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サラリーマン戦記 ~スローライフで世界征服~  作者: 笛伊豆
第五部 第六章 俺が後見人?

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3.国際連合?

「『国連』ですか」

 フレスカさんが言った。

「それはミルトバ連盟とは違うものなのでしょうか」

 フレスカさんにも判らないか。

 こっちの世界にはまだない概念かもなあ。

 地球でも最初の世界的な組織である国際連盟が出来たのは20世紀になってからだもんね。

 初の世界戦争である第一次世界大戦が終わって、もうこんな酷い争いはご免だという共通認識の元、初めてあらゆる国が参加する場を作ろうという意図で出来たとどっかで読んだな。

 それまでは個々の国がそれぞれ独自に話し合ったり条約を結んだりするしかなくて、つまり複数国家の争いを仲裁したり、多数の国が関係する問題について議論したりする場が是非必要だとやっと判ったからということだ。

 こっちの世界ではまだ世界大戦が起こるような状況じゃない。

 国家間の問題は当事国同士で解決できる。

 ミルトバ連盟って国連臭い名前だけど、これは南方の大国に対抗するために北方諸国が集まっただけの組織だ。

 聞いた所ではむしろ社交の場で、何かを決めたり強制力がある命令を出したりする権威はないらしい。

「違います。

 正式には『国際連合』という名称になります。

 すべての国家が参加します」

 ラヤ様が断言した。

 そうか。

 カールさん辺りから聞いたのか。

 初代帝国皇帝(ヴァシールさん)は帝制ロシアの時代の人だから、まだその概念ってなかったはずだしね。

 謎の転移物(オーパーツ)でもあったのかも。

 でもラヤ様の情報も古い。

 カールさんは第二次世界大戦後の人だからいわゆる国連(国際連合)についても知っているはずだけど、カールさんの時代だとまだ理想が先行していて現実が見えてなかった可能性がある。

 国連にはすべての国が参加しているわけじゃないからな。

 ていうかそういう理想の元に成立したはずなんだけど、実際には第二次世界大戦の勝利国による利益配分の場なんだよ。

 だって「敵国条項」とかあるんだぜ?

 「常任理事国」もそうだ。

 国際的な議論の場に拒否権を持っている国があるということ自体がおかしいんだよ。

 そんなの、一部の強国が自分の思い通りにするためだけの規則じゃないか。

 そして第二次大戦の敗戦国は色々と制限されることが多い。

 だから日本やドイツは苦労しているというか、何かしようとしてもすぐに邪魔されて上手くいかない。

 俺だって大学出ているし、そういう裏話はネットにいくらでも載っているからね。

 騙されないぞ(違)。

「マコトの方が詳しいようですね。

 ではよろしく」

 投げられてしまった(泣)。

 いや、俺は別に国連の専門家じゃないし。

 ていうかそもそも地球の状況とこっちとでは全然違うから。

 と言い訳しても納得してくれそうにないか。

 しょうがない。

「俺もあまり詳しくは知らないんですが、地球(こきょう)では世界中の国を巻き込んだ戦争の後に成立しました。

 多数の国家が中立の立場でお互いに話し合うための場がなかったからだ、ということで」

「国際連合、ということは国家が集まってお互いに議論する場なのでしょうか」

 フレスカさんが真面目に聞いてくる。

 困ったなあ。

 誤魔化しは言いたくはないし、長くなるけど説明するしかないか。

「今俺が話した組織は国際連盟(リーグオブネイションズ)です。

 これは世界を巻き込んだ戦争が終わった後の戦勝国と敗戦国の講和条約で設立が決まったわけです。

 つまり条約とは言っても戦争の後始末の付属品みたいなものです」

 だったよね?

