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サラリーマン戦記 ~スローライフで世界征服~  作者: 笛伊豆
第五部 第二章 俺が無地大公?

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23.ゲット?

 後で聞いたんだけど、あの時のメイドと給仕の人たちは仲間達に大人気だそうだ。

 ていうか羨ましがられているらしい。

 女神(ハスィー)の「力」を直に感じられる機会を与えられるのはめったにない事だということで。

 しかも気絶もせずにそれを受け止めることが出来たということは女神(ハスィー)の祝福を受けたことになるのだと。

 何かのレベルアップに繋がるとか?

 実際に(ハスィー)の「祝福」を受けた者が急に仕事ができるようになったりすることもあるようで、だからヤジマ屋敷でメイドや給仕の職につけるのは大変な栄誉ということだった。

 実は物凄い競争率で、常に順番待ちの長蛇の列があるそうだ。

 ますます軽小説(ラノベ)になってきたな。

 でも(ハスィー)は別に女神じゃないし、多少神聖がかっていても単なる俺の嫁であり妻なだけなんだよなあ。

 期待させて悪いけど。

「何の。

 奥方(ハスィー)様ご自身もそうでございますが、むしろ(あるじ)殿の妻であるという事実が大きいかと」

 ハマオルさんがいつもの妄言を言ってきた。

「俺は関係ないと思うけど」

「とんでもございません。

 (あるじ)殿は既に教団の僧正様並の畏敬の的となっております。

 ヤジマ学園に安置されている(あるじ)殿の像を拝みに来る者どもで正門の前がいつも混雑しているとか。

 (あるじ)殿を模した小さな像やお札を売る屋台が何台も並んでいて大盛況とのことでございます」

 何てこった!

 ていうかその屋台、セルリユ興業舎の手先じゃないよね?

「自営と聞いておりますが」

「が?」

「像やお札を製造しているのはセルリユ興業舎の子会舎でございます。

 ヤジマ商会のマークがついている物が公式とされておりまして、既に偽物も出回っているらしく。

 製造元を見つけ次第摘発しているとの報告を受けております」

 さいですか。

 いや、別にいいんだけどね。

 俺のブランドで儲けるのは構わないし。

 でも俺をネタにされている割にはリターンがないというのもちょっと。

「セルリユ興業舎の大株主は(あるじ)殿でございますよ?

 売り上げが上がれば配当が増えるのでは」

 そうでした!

 ますます文句が言えなくなってしまった。

 ラナエ嬢辺りが裏で動いているんだろうな。

 あの人は儲けになると見るや俺どころか親友であるはずの(ハスィー)すら何の躊躇いもなく売るからな。

 そのくらいでないと世知辛い世の中を渡っていけないのか。

 よし判った。

 そっちがそう出るのなら俺にも考えがあるぞ。

 でもその前に他の人の意見も聞いておかないと。

 いや、ユマさんからヤジマ商会の人事について決めてくれと言われているのだ。

 俺がどうしても決められないのならユマさんたちが何とかするそうだけど、やはり俺の後継者は俺が決めた方がいいと言われてしまって。

 呼ばれてやってきたジェイルくんに打診してみたら即座に拒否された。

「私はヤジマ商会の大番頭です。

 それ以外のものになるつもりはありません」

 うん。

 そう言うだろうと思った。

 ジェイルくんは清々しいほど一本筋の通った人だからね。

 しかも自分の資質を弁えていて揺るがない。

 大番頭という立場はジェイルくんが最高のパフォーマンスを発揮できる地位なんだろう。

 サポート型だからな。

 もちろん自分がトップに立ってもやっていけるけど、あまり好みではなさそうだ。

 能力じゃなくて性向の問題なんだよ。

「判った。

 じゃあジェイルくんの意見を聞かせて欲しい。

 ヤジマ商会の次期会長には誰が相応しいと思う?」

 参考意見として聞きたい。

「ヤジマ商会の会長(トップ)はマコトさん以外には有り得ません、と言いたい所ですが」

 ジェイルくんは不敵に笑った。

「そうも言っていられませんね。

 私の意見ですか?」

「そう。

 参考にしたいから自由に言って欲しい」

「判りました。

 ところで念のためにお聞きしますが、現在のヤジマ商会の幹部以外から登用するおつもりは?」

「ない」

 それはそうだ。

 そんなの誰も納得しないよ。

「ならば消去法で数えて見ましょうか。

 まずはシルレラ様です。

 アレスト興業舎立ち上げ当時からマコトさんと一緒にやってきた大幹部で帝国皇女殿下。

 現時点でも野生動物関連事業の本部長であられます。

 次期会長としての資格は充分では」

 それは俺も考えたけどね。

 でも帝国の皇族をソラージュの企業のトップにもってくるのはちょっと。

 俺も帝国皇子だけど、その前にソラージュの貴族だったからね。

 更に言えば、シルさんの気質からして会長なんか拒否されそうだ。

「そうですね。

 私も同じ意見です。

 同じ理由でカル様も駄目ですね。

 ご本人がやりたがらないでしょう。

 ではハスィー様」

「却下」

 いや消去法だから名前が出て来たんだと思うけど、傾国姫をここで持ち出すわけにはいかないだろう。

 案外うまくいくかもしれないけど、俺が嫌だ。

 俺の嫁は専業主婦(違)であって欲しい。

 間違いなく無理だろうけど(泣)。

「ラナエ殿は?

