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サラリーマン戦記 ~スローライフで世界征服~  作者: 笛伊豆
第五部 第四章 俺が勇者?

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8.チャンス?

 その日は情報収集のための体制を作ることだけを決めて帰宅した。

 それ以上のことは出来ないということで。

 もちろんヤジマ財団の職員の人たちは頑張ってくれるそうだけど、俺は用なしなんだよ。

 視察に行くにしても簡単ではない。

 日本と違って現地まで飛行機でひとっ飛びというわけにはいかないからな。

 その情報収集にしても無線やネットがあるわけじゃないのでリアルタイムなんか無理だ。

 幸いヤジマ航空何とかが全面的に協力してくれることになったので、何か起こったら半日遅れくらいで連絡が来るらしい。

「それでも後手に回ることは確実でございます。

 情報を得てもすぐには動けませんので」

 レイリさんが深刻そうな表情で言った。

 午後になってからヤジマ屋敷(うち)に訪ねてきたんだよね。

 ユマさんも一緒で、改めて着任のご挨拶をということだった。

 とりあえず俺の書斎(執務室)で出迎える。

「レイリ・ナルシナでございます。

 この度ヤジマ財団調査部長を拝命致しました」

 片膝を突いて丁寧に挨拶してくれるレイリさん。

 (ハスィー)は「ハスィーです。よろしくお願いします」とだけ返した。

 ヤジマ財団の理事に就任しているから一応上司だ。

 今のところは役職はないけど。

 でもそのうち何か仕事が降ってくるんだろうな。

 広報とかで。

 それにしてもレイリさん、こうして見るとやっぱり三十代前半にしか見えない。

 北方種(エルフ)の血を引いているので老けないらしいんだよね。

 美魔女だ。

 対する(ハスィー)は年齢不詳になってしまっている。

 いや姿形は二十歳そこそこにに見えるんだけど、威厳というか落ち着きが凄い。

 若く見えるのは肌が綺麗で輝いているからだろう。

 でもとても小娘が醸し出せる雰囲気じゃない。

 何か益々凄くなってない?

 レイリさんも似たような事を感じたらしく、態度(マナー)が完全に目下の者だった。

 俺の部下というよりはもう、(ハスィー)の配下いや信者?

 レイリさんも北方種(エルフ)に近いから純血の北方種(ハイエルフ)である(ハスィー)との間に何かあるかと思ったけど、特に上下関係はないらしい。

 軽小説(ラノベ)に毒されすぎか。

 銀北方種(シルバーエルフ)のアレナさんが(ハスィー)の従者をやっているもんで、何となくそういう関係を連想してしまった。

 その後は居間(リビング)に移動して、ハマオルさんやユマさんを交えて今後の方針について説明(レクチャー)を受けた。

「内々にですが、サレステ防災舎から支援依頼を受けております。

 資金援助や物資資材、防災知識(ノウハウ)、それに人材まで手当たり次第です」

 なりふり構わずってことか。

 随分厚かましいな。

「サレステ防災舎の舎長はレムル・フィドでございます。

 ヤジマ経営相談(コンサルティング)始原の七人(オリジナルセブン)の一人でマコトさんの愛弟子かと」

 レムルさんか!

 そういえば俺、ララエに居た頃はレムルさんに随分無茶ぶりしたっけ。

 毎回過労と心痛で死なないように祈っていたけど、とうとう舎長になったか。

「あの人はまだ若くなかった?」

「現在二十代前半ではないでしょうか。

 兄君がララエ公国政府統制官のヒロエ殿ということで苦労されておられるようです」

 可哀想に。

 ララエ公国政府統制官(ヒロエさん)なら覚えているけど、気弱げな表情と優しい態度でえげつない手を打ってくる人だったっけ。

 役人には珍しいタイプだ。

 ララエ公国って政府の上の方の人は大抵押しつけられて役職についているからね。

 大公なんか騙し討ちで登極されられたような人ばっかだったりして。

 そのせいか、あまり悪辣な性格の人はいなかったな。

 むしろお人好しの優等生が苦労している雰囲気だった。

 商業国家だから本当に悪知恵が働く人は商人になるんだろう。

 まあレムルさんの兄上(ヒロエさん)は好きで統制官とかやっている臭いけど。

 あれって諜報局(スパイ)だよね?

 何にしてもただ者じゃないことだけは確かだ。

 だって男なのに俺が名前覚えているから。

 まあいい。

「支援といっても現時点では詳細な計画が立てられません。

 とりあえず食料や資材の用意を命じましたが」

 ユマさんでも判らないのか。

 魔王対策は騎士団つまり司法省の担当だから、司法官をやっていたユマさんならある程度は想像がつくのでは?

