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サラリーマン戦記 ~スローライフで世界征服~  作者: 笛伊豆
第五部 第二章 俺が無地大公?

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24.ヤジマ財団?

 これで後継者の問題は片付いた。

 後の人事は次期会長代理(トップ)に任せてしまえばいい。

 どっちみち、これまでだって俺はノータッチだったのだ。

 第一俺には企業経営の事なんか判らないからな。

 ラナエ嬢とジェイルくんが上手くやってくれるだろう。

 ちなみにラナエ嬢って俺の中では未だに「嬢」なんだよね。

 まだ未婚ということもあるけどどうしても高位貴族の令嬢という印象(イメージ)が抜けない。

 日本で言うとそろそろ大学を卒業して就職する年齢なんだけど、今やソラージュを代表する企業群(コングロマリット)の総帥(代理)だからなあ。

 「嬢」ではまずいかも。

 それを本人に言うと言下に否定された。

「わたくしはマコトさんの配下でございます。

 下手な敬称はお断りします。

 それに『嬢』という呼ばれ方は気に入っておりますので」

 さいですか。

 まあ、確かに今のラナエ嬢を「嬢」と呼ぶのは俺くらいなものだけどな。

 噂によると、ラナエ嬢はソラージュはおろか他の国でも理想的な女性経営者として評価されているそうだ。

 高位貴族の令嬢でありながら実家の力を借りず、(ヤジママコト)の元でアレスト興業舎の起業時から着実に実績を積み重ねてきた女傑。

 フリフリドレスで仕事するというスタイルは今や女性経営者の(トレードマーク)にもなっているという。

 ラナエ嬢にはそんなつもりはなかったらしいけどね。

 あれは単に他の服を持ってなかったから仕方なく着ていたと言っていたから。

 まあいいか。

 ヤジマ商会の大幹部たちを集めて後継者を決めた事を伝えると、みんな賛成してくれた。

 早速準備にかかるそうだ。

「退任されるマコトさんの受け皿が必要になりますね。

 何かお考えが?」

 ユマさんに聞かれて俺は「非営利団体(NPO)」の設立とその首長(トップ)に就任するつもりであることを伝えた。

 俺の資産はそっちに移して一括で管理して貰いたい。

「なるほど。

 前におっしゃっておられた『利益を目的としない団体』でございますね」

「そう。

 俺の世界(日本)ではそういう団体を『財団』と呼んでいたと思う」

 よく知らないけど。

 確か「特定の目的を持った集団」的な概念で、財産管理とかも出来るはずだ。

 ○ル・ゲイツとかザッカーバー○とかも自分の財産をそっちに移したはずだからね。

 税金面で色々と有利らしい。

 こっちの世界ではどうかな。

 まあいい。

「判りました。

 実を言えば既にソラージュのギルドにその趣旨の団体を登録してございます」

 ユマさんが事も無げに言った。

 やっぱそうか。

 やってないはずがない。

 前に話した時点で将来の布石を打っていたんだろう。

 略術の戦将(ユマさん)ってそう言う人だから(笑)。

「早速手続きにかかります」

「よろしく」

 よし。

 これで後は俺がヤジマ商会を辞め……じゃなくて名誉会長とやらになればいいだけだ。

 同時にその非営利団体の理事長とかに就任する。

 ヤジマ商会の方は名誉職なんだけど、実は非営利団体の理事長も実質似たようなものだ。

 何かやっているフリをするだけだからな。

 まあ、多分ユマさんが一緒に異動してくるはずだからお任せしよう。

 俺や家族が一生食っていける程度の資産を残してくれれば、後は自由にしていいので。

「……かしこまりました。

 我が(あるじ)

 ユマさん、何か瞳が燃えてない?

 いや別にいいんですが。

 早速議論を始めたヤジマ商会の幹部連中を残して俺は撤退した。

 後はよろしく。

 俺は家庭サービスがありますので。

 居間(リビング)に戻ると(シーラ)が飛びついてくる。

「ぱぱ!

