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サラリーマン戦記 ~スローライフで世界征服~  作者: 笛伊豆
第五部 第八章 俺が盟主?

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12.帰還命令?

 なぜ海に面した場所なのかというと「すべての国と組織の(ミルトバ)連合」が将来的には野生動物たちの参加を視野に入れているからだそうだ。

「鳥類はともかく海洋生物は岸辺でなければご参加頂けませんので。

 人間や陸上動物はどこでもよろしいと」

 ユマさんが教えてくれた。

 そういえばセルリユ野生動物会議場は海豚が最初から参加していたために海岸に作られたんだったっけ。

 こっちの世界にも潮の満ち引きという問題があるので、会議場全体が浮き島になっていると聞いている。

 会議場の一部が水没していて海豚やアザラシなんかも出席出来るそうだ。

 でも鯨は無理だよね?

「そうでございますね。

 鯨類から文句が出たそうで、新しい会議場を建設中でございます」

 鯨が参加出来る会議場って想像もつかないけど、まあいいか。

 俺には関係ないからな。

 でも「すべての国と組織の(ミルトバ)連合」もそれに準拠することになると?

「はい。

 こちらはもっと大規模でございます。

 それに我が(あるじ)がおっしゃっておられた海洋における魔王の顕現(海底地震)にも対応出来るような設計にする必要がございます」

 そうか。

 海だもんな。

 でかすぎて浮き島(フロート)方式では難しいとか、いっそ桟橋方式にするとか検討がすすんでいるそうだけど、斬新な設計過ぎて建設費がどれくらいになるのか見当もつかないとか。

「なので、とりあえず『すべての国と組織の(ミルトバ)連合』の立ち上げ用会議場として陸上に仮本部を建設致します」

 ここはヤジマ屋敷の応接室。

 セルリユに帰還した翌日、俺とオウルさんは一緒にソラージュ王宮に行って国王(ルディン)陛下に謁見した。

 俺のソラージュ帰国とオウルさんのご挨拶のためなんだけど、もちろん『すべての国と組織の(ミルトバ)連合』関係の報告が目的だ。

 心配していた叱責とかもなく、俺たちは淡々とご挨拶を交わして終わった。

 後で私的(プライベート)に呼び出されて色々聞かれたけど。

 その席にはレネ第一王女殿下やミラス王太子殿下も同席されていて、得意げなレネ様と悔しがるミラス殿下が対称的だった。

 どうもレネ様がソラージュの代表として北方諸国の皆さんに会った事で、ミラス殿下がご不満らしい。

「そうではありません。

 (レネ)はマコトさんと一緒に北方に行ったのでしょう。

 それが羨ましいだけです」

「あら、お兄様(ミラス)はヤジマ大公殿下とご一緒に帝国に行かれたのでしょう?

 これでおあいこですわ」

 つまらないことで喧嘩しないで下さい(泣)。

 しかも同席していたリシカ第二王女殿下が「では次はわたくしの番ですわね」とか乱入してきて三つ巴の争いになってしまったんだよ。

 ルディン陛下やクレパト王妃殿下は笑っているだけだし、オウルさんはなぜか得意げだ。

 まあ俺には関係ないからいいけど。

 ちなみにフレア王太子妃(さん)はちょっと挨拶に出てきただけだった。

 いや、まだ婚約者だったっけ。

 一目で判るくらいお腹が大きかった。

 王室ご一家全員から一斉に無理するなと心配されて、よってたかって座の中心に座らされていた。

 一通り俺たちと雑談した後、すぐにミラス殿下に連れて行かれてしまったけど。

 過保護だな。

 もういつ生まれてもおかしくないそうだ。

 お祝いを用意しておかないとね。

 もちろんユマさん辺りが抜け目なく用意済みだろうな。

 帰国したばかりで疲れているだろうから、というルディン陛下の温情で解放されて王宮から引き上げる。

 ヤジマ屋敷に戻った俺たちはせっかくみんな揃っているのだからと、これからの予定を打ち合わせているんだけど。

 なぜか戦略会議みたいになってしまっているのだ。

 やっぱ帝国皇太子(オウルさん)がいるからなのか。

「そうでございますね。

 意識統一はしておく必要がございます。

 オウル様のご予定も流動的と伺っておりますし」

 ユマさんの説明に、オウルさんは呆れたように応じた。

「ユマ殿は耳が早いな。

 (こっち)より先に情報を掴むか」

「帝国本国にも伝手がございますもので」

 オウルさんが情報戦で負けている?

 それはそうだろうなあ。

 帝国軍情報局長(レイリさん)も引き抜いたし。

 ていうかオウルさん、何かあったんですか?

