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サラリーマン戦記 ~スローライフで世界征服~  作者: 笛伊豆
第五部 第七章 俺が英雄?

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23.列強揃い踏み?

 会場内が静まりかえる。

 それから誰かの仕込み臭いけど、静かな拍手が広がっていった。

 いや断れないでしょう!

 ていうか誰が断るのか。

 ミルトバ連盟の欠陥が露わになっているな。

 「盟主」がいないんだよ。

 集団合議制だから、まず議題に上らないと決定どころか議論すら出来ない。

 今回のオウルさんの希望についても本来なら「検討させて頂きます」と言って持ち帰るのが筋なんだが、それすら出来る人がいない。

 言った瞬間に自分が当事者になってしまうからな。

 そんな責任は誰も負いたくなかろう。

 その結果が拍手だ。

 これって「承認」だよね?

 オウルさんは笑みを浮かべて軽く頭を下げると着席した。

 すると司会(アナウンス)の人が慌てて声を上げた。

「オウル殿下、ありがとうございました。

 ……では同じくオブザーバーとして参加頂いたエラ王国王太女ルリシア・エラ殿下にご挨拶頂きます」

 進行が早いな。

 明らかに誰かのシナリオに沿っている。

 誰なのかは判っているけど(泣)。

「ルリシアでございます」

 スポットライトの中で、俺の隣で立ち上がったルリシア王太女殿下が優雅に一礼した。

 言い忘れていたけど今日のルリシア殿下(さん)トルヌ皇国皇王陛下(セレイナさん)に勝るとも劣らない派手なドレス姿だ。

 派手なだけじゃなくて露出も多い。

 肩なんか剥き出しだけど寒くないんだろうか?

 ルリシア殿下はそんな俺の心配を物ともせずに話し始めた。

 オウルさんと同じような美麗賛辞を繰り返した後、やはり爆弾を炸裂させる。

我が国(エラ)も連盟に加入致したく、陛下(ちちうえ)より言付かっております。

 よろしくご検討をお願い申し上げます」

 そう言い切って着座する。

 拍手はオウルさんの時より多かった。

 やっぱ若くて美人の北方種(エルフ)だからな。

 オウルさんも南方種(ドワーフ)なんだけど、威圧(カリスマ)が凄すぎてみんな萎縮してしまっていたみたいだし。

「……ルリシア殿下、ありがとうございました。

 ではソラージュ王国第一王女レネ殿下よりご挨拶を頂きます」

 司会(アナウンス)の人、だんだん慣れてきているな。

 これだけの貴顕を立て続けに紹介するのはおそらく生まれて初めてだろうけど、さすがにプロだ。

 レネ王女殿下もルリシア殿下と同じだった。

 こちらはシンプルで上品なドレスなんだけど、むしろ高貴さが増して魅力的だ。

 レネ殿下は北方種(エルフ)南方種(ドワーフ)の血を受け継いでいるんだけど、遺伝的には北方の要素が勝っている。

 つまり色白で金髪だ。

 それでいてソラージュ王妃殿下(クレパト様)の何とも言えない吸引力も受け継いでいるんだから凄い。

 ミラス王太子殿下の女性版なんだよ。

 正直、見た目なら北方種(エルフ)であるルリシア殿下より美人かも。

 レネ殿下もルリシア殿下と同じく、適当な賛辞を述べてからソラージュのミルトバ連盟参加を要望して着座した。

 もうこれは駄目だね。

 断れるはずがない。

 乗っ取りだということが判っていても、国力が違いすぎるからな。

 ミルトバ連盟全体で列強の中では最弱と言えるララエ公国とやっと対抗出来る程度の国力しかないんだもんなあ。

 そのララエ公国公女であるアレサさんもきっちりと役目を果たした。

 狼騎士(ウルフライダー)隊の騎士服じゃなくてやはりドレス姿だ。

 華麗なルリシア殿下や美麗なレネ殿下に比べたら地味だけど、それでも落ち着いていてとても魅力的だった。

 何というか、ちゃんと給料を貰って働いているOL(オフィスレディ)の風格が滲み出ている。

 レネ殿下やルリシア殿下と違って立派な職業婦人(プロ)だもんね。

 正社員の貫禄とでも言うか。

 そのアレサさんも皆さんと同じような事を言って着座した。

 やっぱララエ公国もミルトバ連盟に加わりたいそうだ。

 もはや誤魔化しようもない。

 列強諸国が揃ってミルトバ連盟を乗っ取りに来ている。

 それに気がついたのか、アレサさんが座ると拍手が引いていった。

 ヤバい。

 出席者の皆様、心中いかばかりでしょうか。

 するとトルヌ皇国皇王陛下(セレイナさん)が立ち上がった。

 司会(アナウンス)の人の役目は終わったらしい。

「オブザーバーの皆様、ありがとうございました。

 では最後に今回の総会を後援して下さいましたソラージュ王国のヤジマ大公殿下よりご挨拶を頂きます」

 聞いてないよ!

