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サラリーマン戦記 ~スローライフで世界征服~  作者: 笛伊豆
第五部 第五章 俺が支配者?

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12.嫁入り?

 アリマド王女殿下は北方ローニタニア王国王太子の令嬢だ。

 ローニタニアって、名も知れぬ帝国皇子がたった一人の帝国騎士(ライヒスリッター)と若干の配下を持って共産主義者の反乱を鎮圧したという伝説がある国なんだよね。

 その帝国皇子がカールさんなんだけど。

 帝国騎士(ライヒスリッター)がナレムさんで。

 ついでに配下の人たちって現エラ王国の国王(ルミト)陛下とその側近だったりする。

 つまりローニタニア王家はカールさんに救われたわけで、当然だけど一族揃ってカールさんのファンだ。

 いやファンというよりはもう信者(マニア)と言ってもいいくらいで、何しろカールさんとアリマド王女殿下が間違いを起こして欲しいと一家全員で願っていたほどで。

 何としてもシミト家(カールさん)の血をローニタニア王家に取り込みたいということで、国王陛下や王太子公認でまだ十代のアリマド王女殿下を旅のカールさんに弟子として押しつけたんだった。

 そういえばいつの間にかカールさんの側からアリマド王女(さん)が消えていたけど、何でエラで商人なんかやってるんだろう。

 ていうかひょっとして廃嫡されでもしたの?

「いえ。

 私はまだローニタニア王女でございます」

 アリマド王女殿下は澄まして言った。

「公式には某所で花嫁修業をしている事になっております」

「つまり今はお忍びであると」

「はい。

 ご紹介させて頂きます。

 こちらが」

 アリマド王女殿下は隣で片膝をついているイケメンな青年を指し示した。

「ニザ・シミト。

 私の婚約者です」

 何だってーっ!

 驚く俺を尻目にその青年は真面目な顔付きで頭を下げた。

「ニザでございます。

 ヤジマ大公殿下には初めてお目にかかります。

 お噂は父や祖父からかねがね」

 そうか。

 つまりカールさんの孫ということね。

 なるほど。

 カールさん、アリマド王女(さん)を血族に押しつけたわけだ。

 ローニタニア王家の目的がカールさんの血統を取り込むことなら、何もカールさん本人をたぶらかす必要はない。

 カールさんはちゃんと結婚して子供も孫もいるからね。

 しかも聞いたところによると子沢山で、息子だけでも4人いるという話だった。

 その息子さんたちもとっくに成人しているどころか既に中年で、つまり孫の世代が育っている。

 息子さんたちは帝国皇子(カールさん)の子という立場を生かして商人として成功しているという話だけど、この何と言ったっけの人はその更に子供世代ということだ。

 なんとまあ。

 でもアリマド王女(さん)、それでいいんですか?

 アリマド王女(当人)はびくともしなかった。

「もちろん私はカル様を尊敬、いや崇拝申し上げております。

 ですが結婚はまた別でございます」

 さいですか。

 さすが生まれついての王族は違う。

 俺が感心しているとユマさんが言った。

「我が(あるじ)

 とりあえず席にお招きを」

 そうでした。

 まだ片膝突いたままのお二人に立って貰い、俺たちのテーブルに誘う。

 アリマド王女殿下はもちろん、婚約者だというカールさんのお孫さんも一緒だ。

 帝国皇子の孫で王女の婚約者だからいいのだ。

「一応、ローニタニア王家より子爵位を許されております」

 何とかいうアリマド王女(さん)の婚約者の人が生真面目に言った。

 まあ、子爵でも身分としては低すぎるんだがこの場は無礼講ということで。

 ええと、ところでカールさんのお孫さんは何しに来たのでしょうか。

(ニザ殿でございます)

 見かねたらしいハマオルさんの遠当ての術が俺の耳に響く。

 いつもながら感謝!

 ニザ子爵(さん)ね。

 この席だけでも忘れないようにしないと。

 俺の疑問にはアリマド王女が応えてくれた。

「この地にいたのは偶然なのでございますが、こちらにヤジマ大公殿下がおいでになるとお聞きしまして」

 ついでとばかりニザ子爵を紹介したかったのだそうだ。

 そういえば俺って商人から見るとヤジマ商会の所有者(オーナー)なんだよね。

 貴族の人たちは俺を大公という身分で見るけど、商人なら例え貴族でも商売で考える。

 大抵の商人なら、俺と顔つなぎできるのなら何だってやるはずだ。

 まあ、出来ないんだけどね。

 でもアリマド王女殿下は俺と面識がある上にカールさんの紹介状を持っていたわけで、そんなチャンスを逃すはずがない。

 凄いな。

 アリマド王女(さん)って見かけはいかにも貴族令嬢というか王女なんだけど、行動力と思い切りの良さが桁外れだ。

 でなきゃ単身カールさんについていったりしないよ。

 食卓についた所で、とりあえずアリマド王女殿下(さん)とニザ子爵(さん)を他の人たちに紹介する。

 オウルさんやフレスカさんはもちろん、ユマさんも初対面のはずだ。

「アリマド・ローニタニアでございます」

「ニザ・シミトです」

 アリマド王女(さん)は堂々としていたけど、さすがにニザ子爵(さん)は緊張していた。

 それはそうだ。

 相手は次期帝国皇帝や皇女なんだよ!

