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サラリーマン戦記 ~スローライフで世界征服~  作者: 笛伊豆
第五部 第四章 俺が勇者?

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23.重要?

 とりあえず帝国軍部隊の方々には空いていた宿舎に入って貰った。

 ヤジマ商会の方はそれ専用の宿舎があるそうだ。

 帝国軍は騎兵と司輜部隊の混成なんだけど凄いよね。

 そんなに都合良く最初から宿舎や馬屋が用意されている訳がないので、これはユマさんの手配だ。

 サレステに到着してからその件で走り回っていたらしい。

「オウル様に派遣部隊の規模を教えて頂けたので、ヤジマ男爵領を拠点として活動して頂けるように調整しました。

 ララエ公国政府も了解済みでございます」

 さいですか。

 つまりは出来レースだったと。

 ララエ公国にしても、オウルさん付きとはいえ帝国軍の派遣部隊をどうするか悩んだだろうからね。

 帝国皇太子の随行員兼護衛と言われれば入国を拒むことも出来ない。

 でもサレステにそんな規模の外国人部隊を収容できる余裕なんかないんだよ。

 ララエ公国は国力に比べて軍の規模が小さいと聞いている。

 商業国家ということもあるし、そもそも戦う相手がいないのに大規模な軍を維持する必要がないからだ。

 今はヤジマ男爵領になっている要塞も、軍の縮小に従って閉鎖されたんだしね。

 その代わりに各大公領には独立した騎士団が多数あって、警備隊や軍の任務を補完している。

 でも騎士団は自営だから自分たちが使う施設しか持ってないんだよ。

 困っていたところにユマさんが話を持ちかけたら大歓迎されたそうだ。

 ヤジマ男爵領が対処してくれるのなら別に外国人に頼ることにはならないからね。

 ララエでは俺は自国の大公として扱われているから、ヤジマ名誉大公がララエ公国政府から帝国皇太子の世話を委託されたという建前だそうだ。

「ヤジマ商会の派遣部隊も入領しましたので。

 後ほどご挨拶をお願いします」

 へい。

 挨拶くらいはするけど、これからどうするんでしょうか。

「とりあえずは休息に待機というところでしょうか。

 事態は流動的ですので予定が立てられません。

 というよりは我が(あるじ)次第かと」

 ユマさんが肩を竦めた。

 そもそも俺がララエに来たのは魔王顕現の視察と言っては変だけど、とにかく現状を把握するためだ。

 だから既に被害が出ている場所に行ってもいいんだけど、ハムレニ殿が率いる野生動物会議の報告ではむしろこれからだそうだ。

 大体の場所は判っているんだけど、ピンポイントで特定できるわけじゃないんだよね。

 大体判るというだけでも凄いけど。

「そういえばサレステ防災舎とかあるんだっけ?」

 レムルさんが舎長をやっているはずだが、まだ俺会ってないよね?

「連絡はとれておりますが、こちらにご挨拶に伺う余裕がないとのことでございます。

 お詫びの言葉を頂いております」

 そこまでか。

 苦労性のレムルさんだからな。

 死なないといいけど。

 その後、オウルさんご一家が挨拶に来た後に一緒に派遣部隊を閲兵した。

 帝国軍部隊とヤジマ商会の部隊はすっかり馴染んでいた。

 何でもソラージュからララエに来る途中でお互いに交流が進んだそうだ。

 帝国軍部隊は皇太子殿下(オウルさん)の直属であると同時に帝国皇子である俺にも間接的に仕える立場にある。

 ヤジマ商会の部隊は俺の配下ということですぐに同輩だと認め合ったらしい。

「野営時、毎日のように騎馬戦の演習を行ったようですな。

 その後はヤジマ食堂(レストラン)から派遣された料理人(コック)が作る料理を一緒に摂る事で仲間意識が進んだと」

 オウルさんが呆れたように教えてくれた。

 やはり飯か。

 ヤジマ商会はともかく帝国軍部隊の皆さんが妙に意気が高いのもそのせいらしい。

 まあいい。

 閲兵ではまずオウルさんが皆さんを労い、次に乞われて俺も短く演説した。

 「万歳(ウラー)!」の歓声は俺の方が多かったような。

 オウルさんは平然としていたどころか満足げだったけど。

 いいのかよ。

 自分の配下なのに。

「当然でございます。

 この者どもは従者である私を通じてすべて主上(マコトさん)の配下でございますからな」

 違うと思うけどもういい。

 部隊を解散させると俺たちはみんなで居間(リビング)に戻った。

 当たり前だけどオウルさんはご家族を連れて来ていた。

 親善訪問だからね。

 今まではララエ公国の迎賓館に滞在していたんだけど、堅苦しくて参っていたそうだ。

「常に気を張っている必要がありましたので。

 私や(メルシラ)はともかく子供たちが消耗しております」

 それは大変だ。

「ここは私的(プライベート)なのでゆっくりして下さい」

 そう言うとオウルさんの息子さんたちはほっとしたように礼を取ってくれた。

「ありがとうございます!

