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サラリーマン戦記 ~スローライフで世界征服~  作者: 笛伊豆
第五部 第六章 俺が後見人?

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12.党首?

 ミルトバ連盟の総会。

 これは、変な話だけどミルトバ連盟自体とは直接関係がない俺や帝国皇太子(オウルさん)の要請で開催される。

 そもそもミルトバ連盟って伝説の古代帝国ミルトバの名を借りた北方諸国の緩い同盟を指すわけだ。

 同盟といっても軍事とか経済とかじゃなくて、まあ仲良くしましょうといったレベルの結びつきだと聞いている。

 むしろ国際的な格好付け(ポーズ)みたいなものらしい。

 北方諸国(あっち)から見て南方のエラやララエ、ソラージュ、そしてホルム帝国といった大国に対抗するというか、雑魚扱いされないためにとりあえず組んでみました、という集まりだということだった。

 よって連盟といっても本拠地すらなく、言わば書類上のものだという。

 連盟の定例会は一応開催するものの、毎回どこで開くか揉める程度の集まりだそうだ。

 だから「総会」というのは久しぶり、というよりは立ち上げた時以来かもしれないということで、北方諸国が変に張り切ってしまったらしい。

 何せ経費はこっち持ちだから。

 ヤジマ財団が「総会の準備や開催、歓迎とかまで全部やります。それどころか参加者の送迎もやります」と言った所、すべての国が参加表明してきたというのだ。

 現金な(笑)。

「すべての国というよりは、国ではない団体からも参加表明がございました」

 ユマさんが報告してきた。

「国じゃないって?」

「サイレセン王国のフリビア自治領でございます。

 『(パーティ)』から代表者を送ると」

 あそこか。

 「迷い人」だった共産主義者が革命を起こして潰したフラビア王国の元王都だったっけ。

 そのフラビア王国は解体されて領土は周りの国が併合したんだけど、王都フラビアはサイレセン王国の自治領として残ったんだよね。

 フラビア王族の血縁の人を探し出してきて侯爵にして。

 だんだん思い出してきたぞ。

 叩き潰されたはずの共産主義が細々と自治組織として生き残っていて「(パーティ)」と名乗っているんだっけ。

 で、なぜか俺を本人に無断で党首か何かに選出しやがったらしい。

 名前だけだから気にするなと言われて忘れていたんだけど。

「そんなの許されるの?

