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サラリーマン戦記 ~スローライフで世界征服~  作者: 笛伊豆
第五部 第八章 俺が盟主?

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3.個別会談?

 ユマさんが早速手配してくれたらしく、翌日から北方諸国の代表者の人たちとの個別会談(謁見)が始まった。

 ちなみに断って来た国はひとつもなかった。

 そもそも俺に会いたいと申し込んできていたからね。

 会って何する気だったのかは知らないけど。

 会談はヤジマ財団が占領している宿舎の応接室? で行われた。

 ヤジマ財団側は俺とユマさんにハマオルさんとラウネ嬢。

 北方諸国の代表者側はご本人と随員だ。

 その代表者って大半が国王陛下だったりして(泣)。

 最初は俺とユマさんが全部説明していたんだけど、時間がかかりすぎるということで急遽説明書を作って事前に配布することになった。

 面会する相手にあらかじめそれを読んで頂き、面接(違)の場では質疑応答だけにして貰った。

 質問はほとんどなかった。

「ありがたいことです」

 何とかいう国の何とかいう国王陛下がしみじみと言った。

 もう初老の方で、王太子だという青年が控えている。

 国のナンバー1と2がそろい踏みかよ!

すべての国と組織の(ミルトバ)連合。

 まさに我々の理想とする組織です。

 しかも魔王顕現の対処もして頂けるとは」

 その辺りは説明書に書いてあるんだけど。

「貴国にも相応の負担をお願いすることになりますが」

「かまいません。

 ヤジマ商会との合弁事業で税収が上がっております。

 雇用についても回復してきていますし、それに伴い出稼ぎに出ていた者共の帰国が相次いでおると報告を受けております。

 魔王が顕現すれば負担どころの騒ぎではなくなるでしょう。

 我が国は喜んで応じましょうぞ」

 さいですか。

 ここまで聞き分けがいいとちょっと罪悪感を感じたりして。

 その分、ヤジマ財団としても気張らないと駄目だよね。

「ではご賛同頂けますか」

「もちろん。

 わしは帰国させて頂きますが、この者(王太子)を代表代理として置いていきますので」

 まあ、確かに王様がいつまでも国を留守にしているのはまずいよね。

 そろそろ寒くなってきたし。

「ご希望があれば、ご帰国の際にはヤジマ財団の派遣隊がお送りさせて頂きます」

「それはありがたい。

 試乗させて頂きましたが『ヤジマ馬車製造』でしたかの新型馬車は最高ですな。

 我が国でも将来的に導入を検討させて頂きます」

 ユマさんの商売人気質は変わらないなあ。

 そういうわけで俺たちは北方諸国の代表者との会合をサクサクと進めていった。

 面会が終わると大抵代表者(王様)は帰国する。

 代理の人は残るけど。

 その人たちが総会まで無聊を囲わないように、ヤジマ財団が手配した娯楽(エンタテイメント)部隊が活躍していた。

 エラやララエ、ソラージュから増援部隊が次々に到着し、トルヌ皇国に一大歓楽街が出現したんだよね。

 トルヌ皇国皇王陛下(セレイナさん)はご満悦らしかったけど、総会が済んだら引き上げますから。

 ていうかこんなに金使ってヤジマ商会は大丈夫なの?