 あそんで!」

 はいはい。

 そうやってのんびりしていると、ある日連絡が来た。

 俺の新しい会舎じゃなくて団体が正式に立ち上がったそうだ。

 その名も「ヤジマ財団」。

 仮本部としてヤジマ屋敷(おれんち)の近くの屋敷が改装されるらしい。

 俺はそこに通勤することになると。

 と思ったけどユマさんによれば毎日出てくる必要はないということだった。

 行ってもやることないからね。

 憧れのニート生活だ。

 ていうか俺はそもそも(ハスィー)が出産するまではヤジマ屋敷(ここ)を動くつもりはないんだよ。

 父親の義務として今度こそ出産に立ち会いたい。

「承知しております。

 我が(あるじ)の手を煩わせるほどの事ではございません。

 本部の建設も計画しておりますので」

 ユマさんが言ってきたので了解しておく。

 本部って何のために? とか思ったけど何かあるんだろう。

 予算内でやってくれるのなら俺は構いませんので。

 だけどその予算編成のための俺の資産計上が難航しているらしかった。

「マコトさんの財産が莫大すぎる上に権利関係が複雑に入り組んでおりまして。

 流動資産化可能なものはヤジマ財団に移行出来ますが、それ以外の資産はむしろ現行のまま貸し出す形にした方が」

 ヒューリアさんに言われて返す。

「何でも自由にやって下さい。

 多少、俺が損することになっても構いませんので」

 面倒くさい事は手を着けなければいいのだ。

「お心のままに」

 そういうのは専門家(プロ)にお任せします。

 その後、何度かヤジマ商会の本舎に行ってみんなに挨拶したり、ルディン陛下やミラス王太子に呼ばれて王宮や王太子府に行ったりして過ごした。

 全部日帰りだ。

 (ハスィー)のお腹が大きくなっていて、まだ予定日は先だけどいつ早産してもおかしくないと言われているんだよな。

 ヤジマ商会会長の退任式なんていう話もあったんだけど、(ハスィー)の出産が終わってからにして貰った。

 実質的にもうラナエ嬢に引き継ぎが終わっているというか、そもそも俺が帝国に行っている間にほとんど新体制に移行していたらしい。

 それはそうだ。

 だって俺がいないんだから、誰かがヤジマ商会を率いるしかないからね。

 ユマさんも俺に付いてきてしまったから選択肢は限られていた。

 シルさんやカールさんもいなかったし。

 ジェイルくんが裏方に徹して、ラナエ嬢がヤジマ商会を仕切っていたのだ。

 何の事はない、別に俺が決断しなくても後継者は決まっていたな。

「そんなことはありません。

 ラナエ殿もマコトさんが自らお願いしたからすんなりと会長代理を引き受けたのだと思いますよ」

 ジェイルくんが言ってくれたけど、どうかな。

 まあいい。

 ルディン陛下やミラス王太子殿下にも了承して貰った。

 でもあいかわらず何か誤解している風なんだよね。

 俺が新しい事を始めるためにヤジマ商会を離れたとか。

 いよいよ始まるのですね、とか言われたりして。

 何も始まらないよ!

 始まるとしたら俺のニート生活だ。

 ところで心配していた帝国皇太子殿下(オウルさん)の来襲はなかった。

 何でも帝国政府内のゴタゴタで動けないらしい。

 というよりは周りから「とりあえず帝国内の体制を固めてからソラージュ来訪を」と釘を刺されてしまったらしく、毎週のように手紙が来る。

 一刻も早くお側に駆け付けたいのですが、というような内容で、その度に俺はまず帝国での立場を固めて下さいと返事をしていた。

 いや返さないと倍くらいぶ厚い手紙が来るんだよ!

 しかもナーダム興業舎とセルリユ興業舎の間で試験的に航空便(ホットライン)の運用を始めているとかで、手紙を出したら一日で届くようになってしまった。

 これについてはソラージュ王政府も関心を示していて、早速帝国政府や他の国との間での高速連絡網の構築依頼が来たということだった。

「本当は外務省などで構築したいところなのでしょうが、他国に対して国営の事業を押しつけるわけにはいきませんからね。

 当面はヤジマ航空便(クーリエ)の特別部門で対応します」

 ジェイルくんが報告してくれたけど、どうでもいいのでよろしく。

 ナーダム興業舎支配人のロロニア嬢から恨みつらみが籠もった手紙が届いたのでラナエ嬢に相談したら切って捨てられた。

 帝国での事業を任せられるほどの人材がロロニア嬢以外にいないそうだ。

 騙された、との怨念が籠もった手紙を俺に寄越されてもね。

 元凶のユマさんは逃げてしまって捕まらないし。

 そう。

 略術の戦将(ユマさん)の姿が見えない。

 ヤジマ財団の事で奔走しているらしいけど、何で?

 俺のニート生活のための隠蔽(カムフラージュ)なだけなんですけど。

「ユマはヤジマ商会の戦略室長を退任しました。

 ノール殿と共にヤジマ財団に移籍です」

 ラナエ嬢がそっけなく伝えてくれた。

 そうなの!

 一足先に動いたか。

 ちょっと待て。

 ユマさんほどの人が専任でやる仕事ってヤジマ財団にあるの?

 ていうかユマさん、何しようとしているんだ?

 慌てて呼ぶと、ユマさんは特に急いだ様子もなく現れて言った。

「我が(あるじ)はお気になさらず。

 私が状況を整えてご覧にいれますので」

 いや、その状況って何なのでしょうか。

「もちろん我が(あるじ)の偉業を行うための体制造りでございます。

 既にヤジマ商会関連企業のあらゆる部門から最精鋭の人材を引き抜きました。

 ご安心下さい。

 我が(あるじ)の手足となって動く最強の組織をご用意させて頂きます」

 パネェ。

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