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サラリーマン戦記 ~スローライフで世界征服~  作者: 笛伊豆
第五部 第四章 俺が勇者?

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20.要求?

 ようやく大公会議が開催されるというので俺は正装して出かけた。

 公式に人前に出るのはララエ来訪後これが初めてだ。

 俺の立場は微妙で、ララエの名誉大公ではあるけど同時に外国の支配者層だからな。

 礼儀上は問題ないにしても、やはりララエ公国政府に黙って色々と動くと軋りが出てくる可能性がある。

 そうユマさんに言われて引きこもっていたわけだ。

 俺もそうしたかったし(笑)。

 面倒は少ない方がいい。

 大公会議の参加資格は大公であることなんだけど、俺は名誉大公だからオブザーバーとして出席出来る。

 ていうかそういう事になっている。

 ご都合主義もいいところだけどね。

 馬車が何と言ったかの宮殿に着くと楽隊が迎えてくれた。

 規模的に微妙だな。

 ララエも俺をどう扱っていいのか判らないのかも。

「そうですね。

 ご身分だけのことではないのでしょう」

 側についてくれているユマさんが言った。

「というと?」

「我が(あるじ)はヤジマ財団の理事長でございます。

 ヤジマ商会を配下に置く強大過ぎる組織の長なのですよ。

 ソラージュはもちろん、ララエにおいてももはや経済的に無視できない存在になってしまっていると言っても良いでしょう。

 そのような方を迎える方の気持ちになってみれば判ります」

 確かに。

 それは怖いよね。

 礼儀云々じゃなくて、万一俺のご機嫌を損ねでもしたら下手すると国が滅ぶ。

 そこまでいかなくても混乱は必至だ。

 増して来訪中の帝国皇太子が俺の従者だと自ら宣言しているのだ。

 人の形をした魔王みたいに思われているのかも。

「歓迎されていないと」

「そんなことはございません。

 今回の件では我が(あるじ)がいなけれぱララエ公国も詰んでしまうかもしれないのですから。

 諸刃の剣ですね」

 勘弁してよ。

 俺、ララエ公国(向こう)の依頼でここに来たような気がするんだけど。

 何でそこまで警戒されないといけないのだ。

 いつものことながら疲れる。

 まあいいか。

 俺たちはハマオルさんやラウネ嬢、および屈強な護衛に囲まれて建物に入った。

 野生動物の精鋭部隊も堂々と同行している。

 いいのかなあとか思ったけど、今のララエには事実上俺がやることに文句をつけられる人はいないそうだ。

 身分的にも実力的にも(泣)。

 こんなことばっかしていると俺、そのうち独裁者になってしまうんじゃないだろうか。

 気をつけよう。

「ヤジマ名誉大公殿下がおいででございます」

 先触れが走り、俺の前でドアが次々に開かれていく。

 最後に現れた扉は見覚えがある大公会議室だった。

「ヤジマ名誉大公殿下がいらっしゃいました」

 執事のような格好の人が声を張り上げると返事はなかったけど重厚な扉が開いた。

「では行ってくる」

「お心のままに」

 ここから先は護衛や随員は立ち入り禁止だ。

 ハマオルさんたちが控え室に案内されるのを尻目に踏み入る。

「お、やっと来たか!」

「久しぶりだな」

「お待ちしていました」

 円卓にずらっと座った大公たちから声がかかり、一番近くにいたナル、いやレナルディ大公がわざわざ立ち上がって迎えてくれた。

 大公会議で一番若いイケメンだ。

 俺を除いて(泣)。

「お久しぶりです。

 皆さん」

「まったくだ」

「マコト殿はララエの名誉大公なのだから、もっと頻繁に大公会議に参加しなくてはならんぞ」

「マコト殿がいないと進まない議案が溜まっているのでな」

「当分はいてくれるのじゃろう?」

 何を勝手なことを!

 本来ララエには何の関係もないはずの俺をいきなり名誉大公にしたのはそっちでしょう。

 しかも俺は名誉大公だから大公会議での議決権はないし、資格はオブザーバーだ。

 いやそれだって凄いけど。

 でも俺がいないと話がすすまないなんてことは絶対にない。

「マコト殿はこちらに」

 ナル大公が軽い口調で俺を引っ張って自分の隣に座らせようとする。

 アーサー王の宮廷じゃあるまいし、円卓会議ってのはね。

 ていうかこの席は何?

 大公方は全員座っているから8番目なのか?

「当然であろう」

「御身はララエの名誉大公なのじゃぞ?」

「しかも我等と違って終身身分だ。

 いつの日か、この円卓に着く者の中でマコト殿が最年長になる日が来る」

 冗談じゃない。

 いやそうなりそうだけど真っ平ご免ですから!

