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サラリーマン戦記 ~スローライフで世界征服~  作者: 笛伊豆
第五部 第六章 俺が後見人?

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5.海外旅行にご招待?

 ソラージュの大公がよその国で勝手によその同盟諸国の統治者たちを招集した。

 そして帝国の皇太子を諸国の代表に紹介する。

 どうみても反乱、いや反逆だよ!

「違います」

 ユマさんはにこやかに言った。

「まずソラージュでございますが、我が(あるじ)国王(ルディン)陛下より勅命を頂いております。

 我が(あるじ)は帝国皇太子殿下のお世話を全面的にお任せされておられる。

 これは逆に言えば帝国皇太子殿下のご希望を叶えるためなら何をしても構わないということかと」

 違うでしょう!

 勅命って言ったってあれはソラージュ国内の話なんじゃないの?

「ソラージュ当局は既に我が(あるじ)の出国を認めております。

 理由は帝国皇太子殿下の付き添い。

 即ち帝国皇太子殿下を他国(ララエ)に伴い、大公会議にご紹介するためでございます。

 エラも同様の理由で認められました」

 いや、それはこっちが拡大解釈しているだけです。

 少なくともルミト陛下はそんな許可を出していないのでは。

「既に許可を頂いております」

 ユマさんは淡々と言った。

「ヤジマ航空警備(エアガード)の急行便で父上(ライトール)を通じてお願いさせて頂いた所、快諾されたというお返事でございます。

 それどころか責任は取るから何でも自由にやって良しとの証文を送りつけられました」

 そう言って厚い書類を出してみせるユマさん。

 さいですか。

 あー、これは確かにソラージュ王家が使っている最上質紙だわ。

 紙は高価だからこういう事以外にはめったに使われないんだけどね。

 ちなみに地球だとこういう場合は羊皮紙になるけど、こっちの世界では羊さんも話せるのでそんな残酷な事は許されない。

 庶民に出版物が普及しないのもそのせいだったりして。

 それはともかく。

 これ、例えば王様が別の王様に出す手紙とかに限定されるレベルのものだぞ。

 紋章(すかし)なんか入っていたりして。

 まあ、ユマさんの事だから抜かりはないと思っていたけどね。

 でも国王陛下の証文を平気で引き出してみせるってちょっと心臓に悪いんですが。

「失礼致しました。

 次からは気をつけさせて頂きます。

 ところで他国でございますが」

 ユマさん、全然反省とかしてないね?

 まあいいけど。

エラ国王(ルミト)陛下にはユラシオ王子殿下を通じてご許可を頂きました。

 エラもオブザーバーを参加させるとのことでございます」

「そうなの」

「ララエの大公会議も了承済みです。

 我が(あるじ)が名誉大公なのですから、ララエとしてもミルトバ連盟諸国に対して存在感を示す絶好の機会ということで。

 尚、ララエ公国の代表は別途派遣すると」

 そう来るか。

 別にいいけどね。

 この機会に(ヤジママコト)がララエの所属(名誉大公)であることをアピールする気だな。

 そんなのはどうでもいいけど。

「最後に帝国でございますが、これは皇太子殿下(オウル様)が当事者でございますので。

 念のためにお尋ねしましたが問題ないとのことでございました。

 次期皇帝として皇帝(アリヤト)陛下より全権を預かっておられます」

 うーん。

 既に全部解決済みか。

 でもまだ問題はあるぞ。

 北方諸国は国王とか王太子とかが来るんでしょう?

 俺たちだと役者不足にならない?

 特にソラージュの代表が俺ってのが弱い。

 大公とは言っても統治者の一族じゃないし、成り上がりの馬の骨だからな。

「我が(あるじ)はソラージュの代表ではございませんよ?」

 ユマさんが爆弾を手渡してきた。

「むしろ主催者側というか、局外中立のお立場でございます。

 ソラージュを初めとする列強はそれぞれオブザーバー資格でミルトバ連盟の臨時総会に代表を送るということで」

 何それ?

 いやそうか。

 ラヤ様の意図は国連の成立だ。

 ミルトバ連盟は言わば弱小国の集まりで、全部合わせても列強の一国に対抗するのがせいぜいだからな。

 つまり、そこで何かやっても大国に無視されたらそこまでなんだよ。

 だけど今回、列強諸国はオブザーバーを送ってくる。

 オブザーバーとはいえ国を代表する立場の者が参加すれば、それはもはや国際会議だ。

 凄え。

 着々と事態が進行しているよ!

