表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
サラリーマン戦記 ~スローライフで世界征服~  作者: 笛伊豆
第五部 第五章 俺が支配者?

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

924/1008

16.密談?

 迷路のようなエラ王城の果てしない廊下を延々と辿って案内されたのは中庭だった。

 ていうかお城の中に造られたテラスみたいな所で、庭園(ガーデン)風の場所だ。

 屋上庭園というところか。

 周囲にはお城の塔や構造物が並んでいる。

 でも窓とかないし、誰かが弓で射るようなことも角度的に出来ないようになっているみたいだ。

 しかも結構距離がある。

 開けっぴろげの空間の中央にテーブルと椅子があって、ルミト陛下が一人で座られていた。

「内密の相談を行うための空間のようですな」

 オウルさんが言った。

 こんな開けた場所で?

「だからこそでございます。

 障害物がないため周囲に人を忍ばせることは不可能。

 これだけの距離があれば魔素翻訳どころか肉声も聞き取れますまい。

 石畳では地下から接近することも不可能かと」

 そうなのか。

 つまり堂々と内緒話するための場所か。

 でも読唇術とか使われたら話が漏れそうだけど。

「そのための対策があれでございますね」

 ユマさんが指さす先を見ると、台に載せられた植木が運ばれてくる所だった。

 あれで周りを囲むのか。

 何ともご大層な。

「エラは古い王国でございますから。

 色々と面倒な事もあったのかと」

 うーん。

 秘密の部屋とか造ってこっそり打ち合わせとかした方がいいような気がするけどなあ。

 これでは何か密談したことがモロバレでは。

「そう思わせる効果もあるということですな」

 オウルさんも苦笑いしていた。

 なるほど。

 何か重大な相談をしましたよ、でも秘密ですよ、というのが目的ということね。

 逆に言えばここでやる話ってどうでもいい事かもしれない。

 うーん。

 つまりルミト陛下としては、エラ王国国王がホルム帝国皇太子やソラージュ王国大公といかにも重大な話をしたかもしれない、と周知させたかったと。

 ルミト陛下ってそういう茶目っ気というか悪戯が大好きそうだからなあ。

 俺が初めてエラに来た時も色々と意表を突いた演出をしてくれたし。

「ほう。

 そうなのでございますか」

 オウルさんも何か心当たりがあるのか面白そうな表情だった。

 皇帝(アリヤト)陛下から何か聞いてきているのかもしれない。

「では我々はここでお待ちしております」

 ハマオルさんがみんなを代表して言った。

 ユマさんなんか既に待機する人用らしい席に腰を降ろしている。

 そうか。

 護衛の人たちは警護対象者を見守りながら待機できるわけね。

 何かあったら数秒で駆け寄れると。

 みんな立ったままらしい。

 大変そうだな。

「それがお役目でございます」

 ラウネ嬢が頭を下げた。

「判りました。

 行ってきます」

 俺とオウルさん、フレスカさんは案内の人について中庭? を進んだ。

 だだっ広いだけで何もない場所だ。

 植木がいくつか設置されていて、確かにこの状態で遠くから読唇とかは無理そうだな。

 テーブルに近づくと、既にお茶が配膳されているのが見えた。

「よく来てくれた」

 ルミト陛下が悠々と言った。

 既に儀礼用の舞台劇みたいな服は脱いで簡素な上下のお姿だ。

 スタイルがいいのが丸わかりだ。

 美人は何を着ても美人というかベストドレッサーだな。

 俺たちは儀礼服のままだから何か負けた気がする。

「今日は暖かいぞ。

 上着くらいは脱いだらどうだ」

 軽く言ってくれるけど、それって何か礼儀(マナー)に抵触するのではと悩んでいたらオウルさんがあっさり言った。

「では失礼して」

 煌びやかな帝国皇太子の上着を脱いでしまった。

 無造作に椅子の背に掛けて腰を降ろす。

 フレスカさんもそれに習った。

 ああ、そうですか。

 もう社交が始まっているらしい。

 いや、俺は別にいいんですが。

 ちょっと悔しかったので、俺も無言で上着を脱いで腰を降ろす。

 確かに空気が暖かくて気持ちがいい。

 しばらく黙ったままお茶を啜っているとルミト陛下が話しかけてきた。

「あいかわらず派手な登城だったが、何か思うところがあるのか?」

 派手?

