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サラリーマン戦記 ~スローライフで世界征服~  作者: 笛伊豆
第五部 第三章 俺が財団理事長?

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4.団欒?

 (ハスィー)の体調は数日で回復した。

 今回は(シーラ)の時と違って乳母を雇ったんだけど、それでも授乳は出来るだけ(ハスィー)がやっている。

 リズィレさんも回復して同じように子供に乳をあげているとか。

 彼女(リズィレさん)近衛騎士(きぞく)の奥方なんだけどなあ。

 そんなことには関係なく自分で育てるようだ。

 聞いてみたら別に珍しいことじゃないらしい。

 軽小説(ラノベ)なんかだと貴族の親は大抵子供を養育係に預けて遊び回ったり仕事したりしているんだけどね。

 こっちの世界では違う。

「もちろん乳母などに任せきりにする貴族(かた)もいらっしゃいますが、父親はともかく大半の母親はご自分で育てるのではないでしょうか。

 そうしないと親子の縁が断絶しかねませんので」

 なるほど。

 魔素翻訳がある以上、産んだだけでほっとかれた親に子供が親しみを持つはずがない。

 感情がダイレクトに伝わってしまうからな。

 成長しても冷たい関係になりかねないし、下手すると敵対されるかもしれないのだ。

 世襲貴族の場合、一番重要なのは家を続けていく事だから後継者に反感を持たれる状況を作ってしまうのはまずい。

 まあ世襲しない近衛騎士なんかは違うかもしれないけど。

「似たようなものでございます。

 長じた子が反感から家名を汚す行為に走る場合もございますので」

 地球と随分違うな。

 貴族の馬鹿息子が横暴だったりする話がむしろ一般的なのに。

 もっとも俺の偏見という可能性もある。

 「貴族の馬鹿息子が横暴」というのはステレオタイプの刷り込みだったりして。

 軽小説(ラノベ)だとそうした方が話が面白くなるのは判るけど、そういう話が流布するということはそれがむしろ稀だからだ。

 当たり前だったら噂にもならないよね。

 そういえば歌舞伎とかで随分酷い話が演じられているけど、例えば殺しや放火が題材になるのはそんなことが滅多に(おおやけ)にならなかったかららしい。

 起きないわけじゃないけど、大抵は握りつぶされてしまうからね。

 専制国家は怖い。

 忠臣蔵は主君を謀殺された家臣たちが仇討ちの為に討ち入ったわけなんだが、あれが芝居になったのは物凄く珍しい事だったからだと聞いたことがある。

 そもそも当時の主君と家臣って雇用契約関係だから、会社の社長と社員みたいなものだ。

 社長が嵌められたからといって社員が相手の家に討ち入るなんてことはまずないだろう。

 忠臣蔵ってそれほど常軌を逸した話だから芝居になったと見るべきだそうだ。

 イケメンな坊さんに会いたいばかりに放火した娘さんも滅多にいない精神異常者だからこその犯行だったわけで、そんなことがしょっちゅうあったはずがない。

 まあ、大事になりすぎてもみ消しようがなかった事もあるだろうけど。

 何を言いたいのかというと大抵の貴族はまともだということだ。

 こっちの世界ではさらにその精度が上がる。

 魔素翻訳でバレバレだし。

 そういうわけで俺とハマオルさんはそれぞれの嫁と子供に囲まれて安穏と過ごしていた。

 もちろんぬべーっとしていたのは俺だけで、ハマオルさんとリズィレさんは俺たち一家の警護を兼ねている。

 まあ警護と言っても屋敷の中だからね。

 たまに中庭で(シーラ)が遊んだりしているが、野生動物(犬猫)の方々がぬかりなく付き添っている。

 屋敷の周りには狼騎士(ウルフライダー)隊を始めとした精鋭部隊が常駐してくれているようで、多分世界一安全な場所なんじゃないかな。

「油断は禁物でございます」

 ハマオルさんはそう言うけどなあ。

 そもそも今の段階で俺を殺ってどうするというんだろう。

 多分何も変わらない上に、実行者はもちろん黒幕まで全部暴かれて痕跡すら残さず叩き潰されて終わりだろう。

 魔素翻訳がある世界では闇の何とかギルドなんてものは存在し得ないもんね。

 まあ、警備に関しては俺が口出しするべき事じゃないから。

 改めて居間(リビング)を見回すと一家団欒を絵に描いたような光景だった。

 ソファーにゆったりと座って息子(ジーク)を抱いている(ハスィー)

 名画過ぎて眩しい。

 母子の両方ともマジで美形だからな。

 (ハスィー)はもちろんだけど、息子(ジーク)軽小説(ラノベ)によく出てくる王子様のようだ。

 勝平(かっぺい)の癖に。

 こいつ、成長したらどうなるんだろう。

 乙女ゲームのメイン攻略対象はまず間違いないところだ。

 ヤジマ学園普通科に入学して生徒会長とかやっていたら、光の魔力に優れた平民の娘が入学してきそうだな。

 そう言えば俺の息子(ジーク)って大公の跡継ぎじゃないの。

 どうしてこうなった。

貴方(マコトさん)

