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サラリーマン戦記 ~スローライフで世界征服~  作者: 笛伊豆
第五部 第七章 俺が英雄?

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21.夕食会?

 ラヤ様のお話が終わって俺は呆然自失のまま宿舎に戻った。

 ユマさんは夢心地だった。

 何でも俺の正当性が証明されたそうだ。

 何の事やら。

 とにかく疲れたので自分の部屋に逃げ込んでシャワーを浴びてからベッドに潜った。

 目が覚めると日が沈みかかっていた。

 俺もよく寝るよな。

 それだけラヤ様の話が衝撃だったからでもあるんだけど。

 いや英雄とかそういう問題じゃなくて、俺がこっちの世界に「呼ばれた」可能性がある、ということだ。

 あり得ないとは思うんだけどね。

 でも確かに初代帝国皇帝陛下(ヴァシールさん)も俺もこっちの世界にとって都合が良すぎる転移をしているんだよなあ。

 ジャストインタイムというか、最適人材のチョイスというか。

 ラヤ様も陰謀論を否定しなかったし。

 でも俺の考えは違うんだよ。

 とりあえず起きてまたシャワーを浴び、いつの間にかソファーに用意されていた室内着に着替える。

 忍びの者(メイド)が動いているんだろうな。

 もう慣れた。

 ソファーに座って配膳されていたお茶を飲む。

 まるで家事妖精(ブラウニー)がいるみたいだ。

 それはいいとして、陰謀論がなくても俺や初代帝国皇帝陛下(ヴァシールさん)の存在は説明出来る。

 問題は転移した事じゃなくて、俺たちが「迷い人」としての役割を果たしたことだから。

 ゲームと違って軽小説(ラノベ)やSFに出てくる「勇者」は、実は「選ばれし者」じゃない場合が多いんだよ。

 特にSFの場合、確率的な問題になる。

 そういう小説を読んだことがあるんだけどね。

 主人公はある日突然転移させられて神みたいな存在(笑)から「お前は選ばれたから」とか言われる。

 そして命令される。

 何々をせよと。

 軽小説(ラノベ)の場合はテンプレでチートを貰うけど、本質は同じだ。

 実は主人公は選ばれてなどいない。

 更に言えば特別な存在ですらない。

 大量の候補の一人にしか過ぎないんだよ。

 つまり「勇者候補生」はたくさんいて、結果的に生き残って目的を果たした者が主人公になるという方法だ。

 これって自然界ではむしろ当たり前で、テレビで見たけど海亀なんかそうだ。

 親亀は砂浜に卵を産み付けるだけだ。

 子亀は卵から孵って海に向かうんだけど、その途中ですら待ち構えていた捕食者に次々に食われる。

 無事海に辿り着いて泳ぎ出すのは少数だったりして。

 海の中も安全というわけじゃない。

 やっぱり無力な子亀なんか餌だからな。

 そうやって食われ続けて、運良く生き延びた亀が巨大化して砂浜に卵を産みに戻ってくるわけだ。

 これって勇者物語に似てない?

