヴェンデッタだったけど、ガングライバーとセダンアポロジーが端争いか
@○○○○○○
ヴェンデッタかかってね?
@○○○○○○
珍しいな
@○○○○○○
やっぱり人気2頭は前からか
@○○○○○○
日経賞のオニガリは中団より後ろで有力馬はまぁまぁ定位置か
@○○○○○○
1000m59秒は中々速いな
@○○○○○○
うわー、前2頭大分大逃げになってるな
@○○○○○○
淀の坂に差し掛かるあたりからレースが動くか?
@○○○○○○
お
@○○○○○○
気付いたら先頭との差が縮まってきたな
@○○○○○○
ヴェンデッタとゴールドアローズが来た!
@○○○○○○
やっぱりこの2強か
@○○○○○○
ん?
@○○○○○○
なんか後ろから1頭スゴいのが来たぁ!?
@○○○○○○
フトウフクツ!?
@○○○○○○
やべぇ、一気に交わした!
@○○○○○○
アロォォォォォォズ!
@○○○○○○
ヴェンデッタ粘ってる!
@○○○○○○
差し返した!?
@○○○○○○
うわぁ、どっちだー!?
@○○○○○○
僅かにヴェンデッタか?
@○○○○○○
横川 忠夫ジョッキー初GⅠ制覇おめでとう
@○○○○○○
大接戦だったな
@○○○○○○
いや、ホント4歳世代つえーわ
@○○○○○○
忠夫が勝ったから横川ファミリー3人が同一馬で重賞制覇か
|
@○○○○○○
流石横川家専用機
@○○○○○○
フトウフクツあんなに強かったか?
|
@○○○○○○
ダービー3着は伊達じゃなかった
@○○○○○○
ゴールドアローズは3着か
@○○○○○○
次は宝塚記念かな?
@○○○○○○
宝塚記念はロードケラウノスも出るよなぁ。菊花賞以来の対決か
|
@○○○○○○
2200mじゃケラウノスっしょ
@○○○○○○
今日からまた来月の安田記念まで毎週GⅠが行われる。今日みたいに見事飛んじまうこともこともあるかもしれねぇ。
だが、俺は止まらねぇからよ。だから止まるんじゃねぇぞ
|
@○○○○○○
どっかの団長出てきたな
|
@○○○○○○
タコ負けしただけなのに一瞬かっこよく見えてしまった自分が憎い
***
「よし、先頭に立った!そのまま!そのまま行け!」
「あー!後ろから来てるわよ、逃げて!超逃げて!得意でしょ逃げるの!」
「ああああ!ヴェンデッタちゃん負けないで!負けないでー!」
「何抜かされてんの!根性で抜き返しなさい!根性ー!」
「あ!?差し返し、え?え?え?どっち!!?どっちぃ!?」
馬主席では水嶋一家が最後の直線の攻防に一喜一憂していた。少し離れたところでも同じように叫んでいる人らがいたが、あれがフトウフクツのオーナーなのだろう。
そしてゴール後ターフビジョンに映し出されたゴールの瞬間を見るとヴェンデッタが僅かに差し返していた。
「よし!よし!やったぞ!」
「おめでとうございます水嶋さん!」
「ありがとうございます及川さん。本当にありがとうございます!」
及川とがっちり握手を交わした穂高は素直に喜びを出していた。少し離れたところにいる家族も喜びを爆発させていた。
「これで今後の展望についてもある程度見えてきましたよ」
「それは喜ばしい限りです。それで展望とは?」
「先程言ったように春は宝塚記念に出走させます。その結果次第で凱旋門賞を目指そうと思います」
「が、凱旋門!?」
「あくまで宝塚記念にも勝てればですが。前走阪神大賞典でも不良馬場であれだけ走れるなら欧州でも走れると笠原先生もおっしゃっていますし」
及川は自身が思っている以上の事態になりかけていることを察した。
及川としては天皇賞(春)に勝ったら、秋は天皇賞(秋)を狙って春秋連覇を目指すのだろうと思っていた。これも達成すれば十分な偉業であるのだから。
「それはまた・・・スケールが大きい話ですね」
「あくまでも次の宝塚記念を勝てたらですよ。宝塚は今日のレースよりも厳しいものとなるのは間違いないですし」
「貴方、そろそろ移動しませんか?表彰式もありますし、ヴェンデッタちゃんを労いに行きたいわ」
「あぁ、わかった、行こうか。では及川さん、行きましょう」
「えぇ」
移動を始める水嶋一家を見ながら及川は先代や初代、及川の父や祖父を思い出した。
(爺様が見つけて親父が繋いできた血統が凱旋門に挑むか。ドラマだねぇ。
そうだ、帰ったら墓参りしてヴェンデッタのこと報告するか。)
今まで報告なんてしたこと無かったな。もし爺様や親父が報告を聞けていたら『今頃か!』とか言われそうだな等と考えながら及川は水嶋一家の後を追うのであった。
この作品を書き始めた当初は牝系を軽視していた為、ヴェンデッタのファミリーラインは決まっていなかったのですが、今回新たに設定を加えました。