 何か?」

 (ハスィー)に咎められてしまった。

 いやそうじゃないか。

 ちょっと変に思われただけかも。

 まさか産まれたばかりの自分の息子の将来に嫉妬していたとは言えない。

息子(ジーク)はあまり笑わないね」

 気になっていた事を言う。

 (シーラ)はずっとキャッキャッと笑っていたような気がするんだけど。

 息子(ジーク)はあまり声を上げない。

 いや寝ているわけじゃないみたいなんだよね。

 綺麗な紫色の瞳で(ハスィー)や俺をずっと追っていたりして。

 ちょっと不気味だ。

「そうですね。

 シーラが元気過ぎたので変に感じるだけだと思いますが。

 赤ん坊はそれぞれですよ」

「そうだよな」

 お医者さんの話では健康優良児で何も問題はないらしい。

 知能の発達が遅れているとかそういう事もなさそうだ。

 むしろ逆に、何というか瞳に知性を感じるんだよ。

 既に俺より頭が良さそうな。

 ひょっとして転生者か?

 俺が転移してきたくらいだから、あり得るかも。

「ございません。

 ジークはわたくしたちの息子でございます」

 怒られてしまった。

 まあいいか。

「ぱぱ!」

 庭に出ている(シーラ)が手を振りながら駆けてくる。

 いつ見てもはらはらするな。

 だってまだ足がしっかりしてないのに、転がるように全力で走るんだもん。

 あ、やっぱりコケた。

 ほとんど同時に並走してくれていた二頭(ふたり)の犬の人たちが地面にスライディングする。

 芝生だからよく滑るんだが、よくもまああんなに上手くキャッチできるもんだ。

 二頭(ふたり)とも慣れっこになっているのか声も立てずに(シーラ)の下敷きになっている。

 (シーラ)も全然気にせず起き上がって走り出した。

 少しは感謝しろよ!

「ぱぱ!」

 (シーラ)はそのまま居間(リビング)に駆け込んでくると俺に飛びついてきた。

 ソファーに腰掛けたまま受け止める。

 また重くなったような。

 マジで成長が早い。

「ぱぱ!

 かたぐるま!」

「はいはい」

 (ハスィー)やハマオルさん夫婦が生暖かい目で見守る中、俺は(シーラ)を肩に載せた。

 (シーラ)は俺の頭をポカポカ叩きながら喜んでいる。

 馬にされなかっただけマシか。

 ちなみに馬役は護衛の犬の人が担当してくれている。

 (シーラ)がまたがってもびくともしなさそうな巨大な(ひと)何頭(なんにん)かいるんだよね。

 ローテーションで護衛してくれているんだけど、(シーラ)を載せる事が名誉らしくて密かに指名を争っていると聞いている。

 ほどほどにね。

 ちなみに(シーラ)が寝るときは野生動物が添い寝役をやってくれている。

 (シーラ)が小さい頃は同じくらいの体長の猫の人が担当していたんだけど、今は(シーラ)がかなり大きくなったので犬の人に替わることもあるようだ。

 日本に居た頃、ネット動画で赤ちゃんをあやしたり一緒に寝たりする犬猫を時々見ていたけど、まさか自分の娘がリアルでそれをやるとは。

 ふと見ると(ハスィー)息子(ジーク)に授乳していた。

 眩しくて目を逸らす。

 すると、やはり娘に授乳するリズィレさんと目を逸らすハマオルさんが見えてしまった。

 父親というのはみんな同じか。

「そういえば娘さんの名前は決めたんですか?」

 ハマオルさんに聞いてみた。

「は。

 ティラナと」

「ティラナ・ムオ嬢ですか。

 いい名前ですね」

「恐縮でございます」

 ハマオルさんが笑み崩れた。

 珍しい。

 やっぱ娘は可愛いよね。

「リズィレには息子(ジーク)が時々お乳を貰っていますから」

 (ハスィー)が言った。

「そうなの?」

「おそれながら。

 私は乳の出が良いので時折差し上げております」

 リズィレさんもそんなに謙らなくてもいいのに。

「ご身分が違います」

 さいですか。

 まあ、俺たちは大公一家でリズィレさんは近衛騎士の婚約者だからな。

 でもティラナちゃんって息子(ジーク)の乳姉妹になるよね?

「畏れ多いことでございます。

 私の娘がそのような大役を」

「リズィレの娘なら安心です。

 息子(ジーク)をよろしくお願いしますね」

 (ハスィー)が声をかけると、偶然かもしれないけど浅黒い肌の幼女が何か声を上げた。

 気合いが入っているけど、まさかね?

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