 不意に視界が真っ白になった。

 スポットライトを当てやがったな。

 そこまでして俺を追い込みたいのか。

 ていうか何を言えばいいんですか?

 頼りのユマさんはいない。

 しょうがない。

 俺はしぶしぶ立ち上がって何か喋った気がする。

 あまり覚えてないけど。

 適当な事を言ってから座ると、物凄い拍手が沸き起こった。

 何?

 どうしてそうなる?

「さすがマコトさんです!」

「言葉もございません。

 主上(マコトさん)には永遠に追いつけない、いえ影を踏むことすら私には無理でしょうな」

 両側のルリシア殿下とオウルさんが言ってくるけど、マジで覚えてないんですが。

 俺、そんなに感動的な事を言った?

 真相は判らなかったけど、晩餐会が終わって宿舎に戻る途中でユマさんに聞いたところ、俺は「ミルトバは永遠に不滅です」みたいな事を言ったということだった。

 何だよそれ。

 巨人の長○か?

 久しぶりに出やがったか。

 俺の知らない「俺」が出てきて勝手に色々言ったりやったりするんだよ。

 後始末は俺で(泣)。

 今回も言いたい放題だったんだろうな。

 ユマさんは舞台(違)の袖あたりでみんなの演説を聞いていたらしい。

 同時に観客席(違)の様子も覗っていて、オウルさんたちが話している間にだんだん暗い雰囲気になっていくのが判ったそうだ。

 拍手はしていたけど、あれは社交辞令だったとか。

 それはそうだよね。

 列強の代表者が揃って北方諸国に介入すると宣言したようなもんだし。

 でも俺が話し始めるといきなり明るくなったらしい。

「我が(あるじ)のお言葉で雰囲気(ムード)が変わりました。

 ミルトバ連盟の永続宣言。

 それはつまり、列強がミルトバ連盟(北方諸国)を認めたわけでございますから」

「どうしてそんな解釈に?」

 そこが判らない。

 俺は列強諸国の代表じゃないし、オブザーバーですらないんだけど。

 言ってみればみんなの付き添いだ。

「だからでございます。

 我が(あるじ)はエラを除く列強諸国において高位身分をお持ちです。

 しかもエラ王太女の後ろ盾に立っておられる。

 つまり列強諸国を束ねているのは我が(あるじ)であると」

「そんな馬鹿な」

「あの席の配置を皆様は理解しておいででございます。

 ですからご安心なさったのでしょうね。

 列強の宣言が乗っ取りではあり得ないと」

 そうなのか?

 いや、どう考えてもミルトバ連盟はお終いなんじゃないの?

 地球で言ったらアフリカ辺りの国が近くの国同士で細やかな相互交流をしている所に、いきなりアメリカとかEUとかロシアとかが「俺たちも入れてくれ」と割り込んできたみたいなもんだし。

 主導権どころか根こそぎ発言権を奪われるとしか思えないよね。

「我が(あるじ)がおられます。

 ヤジマ財団の力を持ってすればミルトバ連盟など最初から手の内同然なのですよ。

 そもそも今回の臨時総会自体、ヤジマ財団の力で開催されたわけでございます。

 それほどの力を持っておられる我が(あるじ)が『ミルトバは続く』と宣言なさったのでございますから」

 そうなっちゃうのか(泣)。

 やっと判ったよ。

 あの席の配置も作戦の一部だったわけね。

 オウルさんたちの真ん中に俺がいるということで列強諸国も俺が全体を把握していると受け取ったわけか。

 オウルさんなんか俺の従者だと公言しまくっているからな。

 さらに言えばレネ王女殿下を除く代表者3人はヤジマ大公家近衛騎士だ。

 レネ王女殿下はミラス王太子殿下の代理だと解釈出来るし、ミラス殿下(さん)もあっちこっちで俺の舎弟だと言いまくっている。

 駄目か。

「大丈夫でございます。

 ここまで来ればもはや作戦目標は達成されたも同然。

 後は細かい手続きのようなものです」

 さいですか。

 そうだろうな。

 マジかよ。

 ユマさん、本当に「国連」を作ってしまったのか。

 いやまだその卵だけど、このまま進めていけば間違いなく国際連盟だか連合だかが立ち上がる。

 ヤジマ財団って凄すぎる。

「我が(あるじ)の手足でございます。

 今後も存分にお使いいただければと」

 これ以上何やるんだよ!

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