 国じゃないんだし」

「ミルトバ連盟の規約には国家以外は加盟出来ない、という条項はないそうでございます。

 フラビアは自治領でございますし、サイレセン国王陛下より推薦があったとかで加盟しております」

 あれか。

 地球で言うと台湾みたいなものか。

 どうみても世界でも有数の経済国家なんだけど、国じゃないことになっていると。

 国連には入れないけどオリンピックなんかには普通に参加しているんだよな。

 そのせいで「世界○○の国と地域」みたいな表現になってしまっている。

 あれ、昔は違和感ありまくりだったんだけどね。

 でも地球では結構そういう曖昧な状態が継続していることがあるんだよ。

 公式には誰も認めてないけど不文律でそうなっているとか。

 本当は駄目なんだけど特例で法的に有功になっているとか。

 アメリカにもあったっけ。

 確か「祖父条項」といって、何かの法律を作るときに、それ以前に成立していた事情を汲んで既得権者個人に限って特例として認めるというものだったような。

 政治の講義で習ったんだけど、もともとはアメリカの南北戦争の後、南部の無教養な白人に公民権を与えるために作られたとかだったな。

 つまり南北戦争の結果解放された黒人奴隷は無条件の公民権であるはずの投票権を得るために識字テストを受けて合格しなきゃならなかったそうだ。

 もちろん戦争前から公民だった黒人には適用されない。

 でも、その条件だと無教養(笑)な白人もテストに受からなくて除外されてしまうということで、当時の差別主義を維持するために制定されたとか。

 白人はそのテストを受けなくても公民権を保障されるという取り決めだ。

 南北戦争が終わっても人種差別が一斉になくなったわけじゃなかったからな。

 ちなみになぜ「祖父」なのかというと、その権益をもともと持っているような年寄りの人には特例で認めてあげましょう、ということだね。

 こういった権利は世襲というか相続出来ない。

 その人個人の権利、いや資格だ。

 実はこういうのって現代でも結構ある。

 俺はIT技術者ということになっていたんだけど北聖システムでは色々やらされていて、情報通信技術についても資格を取らされたんだよ。

 仕事で必要だからとか言われて(泣)。

 その時に勉強したんだけど、例えばNTTってかつては役所(違)で「日本電信電話公社」だった。

 JRが昔は「国鉄」だったのと同じだ。

 で、これを民間に移行する時に電気通信関係の管理者資格を制定することになったらしい。

 電話局の交換機の管理や電話工事に資格が必要だということで。

 なぜかというと事業を民間に移行するということは、つまりNTT以外の業者がその業界に参入できることになる。

 他の業者が参入できなければ独占禁止法に触れるから。

 その業者でも交換機を扱ったり電話工事をしたりするんだけど、それをやる人は技術資格が必要になる。

 これもまた官僚の既得権という奴かな。

 資格を認定したり試験したりするための天下り団体を作れるから。

 とにかくそのための免許というか資格がないと仕事出来ないことにしたわけだ。

 でも問題が出た。

 日本電信電話公社の時は、社内の仕事だからといって担当者が普通にやっていたんだよね。

 特に資格もなかった。

 だって役所の仕事だったんだから。

 でもNTTになると、その人たちも公的な資格がないと仕事が出来なくなる。

 だったらその資格取ればいいじゃん、ということになったんだけど。

 取得するための資格試験って実技じゃなくて筆記試験(ペーパーテスト)なんだよ。

 それはそうだ。

 車の運転と同じで、実技で試験するとしたら事前に経験しておく必要がある。

 でも経験するためには実際にやらないといけないんだけど、資格なしでやったら法律違反だ。

 車と違って教習所に通うわけにもいかないからね。

 長くなったけど、そこで困ったのが今まで日本電信電話公社で工事や管理を担当してきた人たちだ。

 だってその大半が四十代とか五十代とかで。

 今さらペーパーテストなんか受けたって合格出来っこないでしょう。

 管理や工事の仕事は筆記試験の問題とはあまり関係がない。

 医師試験や弁護士試験と同じで、実際に現役で医者や弁護士をやっている五十代の人が受験したって受からないのと一緒だ。

 というわけで、その資格は特例として「何年以上経験している人はその時点に限って資格を与える」ということになったんだよ。

 ずっとそれを続けてきた既得権益者が受益するという例だ。

 というより、新しい法律によって既得権益を失うことを例外的に無くすというか。

 だから「祖父」だ。

 高齢ということで?

 まあいいけど、俺はもちろん既得権益なんかないので普通に試験受けて合格しましたよ。

 きつかった(泣)。

 まさか大学出てからもペーパーテストがあるとは思わなかったからなあ。

 まあ、それはいいんだ。

 何の話だったっけ。

「フラビア自治領もミルトバ連盟に加入しているという話でございます」

 ユマさんも動じないね。

 俺、今全然関係ない事を超高速で思い返していた気がするんだけど。

「我が(あるじ)が私には追いつけない思考を巡らされるのはよくあることですので。

 ですが断片的に理解した所によりますと、フラビアがミルトバ連盟に加入するための法的要件を実例を思い出されて納得されたような」

 凄え。

 大体、判っている!

 やはり略術の戦将(ユマさん)化物(チート)だな。

「その通りだよ。

 地球(ふるさと)にも国として認められていないのに国際的な団体に加入している地域があって」

 言いかけて止めた。

 面倒くさいし、そもそもミルトバ連盟とは何の関係もないからな。

 でもそれで気がついた。

「フラビアの代表って誰が来るの?

 あの何とかいう侯爵?」

「ロゼンカ侯爵閣下でございますね。

 名目上はそうですが、随行員という形で(パーティ)の幹部が同行するそうです」

 やっぱりか。

 フラビア自治領の統治は名目上はフラビア侯爵なんだけど、実際には自治組織が動かしているんだよね。

 その組織を(パーティ)と呼んだり、形式的な代表を「党首(リデルバルティエ)」と呼ぶのは共産主義者の迷い人がもたらした遺産という話だったっけ。

 ちょっと待て。

 その(パーティ)、俺を党首(リデルバルティエ)に選んだとか言ってなかったっけ?

「そのように伺っております。

 つまり我が(あるじ)はフラビアの隠れた首長ということに」

 勘弁して(泣)

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