 ヤジマ名誉大公殿下」

「ソラージュでどれだけ気を遣って頂いていたか、身に染みました!」

 さいですか。

 まあ、ヤジマ屋敷では相当寛いでいたみたいだしね。

 ここも同じなのでゆっくりして下さい。

 疲れているらしいメルシラさんと子供さんたちはすぐに部屋に引き上げたので、俺とオウルさん、そしてユマさんは今後の方針について話し合った。

 オウルさんの方はララエの主立った人たちと社交を進めていて、とりあえずは一段落ついたらしい。

 主立ったと言っても公国政府や大公および領地貴族の人たちだ。

 帝国皇太子だから大商人なんかとはあまり社交しないんだよね。

 その点がヤジマ商会会長だった俺とは違う。

「国策事業を行っている商人とは会談しましたが、顔合わせですな。

 細かい所は官僚どもがやります」

 そうだろうね。

 つまりオウルさんは暇だと。

「というよりは自由に動けるということでございます。

 我が(あるじ)は大公会議よりオウル様の接待を任されましたので、今後はご同行をお願いします」

「もちろんだ」

 オウルさんの即答。

 ユマさんの作戦(シナリオ)が進行していく。

「場合によってはオウル様の護衛部隊にもご助力頂ければと」

「当然だな。

 我が『力』はすべて主上(マコトさん)のためにあるのですから」

 これが目的か!

 なるほど。

 帝国軍って土木工事の専門家だからね。

 それは騎兵でも変わらない。

 俺も驚いたけど、帝国の騎兵って騎士というよりはむしろ「馬に乗れる兵士」なんだよ。

 その目的は移動速度だ。

 伝令の役目の他、目的地に急行して戦う即応部隊という性質を持つ。

 騎兵といえば普通は大規模会戦の切り札的な意味を持っているはずなんだけど、帝国は騎兵が活躍出来るほどの戦争を忘れて久しいらしい。

 帝国の建国の時にはさすがに数千人規模の戦いがあったそうだけど、当時ですら騎兵はあまり役に立たなかった。

 絶対数が少なすぎて切り札とは言えない上に、歩兵と違って金食い虫だからね。

 騎兵は当然だけど騎手の他に馬が必要だ。

 馬はよく食う上に世話をしないとたちまち倒れる。

 一頭の馬の世話係だけで数人は必要らしい。

 地球の場合、歩兵の指揮官は馬に乗っていた事が多かったそうだけど、こっちの世界では馬上にいてもあまり権威付けには役に立たないからな。

 魔素翻訳でバレバレだ。

 だからというわけでもにないけど馬に乗って戦うという発想があまりないらしい。

 そういえばソラージュの騎士団も馬は運搬用という考え方だったような。

 セルリユの中央騎士団の人たちもぞろぞろと歩いて移動していたからね。

 近衛騎士も馬には乗らないし。

「近日中にサレステ防災舎と打ち合わせを行います。

 その結果によってはすぐに動く可能性がございますので、準備をお願い致します」

「心得た」

 オウルさんは快諾してくれた。

 さすがはユマさん。

 機動力として帝国軍を取り込んだか。

 これだけまとまった戦力単位を思うがままに使えるのって大きいよね。

 ヤジマ警備はいわば不正規軍だから、秩序だった集団行動は苦手なのかも。

 災害対策に必要なのは組織的な行動だからね。

「それでは夕食時に」

 オウルさんが去るとユマさんが言った。

「現時点では準備することしか出来ません。

 何か注意することはございますか?」

 そう言われてもね。

 何かまだ実感が沸かないし。

 でも言えることが一つある。

「前にも言ったけど、地球(俺の故郷)では速度が勝負だと言われている。

 災害(魔王の顕現)現場に出来るだけ早く駆けつけて救助に当たるのが第一。

 それと、もうひとつ重要なことって外部から人を入れることだと聞いたことがある」

「人でございますか?」

「野生動物でもいいけど、孤立した集団が災害に遭ったら全員が打ちのめされて生きる気力を失うことがあるらしいんだ。

 そういう状態だとちょっとしたことで亡くなってしまうことがある。

 そんな時は外部から元気な人がその集団に入って一緒にいることでみんな気力を取り戻すとか」

「……なるほど。

 これは重要なことでございますね」

 ユマさんは深く頷いた。

「判りました。

 我が(あるじ)のお心のままに」

 何かそんな凄い事言った?

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