 あまりよく覚えてないんだけど、確か大学の政治学で習った覚えがある。

 講師の先生がミリタリーヲタクで、政治と戦争は切っても切れない関係にあるとか言って何かというと戦争に搦めて講義を進めたんだよなあ。

 一般教養だったから必須科目じゃなかったし、出席も取らないので受講生の大半はサボるか寝ていたけど、俺は面白いので皆出席して聞いていた。

 だって一部、軽小説(ラノベ)の設定みたいだったし。

 質問したら気に入られて数人の同類と一緒に飲みに連れて行って貰ったりして。

 いい思い出だ。

「そのような事が。

 我が(あるじ)の通われた『大学』とはやはり恐るべきものだったようですね。

 戦争と政治を融合させた学問などどのようなものなのか想像もつきません」

 ユマさんが的外れな所に興味を持ったようだった。

 いや、それって単なるヲタクだから。

 まあ、あの先生は無駄に超高学歴で一部では有名らしかったけどね。

 時々テレビに出ていたりして。

 まあいいか。

「とすると『国連』とは違う組織なのですか?」

 フレスカさん、ぶれないね。

 そうです。

 違います。

「実はその国際連盟(リーグオブネイションズ)はあまり上手く機能出来なくて、加盟しても脱退する国が出たりして、結局二度目の世界戦争が起きてしまいます。

 戦争開始直後に事実上機能停止して、戦争終了後に解散するんですが、その第二次世界大戦の戦勝国が中心になって発足したのが国際連合(ユナイテッドネイションズ)です。

 実はこの名称は勝った方の連合軍の通称なんですが、今度は戦争の講和条件としてじゃなくて『国際平和と安全の維持とか国際協力のための組織』と位置付けられています」

 講義口調になってしまった。

 国際連合も第二次大戦の結果として発足したわけだから、あの先生も手を抜かなかったな。

 でもあまり面白くないんだよね。

 規模が大きすぎて説明ばっかになってしまう。

 軽小説(ラノベ)でも設定に凝り過ぎるとストーリーがつまらなくなるのと一緒だ。

 しかも本質がミリタリーヲタクだから、講義がついつい有名な戦場とか戦略的な戦いとのになって、政治とはあまり関係なくなっていたりして。

 まあ、政治なんてのも似たようなものだということだけは判った。

 その先生の結論としては、政治って「力」だそうだ。

 理念でも戦略でも理想でもなくて「力」。

 要するに強い方が勝つ。

 当たり前だ(笑)。

国際連合(ユナイテッドネイションズ)ですか。

 その組織の目的は国際平和の維持と国際協力」

「はい。

 これってつまり、全部含まれるんですよ。

 例えば二国間で戦争になりそうになったらとりあえず他国を巻き込んで議論するわけです。

 仲裁もします。

 限界はありますけど」

 それどころか今の国連は大国のパワーゲームの場と化しているけどね。

 でも理念は正しいし、ないよりはマシだ。

 難民問題とか地球温暖化とか、国連がなかったら手の打ちようがない問題もあるし。

「……お待ち下さい。

 この国際連合(ユナイテッドネイションズ)は大戦争の戦勝国が主体となって成立したとおっしゃいました。

 敗戦国にとっては問題なのではありませんか?」

 ユマさんが突っ込んできた。

 やっぱ判るか。

 それはそうだ。

「その通りです。

 地球(ふるさと)の組織はやはり、あまり上手くいってはいません。

 ないよりはマシですが、すべての問題を解決できるというわけではない。

 ですが、繰り返しますがないよりは遙かにマシです」

 つい熱が籠もってしまった。

 でも実際そうなんだよ。

 現実の戦争は軽小説(ラノベ)みたいに綺麗に終わらないしまとまらない。

 グチャグチャのドロドロのまま過ぎて行くだけだったりする。

 それを少しでもマシに出来るんだったら存在する価値はあると思う。

 なんちゃって。

 これ、その政治学の先生の持論なんだけどね。

 精神論みたいだけど俺は正しいと思っている。

 逃げちゃ駄目だ(違)。

「でもこっちの世界ではまだ戦争はありません。

 だったら先手を打って作ってしまおう、というのがラヤ様(スウォーク)の計画なんじゃないですか?」

 投げた。

 もう説明が面倒になったし、もともとこれはスウォークの計画だったはずだ。

 俺は巻き込まれただけなんだよ(泣)。

「そうですね。

 その通りです」

 思った通り、ラヤ様は肯定してくれた。

 スウォークってちょっと不思議なくらい人間や野生動物に入れ込んでいるからな。

 もちろん人間が戦争でも始めたらスウォークも無事じゃ済まないこともあるんだけど。

 それでも普通、一応上手く行っている国際政治に干渉しようとか思わないよ。

 やはり何かあるんだろうな。

「なるほど。

 ようやく判りました」

 オウルさんが重々しく言った。

教団(スウォーク)の意図は別にして、我々が行うことで主上(マコトさん)のご意志が進展することは確かなようです。

 ならば帝国としてはご協力するのに吝かではございません。

 帝国は御身に従います。

 ご命令を」

 そう言って俺に頭を下げる帝国皇太子殿下(オウルさん)

 いや、俺は別に意図したり命令したりしてないんですが。

「我が(あるじ)

 私からもお願いします。

 ご命令を」

 ユマさんまで!

 で、何を命令すればいいんですか?

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