「将来に向けての投資でございます。

 ここにはほぼすべての国の支配層が揃っておりますので。

 ヤジマ商会の娯楽産業をお披露目するには絶好の機会かと」

 鯨を呼べないのが残念でございます、と表情を曇らせるユマさん。

 いやそれは無理でしょう(笑)。

 内陸国だから海洋生物は無縁だよね。

 河海豚(カワイルカ)とか少しはいるみたいだけど、あまり接触はないそうだ。

 その代わりに鳥は多かった。

 群れを作る鳥は縄張りがあるためなかなかヤジマ商会の事業に参加出来ないようで苦情が殺到しているらしい。

「そんなこと言われてもなあ」

「ですが、将来的には地区(エリア)制で魔王顕現の対処を行う必要がありますので。

 現在研究中でございます」

 色々やっているらしい。

 ちなみに大型の渡り鳥とか群れで長距離を飛ぶ(トリ)などはまた別の雇用形態になっているようだった。

 今のところケースバイケースだそうだ。

 例えばララエ公国の顧問に就任したワタリハヤブサのハムレニ殿などは、個人(フリー)としては破格の待遇で迎えられたと聞いている。

 もちろんヤジマ商会を経由して雇用契約を結んでいるわけで、それ専門の会舎が立ち上がったという。

 契約仲介会舎(マネージングビジネス)か。

 それだけで一大産業になりそうだな。

「ヤジマ商会の独占事業でございます」

 どこまで行くんだユマさん。

 まあいいか。

 そんなことをぼやっと考えながら俺たちは北方諸国の皆さんとの面会を順調にこなしていった。

 ちなみに列強諸国の代表団はまだトルヌ皇国に留まっている。

 帝国(オウルさん)は俺から離れそうにないし、エラ王国(ルリシアさん)はそもそも国内向けに俺と親しい所を見せつけるためにここにいるわけで。

 ララエ公国(アレサさん)も似たようなものだ。

 意外だったのはソラージュ王国代表(レネ第一王女殿下)で、寒くなる前にということで必要最小限の随員を伴って帰国してしまった。

 その際、ソラージュの代表権を俺に委任していったから今は俺がソラージュの代表代理らしい。

 だったら最初からそうすればいいものを。

「今回はレネ様とグレンのお披露目というところでしょうか。

 少なくともグレンはこの機会を利用して北方諸国の貴顕との知古を結んだようでございます」

 なるほど。

 将来のソラージュ国王であるミラス殿下(さん)の側近だからね。

 確か「学校」時代の二つ名は「宰相」だったような。

 次世代の外交を一手に担う気かな。

 誰の計画なのかは知らないけど大したものだ。

 レネ第一王女殿下も嫁ぎやすくなりそう。

「そうですね。

 ソラージュ国内には今のところ第一王女(レネ様)が降嫁しなければならないほどの重要な貴族はおりませんので」

 俺が最有力候補なんだけど、(ハスィー)が正室なので無理なんだそうだ。

 それはそうだよ。

 傾国姫(ハスィー)の怒りを買ったら(ソラージュ)は滅ぶ。

「でしたら第一王女は次期国王(ミラス)の側近に嫁がせようという話は納得出来ます。

 実際問題としては決め打ちですね」

「そうなの?」

「はい。

 ソラージュ代表として国外に派遣され、そのお付きが次期国王の側近だとしたらそれ以外には考えられません」

 なるほど。

 未婚の王女だもんな。

 エスコートする近衛騎士がお似合いの年齢のイケメン貴族だとしたらそうなるのか。

 このパターンは最近見たような。

 王女が降嫁するんだったらお相手は子爵辺りに叙爵されるわけだ。

 グレンさんの場合、既に近衛騎士だから判りやすい。

 そういえば俺も近衛騎士の時に子爵にされたもんね。

 つまりこれって王家による青田買いみたいなものなのかも。

「そのようですね。

 さすがはソラージュ国王(ルディン)陛下でございます。

 あの時点で我が(あるじ)の値打ちを見抜いておいでだったのでしょう」

 ユマさんが納得したような感想を漏らしたけど、それはどうかな。

 ルディン陛下は案外そこまで深くは考えてなかったような気がする。

 投資、いや投機のつもりだったのかもしれない。

 息子である王太子(ミラスさん)が入れ込んでいる男がいるから、ちょっと賭け金を載せてみたというところだろう。

 子爵の爵位なんか国王にとってはどうでもいい程度の身分だからね。

 駄目だったとしても無駄にはならない。

 世襲爵位を押しつける事で貴族の身分制度に組み入れてしまえるわけで。

 「自由」である近衛騎士より子爵の方が管理しやすい、とか考えただけかも。

「さすがのルディン陛下も我が(あるじ)については読み間違えたという所でございましょうか。

 まさか帝国どころか世界をも呑み込むとは予想もしておられなかったと。

 ……ところでそろそろ面会は終わりでございます」

「そうだった。

 頑張ろう」

 案外早く面会は終わった。

 北方諸国の代表者の方々も心得ていて、必要以上に話を引き延ばしたりはしなかったからね。

 もちろん例外もあった。

 フユラ王国のアルブレヒト国王(アル)は面会後の夜にこっそり訪ねてきて俺と話し込んでいった。

 何でもヤジマ学園に送った弟王子と妹王女が帰りたくないとかゴネているらしい。

 知るか(笑)。

 フラビア自治領のロゼンカ侯爵の代理と称する人は案山子(ダミー)で、随行員のふりをしている(パーティ)の役職者たちが人払いしてから俺に拝謁してきた。

 俺を党首(リデルバルティエ)と呼んで片膝を突くんだよ。

 共産党には身分なんかないんじゃなかったの?

党首(リデルバルティエ)への敬意でございます」

 さいですか。

 まあ、別に害になるわけじゃないから一通り付き合うと納得してくれた。

 俺は何もしなくてもいいそうだ。

 フラビアは今すぐに共産革命を起こしたいわけではなく、いずれ来たるべき革命の日に備えて雌伏の時を過ごしたいだけらしい。

「本音を言えば今の体制を崩したくないのでございましょう」

 (パーティ)の皆さんが帰った後、ユマさんが言った。

「フラビアの統治はそれなりに上手くいっております。

 ここで下手に動いて変な領主でも送り込まれたら(パーティ)の権力基盤が崩壊しますので」

 そうか。

 世知辛いなあ。

「あの者共にも使い道はございます。

 我が(あるじ)はお気になさらぬよう」

 やっぱユマさん、何か考えてるの?

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