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サラリーマン戦記 ~スローライフで世界征服~  作者: 笛伊豆
第五部 第六章 俺が後見人?

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4.親書?

 「親書を出せ」と命令させられた。

 相変わらず俺って引き金(トリガー)なだけなんだよ。

 後の事は全部ユマさんとラヤ様がやってくれる。

「私も協力させて頂きます」

 オウルさんまで割り込んできた。

 当事者と言えなくもないからね。

 名目上はオウルさんが北方諸国の代表に親善の挨拶をするためにミルトバ連盟の臨時総会を招集するんだし。

 でも問題はオウルさんも俺もミルトバ連盟とは関係ないことだったりして。

 無関係なのに集まれと要求するのはどうよ。

「オウル様はともかく我が(あるじ)は無関係ではございません。

 北方諸国は既にヤジマ商会の属国のようなものです。

 我が(あるじ)が命令すれば従うしかないかと」

 ユマさん、本気じゃないよね?

「当然、冗談(ジョーク)でございます」

 良かった(泣)。

 まあ確かに北方諸国って既にヤジマ商会の経済的植民地化しているらしいけど。

 でもそれとこれとは別だ。

 小国にもメンツってものがあるからね。

 勝手に集まれとか言われたら怒るぞ。

「そこはやりようでございます。

 ご安心下さい」

「そうですよ。

 こういった事はユマに任せておけば良いのです」

 ラヤ様も無責任な。

 ラルレーンさんは既に関心を失ったらしくてそっぽを向いているし。

 しょうがないな。

「よろしくお願いします」

 それで解散になった。

 ラヤ様からは別れ際に「マコトの知りたい事はトルヌで話しますから」とか言われたけど、もうどうでもいい。

 カカワリアイになりたくない(泣)。

 みんなで拠点だか宿舎だかに戻ってくると、俺以外の人は早速動き出したようだった。

 ユマさんの手配で無制限優待券(フリーチケット)だか何だかを手に入れた前トルヌ皇国皇王陛下(ラルレーンさん)は嬉々としてソラージュに向かって旅立ったそうだ。

 教団のネットワークを使って移動するそうで、何気に巨大なスパイ組織を構成しているな教団。

 裏から世界を支配しているのはやはりスウォークか。

 一方ユマさんはラヤ様と相談の上、教団と俺の連名でミルトバ連盟に参加している各国の国王陛下宛ての親書をでっちあげた。

 といってもぶっちゃけ「(ヤジママコト)が命じる。トルヌに集まれ」といった慇懃無礼なものなんだけど。

 でもそんなこと(ストレートには)書けないから、帝国皇太子殿下(オウルさん)の世話役として北方諸国の代表の方々に紹介したいので、ミルトバ連盟の臨時総会を開催して頂けないでしょうか、という内容になっていた。

 皆様にはご無理を申し上げるので、ご希望があればヤジマ商会が総力を挙げて出席者の送迎を担当させて頂きますとも書いてある。

 総会の準備から開催、参加者の歓待費用はもちろんヤジマ商会持ちだ。

 場所はご親切にもトルヌ皇国が会場を提供してくれたのでそこで、と。

 いや、やっぱこれでは無礼なのでは。

「そんなことはございません」

 ユマさんが言い切った。

「そもそも帝国皇太子(オウル様)の親善訪問については北方諸国にも当然情報が伝わっております。

 オウル様は既にソラージュ、ララエ、エラと親善訪問されたわけで、次はどこなのかと皆様戦々恐々かと」

 そうなの?