 商売どころの話じゃない。

 でもオウルさんたちはまったく気にしてなかった。

「オウルだ」

「フレスカです」

 それだけ?

 まあ、それ以上言う必要はないけど。

「ユマ・ララネルでございます。

 アリマド王女殿下。

 ニザ子爵閣下」

 ユマさんが丁寧に挨拶すると、アリマド王女(さん)はともかくニザ子爵はオウルさん以上に圧倒されたらしかった。

「ニ、ニザです。

 何とぞよろしくお願いします」

 やっぱ商人の間には広まっているな。

 この(たお)やかなご令嬢が世界を支配しているという事実が。

 いや経済的にだけど。

 まあいい。

 これで顔つなぎも済んだということでニザ子爵(さん)は引き上げたそうだったけど、オウルさんが興味を持ってしまった。

「ニザ子爵(殿)はカル帝国皇子殿の血縁なのだな?

 そしてアリマド嬢はローニタニア王家のご出身と」

「はい。

 故あって巡り会いました」

 かなり強引な作為が働いた気がするけど、まあそう言っても間違いじゃないか。

「ローニタニア。

 ふむ。

 そうか。

 あの伝説か」

 オウルさんも聞いたことがあったようだ。

 ていうか帝国の皇族なら多分知っているよね。

 ラウネ嬢の話だと帝国騎士(ライヒスリッター)の間でもよく知られているらしいし。

 アリマド王女(さん)が表情を輝かせた。

「オウル殿下もご存じでございますか。

 その帝国皇子こそカル様でございます」

 どうでもいいけどこの王女様も物怖じしないね。

「なるほど。

 ローニタニアは我が帝国に好意的と聞き及んでいるが、そのためと」

「はい。

 正確に言えば我が(ローニタニア)王家はカル・シミト帝国皇子殿下に私淑しております」

 言っちゃったよ!

 色々規格外の王女様だなあ。

 ふと見るとニザ子爵(さん)が青い顔をしていた。

 こんな装備(女房)で大丈夫か?

 問題ない、としか立場上言えないのが辛い(泣)。

「いえ。

 覚悟はとうに決めましたので」

 さすがカールさんのお孫さん。

 度胸はあるらしい。

「カル殿は私も尊敬している。

 我が帝国もローニタニアとは上手くやっていきたいものだな」

「光栄でございます」

 何となく上手くまとまってしまった。

 アリマド王女(さん)って実は外交上手?

 いや今は商人なんだっけ。

 それからしばらく雑談したけど、ニザ子爵(さん)たちは本当に偶然俺たちに行き当たっただけらしかった。

 今はエラに限らず北方諸国などで交易を営んでいるそうだ。

「父から暖簾(のれん)を分けて貰いまして。

 現在はシミト交易から業務を受託しておりますが、ゆくゆくは独立(ひとりだち)したいと」

 ニザ子爵(さん)は熱意を込めて語るけど、多分その願いは割合早く叶うだろうな。

 だってローニタニア王国がバックについているのだ。

 既に御用商人と言っていい。

 ローニタニアの意図は見え透いている。

 いずれニザ子爵(さん)とアリマド王女殿下の間に子供が出来たら一直線に取り込むはずだ。

 男だったら多分ローニタニアの侯爵か公爵家辺りの婿に迎える。

 女の子はもっと簡単で嫁取りすればいい。

 で、次かその次の世代にはいずれにせよカールさんの血をひく子孫が登極するか王妃になると。

 最終的にはカールさんの血筋の人がローニタニアの国王に戴冠するはずだ。

 ニザ子爵(さん)、壮大な家族計画に巻き込まれている事に気づいているのかどうか。

 ちなみにカールさんの孫娘を王子の嫁にする方が簡単臭いけど、カールさん自身は帝国皇子であってもその子孫は平民だからね。

 乙女ゲームじゃあるまいし、いきなり平民の男や娘を王子の正室とか女王の王配に、というわけにはいかないんだろうな。

 軽小説(ラノベ)ならどっかの高位貴族家の養女にして、という方法がとれるが今回は駄目だ。

 だってローニタニアはシミト家(カールさん)の血筋を正当に取り込みたいんだよ。

 アリマド王女(さん)がカールさんと間違いを起こしたら別だっただろうけど、子孫じゃね。

 だから遠回りでもまずカールさんの血縁に王女(アリマドさん)を嫁入りさせると。

 それも無茶ではあるんだけど、こっちの世界ではあり得ないほどじゃないからな。

 現にソラージュではグレンさんのルワード家で同じことが起こっている。

 王女が嫁入りした家を子爵(貴族)にしたわけで。

 まあいいけど。

 俺には関係ないし。

 ていうか、そもそも俺自身ど庶民のサラリーマンだったからなあ。

「その通りでございます」

 オウルさんが割り込んできた。

「家柄など関係ございません。

 私の正室()も元は平民でございます」

 いや、貴方(オウルさん)奥方(メルシラさん)が規格外なだけですって(笑)。

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