 とは言えないのが辛いところだ。

 しょうがない。

 俺は渋々着席した。

「これで大公会議も定数を満たしたな」

「確かに。

 これまで会議を開く度に何かが足りないと感じておったがマコト殿がいなかったためか」

「ララエもようやく落ち着けそうだ」

 俺、ひょっとして嫌がらせされている?

「とんでもありません。

 我等一同、マコト殿の存在感を改めて感じている所です」

「そうそう。

 しかも前と違って今のマコト殿はソラージュの大公で帝国の皇子だ。

 我等の誰よりも身分が高いのではないか」

「拝跪しようか?」

 やっぱからかわれている。

 ララエの大公連中(この人たち)そういう性格(芸人)なのは判っていたんだけどね。

 でも仕事においては有能で油断も隙も無い。

 俺なんかの敵う相手じゃないんだよ。

「そんなことはない。

 まあそれは後だ。

 改めて挨拶させて頂く。

 よくご帰還なされた。

 ヤジマ名誉大公」

「我等一同、首を長くして待っておったぞ」

「そして新しいご身分についたことをを寿(ことほ)がせて頂く。

 おめでとう。

 ソラージュのヤジマ無地大公で帝国のヤジマ皇子」

「「「おめでとう」」」

「しかも跡継ぎ(男の子)が誕生したというではないか。

 これほど喜ばしいこともあるまい」

「そうだ。

 ヤジマ名誉大公」

「「「おめでとう」」」

 魔素翻訳がなくても心から祝福してくれていることが判る。

 いきなりシリアスになるんだもんなあ。

 拍手まで起きたりして。

 俺はここにいてもいいのか。

 あまり居たくない気がするけど。

「ありがとうございます。

 新しい身分や父親としての立場にはまだまだ慣れませんが、何とかやっています」

 俺が真面目に応えると大公連中はすぐに崩れた。

「いきなり皇子で大公だからな」

「我等も似たようなもんじゃ。

 別になりたいとか思ってなかったのに皆がよってたかって」

「よく判るぞ。

 マコト殿」

 もういや(泣)。

「さて冗談はこれくらいにして。

 わざわざララエ(ここ)にマコト殿を呼んだのには相応の理由がある。

 マコト殿にも何か話があるそうだが、とりあえずは貴殿の話から聞こうか」

 大公連中の中でも長老のホト大公が言った。

 この人、ユラン公子の父親なんだよね。

 タラノ領の大公で。

 大公(トップ)の中のトップということで威厳とかが尋常じゃない。

 中身は芸人なんだけど。

 それにしても先にこっちの要求を言わせるつもりか。

 それを了解されたら俺が相手の話を断りにくくなるからな。

 やはりタヌキか。

 まあいい。

 どっちにしてもここまで来たら断れるはずもない。

「それでは。

 実はサレステにおける野生動物たちの立場についてなのですが」

 俺は野生動物たちの関係がぎくしゃくしていることを説明した。

 おかげであちこちで支障が出かけていると。

 大公会議はすぐに納得してくれた。

 それは当然だよ。

 お膝元なんだし。

 ひょっとしたら俺より事情に詳しいかもしれない。

「判った。

 してマコト殿には対策があるかな?」

 ホト大公が淡々と聞いてくる。

 やっぱ手の平の上か。

 ユマさんがいてくれたら少しはやり返せると思うんだけどね。

 でもユマさんがいないってことは、ユマさん抜きでも問題がないということだ。

 もし必要なら略術の戦将(ユマさん)は何としてでもここにいるはずだからね。

 それに対応策ってこれっきゃないでしょう。

「大公会議がサレステ野生動物会議を後援(バックアップ)して下さい。

 正式な条約とかでなくてもいいです。

 とりあえずそれを公にして頂ければヤジマ商会が支援させて頂きます」

 つまり仕事はするから権威を寄越せということだ。

 外国の企業が公然と他国の公都の野生動物会議の後ろ盾になるわけにはいかないからね。

 大公会議はララエ公国の最高権威だから、野生動物会議もその権威の元に正式に開催できるようになればいいのだ。

 これによって野生動物も海洋生物もララエ公国の公式な勢力として認識して貰える。

 あとはヤジマ商会がサレステ興業舎かどっかに依頼して動いて貰えばいい。

「良いよ」

「賛同」

「了解した。

 早速公布しよう。

 何、原案はもう出来ておるし公国政府にも担当部署を設立済みじゃ」

「ということでマコト殿。

 よろしいか?」

 やっぱかよ(泣)!

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