 「ひのきのぼう」を装備した勇者レベル1は、まずその大半が最初のモンスターとの戦いで死ぬ。

 死んだ勇者見習いはそのまま忘れ去られる。

 運良く生き延びて強くなった者だけが旅を続けると。

 ゲームの場合、結果から見て魔王を倒した勇者だから順調に冒険が出来るわけだ。

 軽小説(ラノベ)やSFも同じで、主人公は未来において成功するからこそ主人公たり得る。

 ていうか読者がその主人公の視点で物語を見ているだけなんだが。

 途中で死んだり食われたりした勇者の卵が大量にいるんだけど、それはストーリーには出てこない。

 俺が読んだ小説では「仲間が10人いるから集めろ」とか言われるんだけど、誰が仲間になるかは決まってなかった。

 生き残った連中を集めるだけだ。

 誰も生き残らなかったらしばらく間を置いて最初からやり直す。

 酷い話だ(笑)。

 「迷い人」が仕掛け(システム)だとしたら、まさしくこれだろう。

 教団(スウォーク)やソラージュ王政府も「迷い人」の存在は把握していたけど、それって地球から転移してきた人全員じゃない。

 生き残って、さらに社会的な影響力がある一定以上になった者だけが「迷い人」と呼ばれて監視対象になるんだよ。

 途中で死んだり、あるいは市居に埋もれてスローライフ(笑)をおくっているような地球人は相手にされない。

 ひょっとしたら、というよりはまず確実に俺やカールさん以外にも転移者は存在しているはずだ。

 でも誰も出てこないってことはモンスターとの戦いに敗れたか、あるいは途中の村で勇者(違)を辞めて幸せに暮らしているんだろう。

 俺やカールさん、あるいは初代帝国皇帝陛下(ヴァシールさん)なんかは「生き残った勇者候補」なんだろうね。

 初代帝国皇帝陛下(ヴァシールさん)の時代にも多分間違いなく他の転移者がいて、こっちに来てすぐに殺されたんだろうなあ。

 魔素(ナノマシン)のせいで内心が隠せないから、ちょっとでも邪な考えを抱いただけで即座に摘発される。

 改めて思うんだけど、俺よく無事だったな。

 (ハスィー)とかに結構(よこしま)な考えを抱いたことあるし(笑)。

 ユマさんたちにも内心で色々想っていたりして。

 それが全部筒抜けだったんだよな(泣)。

 もうしょうがないけど。

 幸いにして皆さん心が広くて許してくれているみたいで助かった。

 さて。

 悩んでいても始まらない。

 そう思った途端、ノックの音と共にハマオルさんの声がした。

(あるじ)殿。

 夕食とのことでございます」

「すぐ行きます」

 やっぱ魔素翻訳でお見通しか。

 俺、どうも内心を大声で喋り続けているみたいなもんらしいからね。

 ドア越しにでも聞こえるんだろう。

 こんな羞恥プレイ、軽小説(ラノベ)でも読んだことないぞ。

 どうしようもないけど(泣)。

 一応服装を点検してから部屋を出る。

 ドアの前にはハマオルさんとラウネ嬢が待っていてくれた。

 そういえばここはヤジマ屋敷じゃなかったっけ。

 一応周り中を護衛隊が固めてはいるはずだけど、万一に備えて常に一緒にいてくれるわけね。

 ありがとうございます。

「何の。

 我等にとってはむしろ喜びでございます」

「その通りでございます。

 ヤジマ帝国皇子殿下」

 二人ともブレないなあ。

 廊下を進むうちに野生動物護衛の人たちが合流してきた。

 ご苦労様です。

 夕食はイザカヤ形式だった。

 食堂のテーブルと椅子じゃなくて居間(リビング)風の広い部屋にソファーが配置されている。

 中央に低いテーブルが持ち込まれて大皿が並んでいた。

 むしろ中華風か。

 席についたのは俺が最後だったみたいで、挨拶の後すぐに飯が始まった。

 イザカヤ形式だから特に礼儀(マナー)とかもなくて、みんなでガヤガヤ話しながら食うだけだ。

 こういう席は気が楽だから好きだな。

 俺と同じテーブルについているのはユマさん、帝国皇太子殿下(オウルさん)にフレスカ皇女(さん)、ルリシア王太女殿下(さん)だ。

 物凄い身分インフレだ。

 一番下が公爵令嬢(准王族)だもんね。

 ロロニア筆頭女官()兼ヤジマ大公家近衛騎士はハマオルさんたちと一緒にちょっと離れた席で固まってテーブルについている。

 あの人たちも貴族だから世間的には十分貴顕なんだけどな。

 野生動物護衛の人たちも離れた所で食っていた。

 料理はもちろんヤジマ食堂(レストラン)料理人(コック)が作るので、ヤジマ警備の野生動物部隊は常に志願者が溢れているそうだ。

 精鋭しか採用されないらしい。

 ソラージュとララエの代表団は別の屋敷に泊まっているようで夕食会には来ない。

 ていうか本当は帝国皇太子ご一行も別の宿舎なんだけど、なぜかオウルさんとフレスカさんは平然とこっちで飯を食うんだよね。

 ちなみにオウルさんのご家族は帝国側の宿舎で食事をしているとのことだった。

 どうせなら一緒にこっちで食えばいいのに。

「それを許してしまえば歯止めが利かなくなりますからな。

 ご遠慮させて頂いております」

 オウルさん、ご自分はいいの?

「私は主上(マコトさん)の従者でございますので」

「私はオウル様の副官でございますから」

 さいですか。

 自分に都合がいい理屈をこね上げることにかけてはもうベテランだな。

 まあいいか。

 ルリシア王太女殿下(さん)については誰も何も言えないのでなし崩し的に居座られてしまっているんだけど、この人は性格がいいからね。

 実際、ルリシア殿下(さん)が座にいるだけで笑いが絶えなかったりするんだよ。

 この人(ルリシアさん)を嫁に貰う人は幸せ者だ。

 王太女だから婿、いや王配か。

「我が(あるじ)

 ご報告がございます」

 ユマさんが言い出したのは夕食も終わりかける頃だった。

 多分待っていた臭い。

 てことは厄介事だな。

「何でしょうか」

「トルヌ皇国政府より晩餐会の開催が決まったとの連絡が来ております。

 ミルトバ連盟の諸国代表団およびオブザーバーすべての参加を要請されたとのことでございます」

 さいですか。

 ていうかそんなのトルヌ皇国単独では出来っこないから、間違いなくヤジマ財団いや略術の戦将(ユマさん)の仕込みだろうね。

 実際問題としてトルヌ皇国にはそんな大規模な晩餐会を開く余裕なんかないだろう。

 必要もない。

 今回のミルトバ連盟臨時総会、トルヌ皇国は会場を提供しただけの参加国の一つに過ぎないんだよ。

 まあホスト国とも言えないこともないけど金がないから自分からは晩餐会(そんなこと)なんかやるはずがない。

「ほう。

 いよいよですな」

 オウルさんが面白そうに言った。

 フレスカさんも頷いている。

 ユマさんは微笑んでいるだけ。

 ルリシア王太女殿下(さん)はきょとんとしていた。

 判りやす過ぎでしょ!(泣)

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