 このままだと本当に国連が出来てしまうかもしれない(汗)。

 いやそうでもないか。

 今回の件は単に帝国皇太子(オウルさん)を北方諸国に紹介するというだけだもんね。

 そこで何が決まるというわけでもない。

 そもそもミルトバ連盟って調べてみたけど何もしてないんだよ。

 とりあえず集まってみました、というような組織なのだ。

 しかも参加国が多すぎる上に突出した強国がないためまとまらない。

 北方諸国ってあまり共通の議題がないからね。

 国際交易も問題になるほど大量にはないらしいし。

 歴史は結構長いので、お互いに王族同士で嫁にやったり婿を貰ったりして親類が多いそうだ。

 わざわざ条約とか結ばなくても親類同士の話し合いで解決したりして。

 しかもみんな金がないのであまり相互交流がないという。

 ミルトバ連盟っていらないんじゃないの?

「これまではそうだったかもしれませんね」

 ユマさんが淡々と言った。

「というと?」

「ヤジマ商会が国際交易の道を開きました。

 それだけではなく、各国の特産品の開発や輸出入も始まっております。

 一部では既に多国間交易が軌道に乗ったとの報告も」

 そういえばそんな報告書を読んだ気がする。

 アルのフユラ王国は最初にスタートを切っただけあって野生動物向けの事業を順調に発展させているそうだ。

 税収の伸び率が2桁に達したと書いてあったな。

 バブルじゃないの?

 いきなりやり過ぎると弾けるのでは。

「その辺りはこちらで制御(コントロール)しておりますので」

 ユマさんがにんまりと笑った。

「フユラ王国は当面、国外出稼ぎから戻って来る労働力を国内産業に組み込むことで緩やかなインフレが続きます。

 その税収で環境(インフラ)を整備し」

「判りました。

 その話はもういいので」

「……お心のままに」

 だって俺、そんなの判んないし。

 俺は経済学部出じゃないんだよ!

「失礼致しました。

 そのような些細な情報(データ)は我が(あるじ)には必要ございませんね。

 もっと大きな視点で世界を動かすお方でございました。

 話を戻しますと、現時点ではまだ北方諸国間での利害調整や条約の制定などは不必要かもしれませんが、近日中に需要が発生するものと考えられます。

 これまでのような緩い連合(ミルトバ連盟)では対処しきれなくなることは確実かと」

 そうなのか。

 よく判らないけど、確かに議論の場は用意しておいた方がいいかもしれない。

 ミルトバ連盟は名前ばかりが先行して専用の会議場なども存在しないと聞いている。

 毎回、まず会議をどこでやるのかを決めることから始めているらしいんだよね。

 だから今回、俺とかがトルヌでやりましょうとか言ってもあっさり通ったんだけど。

「その件については北方諸国でも問題になっていたようです」

 ユマさん、マジで何でも知ってますね。

 何か最近、情報収集能力に磨きがかかったような。

 元帝国軍情報局長(レイリさん)か!

 超高性能コンピュータがインターネットの検索サイトに接続されたと。

 ますます無敵化してるんじゃない?

 ユマさんは淡々と説明を続ける。

 無視された(泣)。

「そういえばこれまではどうしていたの?」

「その都度、開催地を決めていたようでございます。

 選ばれた、というよりは押しつけられた国は会場を整備したり各国から到着する代表を迎えたりといった手間と費用がかかるために不評で」

 やっぱここでも金か。

 でもメンツがあるからやらざるを得ないと。

「参加する国も、代表団を送らなければなりませんので経費と人手がかかります。

 なので定例会と言いつつ開催が伸びる傾向にあったという報告です」

「なるほどね。

 だから怪しい親書が来ても飛びついたと」

 マジで北方諸国にとっては渡りに船だったのか。

 何せヤジマ商会が経費持ちで面倒な事を全部やってくれると言っているんだからな。

 しかも送迎費用まで持ってくれると。

「それ、ひょっとして王様や王太子が来るって」

「そうですね。

 無料で国際親善や観光旅行をする気でいるのかと。

 しかもヤジマ商会が企画(プロデュース)する以上、しょぼいイベントにはなり得ません。

 少なくともヤジマ食堂(レストラン)の食事は確実という認識のようですね」

 何てこった。

 国連作るとかそういう政治的な話じゃなかったのか。

 要するに王様や王太子殿下はこの絶好の機会を捉えて楽しもうとしているだけだったりして。

 だってこれ、北方諸国からみたら海外旅行に無料でご招待されたのと一緒だよ?

 しかもVIPを紹介して貰えるだけじゃなくて、同類の連中との親交も深められるとか。

 向こうに着いたら色々歓迎イベントもあるらしいし。

 それは出てくるよ国王陛下の人たち。

 そんな美味しい話を他人に譲れるはずがない。

「結局は食い意地、ということでございましょうか」

 ユマさん、当たっていると思うけどそれは言わない約束でしょ?

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