 訪ねてきたら謁見して挨拶すればいいだけなんじゃ。

「世界最強の国家の次期皇帝陛下でございますので。

 国賓待遇は当然として、最大限の歓迎をしないわけには参りません。

 つまり予定外の多額の費用が必要になります」

 そうか。

 帝国皇太子なら当然国賓だし、その歓迎費用は膨大なものになるはずだ。

 しかもその経費って自前になる。

 まさか帝国に請求とか出来ないからね。

 次はどこの国か、という以前の問題だ。

 だっていずれは来る訳だから。

 早いか遅いかの違いでしかない。

 税金と一緒だ(泣)。

「そこでこの親書でございます。

 帝国皇太子が自国に来ないのなら歓迎式典も必要ございません。

 他国(よそ)で代表がご挨拶すれば良いわけで、大した費用負担にはならない。

 それだけでも大助かりでしょう。

 しかも総会の開催費用や出席者の送迎までヤジマ商会に面倒を見て貰える。

 ヤジマ商会の歓待ですからお食事その他も期待できます」

 凄いな。

 それは飛びつくわ。

 場所がトルヌでも問題にはならない。

 ていうかむしろトルヌじゃないと駄目だ。

 北方諸国のどっかの国だとどうしても贔屓されているように思われるからね。

 その点トルヌ皇国の立ち位置は特殊で、ある意味北方諸国の競争相手から外れている。

 国の体裁はとっているけどトルヌは一種の宗教共同体みたいなものなんだよ。

 それも既に廃れてしまった宗教の。

 ご神体たるスウォークの方にその気が全然ないんだもんなあ。

 残骸のような状態だ。

 セレイナさんは頑張っているけどトルヌ皇国はいずれ衰退して消えていく運命なんだろうね。

「そこで我が(あるじ)の登場です」

 ユマさんが雰囲気をぶち壊した。

「トルヌ皇国は既にヤジマ商会の影響下にあります。

 もともと国家としては破綻寸前、というよりは既に破綻しておりますので、これをヤジマ商会が再建(乗っ取り)致します」

 それかよ。

 再建とか言っているけど本音がタダ漏れだ。

 でも実際、それしかないかもなあ。

 特に産業もないし、国民は何か作ったり儲けたりするより信仰に走っちゃってるんだもん。

 ユマさんの構想としては、おそらくトルヌ皇国の看板を掛けたまま北方諸国をまとめる中継基地にするつもりなんだろうね。

 これはラヤ様(スウォーク)の意図でもある。

 いくらスウォークの方にその気がないと言ってもトルヌは古代国家ミルトバの正統な後継だ。

 そしてミルトバは間違いなくスウォークの支配下にあった。

 そして滅びた。

 だからスウォークは見捨てられない。

 ラヤ様の「お願い」は多分それなんだろう。

 トルヌを何とかしてやってくれ、と。

「我が(あるじ)のお考えの通りでございましょう。

 トルヌ皇国の体制を維持したまま国家を持続させれば良いわけでございます。

 ヤジマ商会ならばそれは可能です」

 うん。

 ユマさんも判っている。

 その方法が一番穏やかな解決策なんだろうね。

 それにしても凄いのはユマさんか。

 ラヤ様と通じていたとはいえ、そこまで読み切っているんだもんなあ。

「我が(あるじ)のお考えを辿っただけです。

 本当に凄いのは我が(あるじ)かと」

 まあ、俺が理解出来るのは当然といえば当然なんだよ。

 だってラヤ様が目指す将来のトルヌ皇国の姿って現代の地球だとむしろありふれているからね。

 君主が存在はしていても統治者でなくなった国家。

 日本しかりイギリスしかり。

 つまり、何らかの権威とか国家の象徴を残したまま実際の統治は別の政体が担当する形だ。

 「君臨すれども統治せず」でトルヌ皇国も皇王陛下が象徴的な存在になって、実際の政治や政府は議員や役人が動かす形にすればいいだけだ。

 当面は人材もいないしヤジマ商会が代行するんだけど。

 どう見ても乗っ取りだよなあ(泣)。

「よろしいのではありませんか。

 権威(スウォーク)の許可も出ておりますので」

「そうだね。

 判りました。

 進めて下さい」

 そういうわけでユマさんは動いた。

 オウルさんはエラ王国の歓迎とか会談とか何とかで忙しそうだ。

 フレスカさんも官僚の人たちと飛び回っている。

 また俺だけ暇になってしまった。

 ルミト陛下も何も言って来ないしな。

 ユリス王子(さん)も潜行してしまったらしくて噂も聞かない。

 そういえばオウルさんはこれからどうするんですかね?

 忙しそうなご本人に代わってユマさんに聞いてみたら「我が(あるじ)について行くそうでございます」と返されてしまった。

 それはそうか。

 俺の従者を自称する帝国皇太子(オウルさん)が離れてくれるわけない(泣)。

 実際、オウルさんは忙しいはずなのに毎日朝練に参加してくるんだよ。

 ろくに話も交わせないけど、なぜか俺の顔を見たら元気いっぱいになって走っている。

 位置はあいかわらず俺の前だ。

「いやー。

 この立ち位置は最高でございます。

 主上(マコトさん)を守って駆ける。

 これほどの充実感は初代様もそうそうは味わっておられなかったかと」

 何か益々症状が悪化している気がする。

 一緒に朝飯を食った後、オウルさんはエラの儀式か何かに出かけるんだけど、俺はやることがないのでぼやっとしているだけだ。

 いっそ歓楽街で遊んでやろうかと思い始めた頃、ユマさんが来て言った。

「我が(あるじ)

 親書のお返事が届いております」

 さようで。

「現在の所、臨時総会への参加を断ってきた国はございません。

 それどころか是非参加したいと」

「それは良かった」

「ほぼすべての国が国王陛下、もしくは王太子殿下が出席するとのことでございます」

 それって拙くない?

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