 ああ、野生動物の事ですか。

「別にありません。

 あれは偶然というか」

「あのせいでエリンサ中が大騒ぎだぞ。

 ヤジママコトが戻って来たと」

 何で?

 いやそうか。

 ああいう馬鹿な真似をするのは俺くらいだもんな。

 別に好きでやっているわけではないんですが(泣)。

「しかも今回は帝国軍を率いてきたと。

 衛兵隊が戦々恐々としていると報告を受けた。

 あまりエラ(うち)の者を脅してくれるな」

 ルミト陛下、話は俺を非難しているけど口調と表情が裏切ってますよ。

 もっとやれ、と?

「帝国軍が主上(マコトさん)の配下であることは間違いございません」

 オウルさんが口を挟んだ。

(オウル)を含めて」

「やはりそうか」

 ルミト陛下が真面目な表情になった。

「報告は受けている。

 オウル殿はマコトの『従者』と?」

「その通りでございます」

 止める間もなく言われてしまった。

 どうすんのよコレ。

「ソラージュの王太子(ミラス殿)もマコトの『舎弟』であると聞いている。

 ララエではとうに名誉大公か。

 凄いものだなマコト」

 何か俺が黒幕みたいになってきてしまった。

 違うんです。

 俺は何もしてないというか、考えてないというか。

「そのマコトに頼みがある」

 ルミト陛下が真面目な表情を崩さない。

 ヤバい。

 これは間違いなく厄介事をふっかける気だ!

 でも断れないんだよね(泣)。

 しょうがない。

「何なりと」

「よく言ってくれた」

 ルミト陛下の笑みが深くなった。

 ていうか陛下、何で俺ばっかなんです?

 今回はオウルさんの親善訪問がメインのはずですが。

「ああ、それは良いのだ。

 既に話はついているのでな」

 ルミト陛下が何か合図しながら言った。

「実は、皇帝(アリヤト)陛下よりエラ国王(ルミト)陛下については伺っております」

 オウルさんがゆったりと座り直しながら言った。

「何でも堅い友誼で結ばれておられるとか」

「そうだ。

 ソラージュの国王(ルディン)を含めてな。

 もちろん貴族どもには秘密であるが」

 それは聞いてますが、でも皆さんずっと会っていらっしゃらないのでは。

「連絡は取り合っておる。

 古い友誼だ。

 まだ我等が立場に縛られていなかった頃の、な。

 ああ、来たか」

 ルミト陛下の視線を追うと二人の人影がこっちに向かって来ていた。

 両方とも金髪で、つまり北方種(エルフ)か。

 ていうか見覚えがあるぞ。

 ユリス王子とその弟の誰だったっけ。

 二人の王子は俺たちの前に立つと礼をとった。

「お呼びにより参上致しました。

 陛下」

「うむ。

 オウル殿、紹介する。

 我が息子たちだ。

 ユリスとユラシオ、こちらがオウル殿とフレスカ殿」

 そうだ、ユラシオさんだ。

「ユリスでございます。

 オウル殿下。

 フレスカ殿下」

「ユラシオです」

 礼をとる二人に対して、オウルさんとフレスカさんは立ち上がって同じく礼をとった。

「オウルである。

 よしなに」

「フレスカでございます。

 皇太子(オウル)の補佐の任についております」

 王国の王子二人に対して帝国の皇太子と皇女か。

 まあ、身分的には同格というところか。

 俺?

 俺は両方と知り合いだからいいんだよ。

 ルミト陛下も俺のことは無視していたし(泣)。

「まあ、座れ」

 ルミト陛下の命令で二人の王子が着座する。

 どこからともなく現れた給仕の人がお茶を配膳して消えた。

 マジで気配がなかった。

 忍者か?

「さて」

 ルミト陛下が言った。

 全員が注目する。

「今までマコトの話をしていたのだ。

 帝国皇太子とソラージュ王太子はマコトの後見を受けていると」

 いきなり何を言い出すんですか!

 いや、確かに俺は皇帝選挙でオウルさんを後援したし、ミラス殿下とフレアさんの後見人にされたんだけど。

 でもこの場でそんなこと言わなくても。

 ルミト陛下は俺なんか無視して言った。

「どうだユリス?

 お前もマコト殿に後ろ盾になって貰ったら?」

 パネェ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