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サラリーマン戦記 ~スローライフで世界征服~  作者: 笛伊豆
第五部 第三章 俺が財団理事長?

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18.婚約?

 オウルさんの公式行事は舞踏会や会食だけではなかった。

 ソラージュ王政府要人との会談とかもあるけど、それについては俺はノータッチだ。

 関係ないからね。

 俺が勅命で任されたのはオウルさんの「接待」であって政府の仕事じゃないんだよ。

 だからオウルさんがそういう会議とかに出かけている時はヤジマ屋敷に引きこもっている。

 皇太子妃(メルシラさん)と息子さん達もヤジマ屋敷(俺んち)に来て遊んでいた。

 息子さん達は本気で(シーラ)の従者を目指すつもりらしく、二人とも(シーラ)にべったりだった。

 真面目だなあ。

 せっかくソラージュに来たんだからセルリユ興業舎のサーカスとか鯨公演とか色々見物すればいいのに。

「鯨公演はソラージュ(こちら)に来るときに聴かせて頂きました」

 皇太子妃(メルシラさん)が微笑みながら言った。

「素晴らしい機会でしたが、私ども夫婦はともかく息子たちは圧倒されて心が飛んでしまいまして。

 以来、(オウル)に視聴を禁止されております」

 なるほど。

 気づかなかったけど確かにあの経験は凄すぎる。

 聞いているだけで五感が鯨の世界に引き摺り込まれるからね。

 聞き終わってもなかなか戻って来れないほどだ。

 大人ですらそうなんだから、子供ならひとたまりもないだろう。

 ヒューリアさんに聞いてみたら案の定だった。

 何度か事故が起こりかけて、以来鯨公演の視聴には年齢制限がかったそうだ。

 映倫みたいなものか。

 最近まで問題が起きなかったのは、雑な施設ですし詰めになって聴いていたかららしい。

 そのために気が散って逆に歯止めになっていたと。

 でも専用の劇場が出来てリラックスして聴くことが出来るようになると、圧倒的な力で飲み込まれる人が出るようになってしまった。

 実は子供だけじゃなくて稀に大人も心が飛んでしまうことがあるらしい。

 その場合は自己責任なので当局も関知しない。

 大変だなあ。

 ちなみに「子供向け」専用の鯨公演も行われているそうで、そっちはまだ未熟な歌い手(くじら)が出演するとか。

 もっともその場合でも保護者付きでないと許可されないけど。

 凄すぎる芸術は命に関わるのか

「サーカスや猫撫ではいかがですか?」

「ナーダムで一応拝見させて頂きましたので」

 うーん。

 あれはあくまで即席のデモンストレーションみたいなもんだからな。

 セルリユ興業舎のサーカスは毎年成長していると聞いている。

 娯楽(エンタテイメント)部門の目玉商品なので本気で取り組んでいるそうだ。

 ネズミーランドみたいなもので、どんどん新しいものを投入していかないと飽きられるということだった。

 俺もよく知らないんだけど、それを繰り返し続けた結果、今は物凄いことになっているという。

「ご招待しますので、お子さんとご一緒に体験されてみてはいかがですか」

 水を向けると皇太子妃(メルシラさん)は頷いた。

(オウル)に相談させて頂きます」

 それはそうだ。

 他国なら王太子妃なんだよ。

 勝手に動けるわけがない。

 帰宅したオウルさんはあっさり頷いた。

主上(マコトさん)のご招待なら是非もありません。

 行ってきなさい」

 この人の場合、俺が招待したら行く先が地獄でも平然と妻子を送り出しそうだな(泣)。

 そういうわけで次のオウルさんの公式行事の時に、信頼できる護衛に囲まれた皇太子妃(メルシラさん)と息子さんたちがセルリユ郊外にあるサーカスに出かけて行った。

 夜になって帰ってきた息子(マルク)くんたちは興奮で喋りまくったあげく、夕食もそこそこに疲れて寝てしまった。

「息子たちは楽しんだようでございます。

 ありがとうございました」

「いえ。

 優待券(フリーパス)を差し上げますのでこれからもご自由にどうぞ」

 以来、息子(マルク)くんたちの俺に対する視線が憧憬を越えて崇拝になってしまった。

「父上。

 マコト様の従者は」

「私だ。

 お前らにはやらん」

 俺は物ですか!