主上(マコトさん)のお耳を汚す程の事では」

皇帝(アリヤト)陛下より帰国命令が届きました」

 オウルさんを遮ってフレスカさんが答えてくれた。

 さいですか。

 まあ、それはそうだろうね。

 帝国皇太子の諸国親善は完了したし。

 次期皇帝がいつまでも外国をフラフラほっつき歩いていていいはずがない。

「召喚命令ですか?」

「正式なものではございません。

 とりあえず一度戻って来い、というところですね。

 オウル様はまだ帝国において皇太子としての足場が固まっておりませんので」

 つまり帝国の宮廷や政府での付き合いが不足していると。

 皇帝になるのなら当然かもしれない。

 やっぱ足場は固めないと駄目だよね。

 いや、残念です(笑)。

 するとオウルさんが目力を込めて言った。

「こればかりは仕方がございません。

 従者としての役務を一時放棄することをお許し頂きたく」

 凄い迫力だ。

 「許さん」と言ったら大喜びで帝国に反逆するとか皇太子の立場を放棄するとかしかねないな。

 いやもちろん許しますとも。

「さようでございますか。

 仕方がありませんな。

 手早く片付けて戻って参りますので」

 残念そうですね。

 慌てなくてもいいですよ?

 するとフレスカさんが言い出した。

「あまり長期という事にはならないと思います。

 『すべての国と組織の(ミルトバ)連合』の立ち上げもございますし、帝国にはその実現に尽力する義務があります。

 オウル様の陣頭指揮が必要かと」

 皇宮には私が残って代行致しますので、とフレスカさん。

 何、余計な事を言っているんですか!

 「代帝」ってオウルさんが皇帝になってからの話では?

 違うらしかった。

 帝国皇太子は結構好きにやれるようなのだ。

 皇帝(アリヤト)陛下が健在である以上、皇太子(オウルさん)が皇宮いや帝国にいる必要は実はない。

 そもそもこれまでは皇太子なんかいなくても政務が滞ったりしてなかったからね。

 ソラージュ王国の王太子(ミラスさん)と違って帝国皇太子には常勤の仕事がないんだよ。

 ヤジマ財団だと非常勤理事(ロロニア嬢)みたいなものか。

 皇帝陛下さえ承認すれば皇太子(自分)が重要とか必要だと感じることを自由にやれるらしい。

 もちろん予算は限られるけど。

「その点は心配ありません。

 オウル様はマコトさんの後援を受けておられますので」

 フレスカさん酷い。

 人の金で好き勝手やらせようというのか。

 ユマさんの監督下だから大丈夫だろうけど。

 別に俺が心配することじゃないよなあ。

 心配しても始まらないというか何も出来ないし。

「判りました。

 いつ立つんですか」

「出来るだけ早くと考えております。

 その分、帰還も早くなりますもので」

 もっとゴネるかと思ったけどオウルさんは冷静だった。

 あんなに追っかけ(ストーカー)だったのになあ。

 卒業してくれたのかも。

「とんでもございません。

 冬期は関係諸国も動きがないと推察しております。

 その間に帝国の問題を片付けて戻ってまいります」

 さいですか。

 やっぱ大魔王(オウルさん)からは逃げられないらしい。

 まあいいか。

「帰国は船便ですか?」

「はい。

 鯨護衛を含めて手配済みでございます」

 そうか。

 陸路よりは早いし楽だからな。

 あれ?

 じゃあ護衛の帝国軍騎馬隊はどうするんですか?

 するとフレスカさんとユマさんが頷き合った。

「最小限の護衛は連れて行きますし、一部は陸路で帰国いたします。

 その他の者共はヤジマ財団預かりでソラージュにて待機となります」

 何と。

 帝国軍部隊が守る者もないまま外国(ソラージュ)常駐ですか?

すべての国と組織の(ミルトバ)連合』の準備部隊と考えて頂ければ。

 会議場の建設にも従事して頂く予定でございます」

 ユマさんが言うには俺? の提案で設立する予定の「国連平和維持部隊(PKO)」帝国派遣隊の雛形として色々テストする予定だそうだ。

 形としては帝国政府の命令によりヤジマ財団の指揮下で活動する事になる。

 いいんですか?

 帝国軍の人たちは納得しているの?

「命令した所、歓喜の渦でございました。

 むしろ帝国(ほんごく)の軍にこの話が漏れた時が心配です。

 凄まじい嫉妬が巻き起こるのは間違いないかと」

 そうか。

 ヤジマ食堂(レストラン)だな。

 ヤジマ財団の配下として動く限り、美味い飯が確約されると。

「帝国に帰国させる人選が大変です。

 殴り合いで済めば良いのですが」

 そこまでかよ!

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