「私は担当しておりませんでした。

 こうなってみると志願してやっておくべきだったかもしれません」

 ユマさんは監査担当だったっけ。

 それはそうだ。

 司法管理官ってモロに人間相手の仕事だからな。

 魔王(自然災害)は完全に別系統だっと。

 俺も別に仕事で災害対策やっていたわけじゃないんだよなあ。

 つまり一般日本人程度の知識しかない。

 覚えているのは「72時間の原則」くらいか。

「3日間、でございますか。

 それが何か?」

 レイリさんが聞いてきた。

 知らないのか。

 そうかもしれない。

 機動力がないから現地に駆けつけるまで時間がかかりすぎて意味を成さないんだろう。

地球(俺の故郷)では、災害が発生してから72時間が勝負だと言われているんですよ。

 その期間内なら救助した人が助かる可能性があるということで」

 ユマさんを含めてみんなが? の顔になったので説明する。

「例えば家が崩れて下敷きになったとしますよね。

 運良く瓦礫の隙間に入り込んで命を取り留めた場合、頑張れるのがそのくらいだという意味です。

 それを過ぎると救助しても死んでいたという可能性が凄く高くなります」

「……なるほど!

 現地になるべく早く駆けつけて救助に当たる必要があると」

 レイリさんは一瞬で理解したようだった。

 さすが元帝国軍情報局長。

 思考展開が凄い。

「すると機動力が重要になりますね」

 ユマさんも考え込む。

 もう俺、黙っていていいか。

 すると(ハスィー)が俺の手を握ってくれた。

 いや別に落ち込んでないから。

 俺の役目は引き金(トリガー)ということで。

 後はユマさんとレイリさんおよび配下の方々の仕事だ。

「……判りました。

 検討させて頂きます」

 レイリさんが短く言って立った。

 何かもう、頭の中で円盤が回転しているような。

 いやHDDか。

 むしろ光コンピュータとかそっちかもしれない。

「それでは失礼致します」

 ユマさんも似たような状況みたいで、礼もそこそこに部屋を出て行った。

 うーん。

 あの分だとまた何かが始まりそうだな。

 別にいいけど。

 俺を巻き込まないでいてくれるのなら好きにやってちょうだい。

 甘かった。

 数日後、俺はヤジマ財団に呼び出されて言い渡された。

「是非、ご視察をお願い致します」

 やっぱし。

 俺が何かやると絶対に反動が返ってくるからなあ。

 ニートでいたいだけなのに(泣)。

「判りました」

 そう言うとユマさんとレイリさんが驚いたように顔を見合わせた。

「……お判りになられるのですか?」

 そっちから振っといてそれはないでしょう。

 判りますよ。

 現地に行って見てこいってことでしょ?

「その通りでございますが。

 申し訳ありませんでした。

 我が(あるじ)

 ユマさんが頭を下げた。

「私もまだまだでございます。

 静謐なる深淵(マコトさん)を見くびるような事を申し上げてしまいました」

「重ね重ねお詫び申し上げます。

 我が(あるじ)はそういう方でございました」

 ユマさんとレイリさんが土下座しかねない態度で言い募る。

 止めて下さい。

「俺も魔王の顕現跡(被災地)を見ておきたいと思っていましたから。

 これからの対処に必要な事なんでしょう?」

 敢えて軽く言う。

 本当は御免被りたかったけどね。

 だって魔王の顕現(地震)が起こった土地にわざわざ行くってどうよ。

 余震とか露骨に心配だよ。

 そんなのは専門家に任せておけばいいのだ。

 俺、別に自然災害に詳しいわけじゃないし。

 でもユマさんとレイリさんが行けというのなら行くしかない。

 それがヤジマ財団理事長の役目でしょう。

 ヤジマ屋敷(うち)に戻って(ハスィー)に相談すると頷かれた。

貴方(マコトさん)は思う通りになさって下さい。

 ヤジマ財団(ここ)はわたくしが守ります」

「また留守にするけど」

「覚悟の上です。

 今はまだ、わたくしが貴方(マコトさん)に従うべき時ではないのでしょう。

 でもわたくしは常に貴方(マコトさん)と共にあります」

 こんな出来た女房がいていいものだろうか。

 いいのだ。

 俺の(ハスィー)だ。

「では手配をよろしくお願いします」

 ハマオルさんや他の人たちに出ていって貰って二人きりになると、俺は思わず(ハスィー)を抱きしめてしまった。

 もういいよね?

「ここでは。

 寝室に行きましょう」

 (ハスィー)もその気だ。

 子供達はリズィレさんに預けてあるし、チャンスは今しかないかも。

 そう思いながら(ハスィー)の肩を抱いて部屋を出た途端、いきなり凄い迫力の存在(カリスマ)が突進してきた。

主上(マコトさん)

 いよいよ動かれるのでございますね?

 私も同行させて頂きます!」

 オウルさん(泣)。

 TPOを弁えてよ!

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