 別にいいですけど、俺がいない所でやって下さい。

 息子さんたちはこれでいいとして、皇太子妃(メルシラさん)が退屈なのではないかと思ったけど暇さえあればヤジマ屋敷(うち)に来て(ハスィー)と談笑しているので大丈夫のようだ。

 聞いてみたら、もともとソラージュの傾国姫(ハスィー)の大ファンだったそうで話すだけで至福なのだとか。

「私のような生まれの者が(オウル)と結婚して跡継ぎ(息子たち)を産めただけでも法外の幸福(しあわせ)でございますのに、その上で憧れておりました傾国姫(ハスィー)様と直接親しくして頂けるなど、未だに夢を見ているのではと」

 さいですか。

 良かったですね。

 オウルさんの方は公式行事を淡々とこなしていて別に疲れた様子も見せなかったけど、楽しそうでもなかった。

「帝国皇太子の義務を果たしているだけでございます。

 未だ従者として主上(マコトさん)のお役に立てていないのが心苦しい限りですが」

「皇太子の職務を優先して下さい」

 心配いらなさそうだったけど、少しでも気が紛れるというか楽しめるように俺から提案してみた。

「ヤジマ学園やセルリユ興業舎を視察しませんか?

 今後の仕事について何かの参考になるかと」

「それは楽しそうですな」

 早速ユマさんを通じてソラージュ王政府に許可をとってご案内した。

 同行者は俺だけで(ハスィー)はお留守番だ。

 (ハスィー)がヤジマ学園に行ったら大騒ぎになるからね。

 皇太子妃(メルシラさん)と息子さんたちには例によってサーカスに行って貰った。

 一日や二日で全部回れるほどチャチな施設じゃなくなっているからな。

 ちなみに長男のマルクくん(7歳)は順当にフクロオオカミにハマッたんだけど、次男のメトくん(5歳)がハマッたのは意外にも猫撫でだった。

 マルクくんが犬派でメトくんは猫派か。

 まあいいけど。

 ヤジマ学園の訪問はすぐに実現した。

 もちろん学園理事長なソラージュ大公と帝国皇太子が正式に訪問したりしたら大事になるからお忍びだ。

 今回はフレスカさんも同行する。

 ようやくソラージュ王政府との折衝も目処が付いたそうだ。

「大変ですね」

「本当のお仕事は随行の帝国政府の官僚が行うのですが。

 帝国政府を代表する者が同席する必要がありますので」

 舞踏会から逃げたわけじゃなかったのか。

 フレスカさんは(おおやけ)にはしていないけど、帝国皇太子(オウルさん)の名代として動いているそうだ。

 本人は帝国軍を退役したので皇女を名乗れるからね。

 よく考えたら大したもんだよな。

「マコトさんほどではございません」

 意味不明だ。

 とにかくこの3人が動くとなると例えお忍びだろうが護衛は凄いことになる。

 ハマオルさん率いるヤジマ警備や帝国から派遣されてきた護衛に加えて野生動物(犬猫)も動員されたらしい。

 幸いヤジマ学園には外国人や野生動物たちが当たり前にいるので目立たないから助かった。

 今回の視察についてはミラス殿下を通じて学園長のモレルさんに話を通してある。

 といっても自由にやらせてくれ、畏まりましたという程度だけど。

 視察といっても物見湯山に近いからね。

 それでも一応案内を頼んだら見覚えがある人が現れた。

 ええと、誰だっけ?

(庶務課長のオロス殿でございます)

 ハマオルさんの遠当てが耳に響く。

 いつもありがとうございます(泣)。

 後ろにはサリさんがいた。

 総務課じゃなかったの?

 それはいいとして、モレルさんまだ告白してないのか。

 大丈夫なのか?

 これだけイケメンや将来有望な人が多い職場だと、いつ掻っ攫われてもおかしくないぞ。

「お久しぶりでございます。

 ヤジマ大公殿下」

 そう言いながら片膝を突くオロスさん以下の人たち。

「お久しぶり。

 オロスさん。

 ここは私的(プライベート)で」

 そう言ったら頷いて立ち上がってくれた。

 挨拶を交わした後、オウルさんを紹介したらさすがに仰け反られた。

「帝国の皇太子殿下が来邦されておられることは聞いておりましたが。

 まさかお忍びでいらっしゃるとは」

「オロス殿か。

 オウルだ。

 私もお忍びなので礼儀(マナー)は良い」

 オウルさんの迫力(カリスマ)に片膝を突きそうになる皆さん。

「子爵辺りの下級貴族が物見遊山で視察に来たようなかんじでお願いします」

「お心の……判りました。

 大丈夫と思います」

 オロスさんも順応が早いな。

「サリをつけます」

 総務から異動になったそうだ。

 また誰かの陰謀なのか。

 サリさんはまだ平の職員らしい。

 まあ、子爵の相手ならそんなもんだろう。

 オロスさんが出てきたら大公と帝国皇太子だとバレる恐れがあるのかも。

「サリでございます。

 ヤジマ学園庶務課の職員を拝命しております。

 オウル殿下」

 サリさんが挨拶すると、オウルさんは表情を緩めた。

「サリ殿。

 失礼だが貴君は学園長(モレル殿)の係累か?」

 何ですと?

「その指輪、レベーリ家の紋章入りであろう」

「まだ婚約中でございます」

 サリさん、早く言ってよ!

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