 ヤジマ商会の事業本部長で実質的な事業体のトップです。

 同じくアレスト興業舎時代からの配下。

 ソラージュ侯爵家の出で血筋も良く、有能極まりない女傑」

 うーん。

 ミクファール侯爵家とは一線を画しているみたいだし、いいかもしれないけど会長はどうかな。

 あの人もどっちかというと裏方(うらかた)向きという気がするし。

「一時期、ヤジマ商会の会長代理を務めて頂いたアレスト前々伯爵閣下は?」

 俺が北方親善に行っていた時の代理をやって貰ったっけ。

 でもあの人、名前だけだから引き受けてくれたような。

 実質的なトップだと言われたら断ってくるだろう。

「後は現在エラの事業をまとめているフォムや、ヒューリア・ロロニアなどくらいですが」

 無理くさいなあ。

 さすがのジェイルくんもここらで打ち止めのようだった。

 それはそうか。

 相応しい人がいるなら最初からこんな話にはなってなかったはずだしね。

 そもそも一番適任なジェイルくんに断られた時点で既に座礁していたりして。

 ちなみに最強の指し手たるユマさんの名前が出なかったのは、ジェイルくんもよく判っているからだ。

 あの人が次期会長なんかやるはずがない。

 どんな状況になろうが俺にくっついてくる。

 こないだの打ち合わせでも俺が作るはずの組織についてもう色々言っていたからな。

 そっちに移籍する気満々だ。

 ジェイルくんに礼を言って帰って貰い、俺は居間(リビング)で考え込んだ。

 ユマさんに辺りに投げてもいいんだけど、やっぱ自分の進退に関わる話は自分で決めたいよね。

 幸い(シーラ)はお昼寝の時間とかで乱入してこなかったし、(ハスィー)も付き添って寝ているらしくて一人で考えることが出来た。

 そうだな。

 (ハスィー)に相談したとしても俺に賛成するだけだろうし。

 それしかないか。

 決めてしまおう。

 俺はハマオルさんに頼んで意中の人を呼んで貰った。

「マコトさん?」

 居間(リビング)に入って来たその人は初めて合った頃とあまり変わっていなかった。

 もうとっくに二十歳を超えたはずなのに、あいかわらず外見的には美少女なんだよね。

 もっとも醸し出す威厳やカリスマでただ者じゃ無いことがすぐに判る。

 昔の少女漫画に出て来た「学園の女王」のようだ。

 あれから着実に成長して、今や押しも押されぬ大経営者だ。

「お呼びだてして済まない。

 ラナエさん」

「構いませんが。

 なるほど。

 わたくしに改まっておっしゃりたいことがおありのようですわね」

 ラナエ嬢はいつものように皮肉げに言ってソファーに腰を降ろした。

 良かった。

 この人は変わってない。

 身分差なんか関係ないからね。

 俺が平民だった時と対応が同じだ。

 今や大公なんだけど。

「ヤジマ商会の次期会長をお願いしたい」

 単刀直入に言う。

「お断りします」

 単刀直入に返された。

 やっぱし(泣)。

「そもそもわたくしはマコトさんの配下です。

 会長(トップ)には相応しくございません」

「実質的には既にトップと聞いているけど」

「それでもです。

 わたくしは貴方(マコトさん)の配下でいたい。

 これはわたくしの我が儘です。

 会長などになってしまえば、マコトさんと切り離されてしまいます」

 そんなもんですかね。

 まあ、確かに俺が名誉会長の立場に退いたとしたら会長はその配下とは言い難いからな。

 でもそれって形だけの問題だよね?

(こだわ)らせて頂きます」

 頑固な所も変わってないな。

 ならば仕方がない。

 奥の手を出すか。

「会長代理はどう?」

「……」

「俺が名誉会長でラナエさんが会長代理。

 これなら俺の配下と言えないこともないでしょう?」

 俺の秘策はこれだ。

 「会長代理」というのは会長の立場を代行しているわけで、つまりトップじゃないことになる。

 もちろん詭弁だけど、ラナエ嬢の要求は満たしているはずだ。

 ラナエ嬢はしばらく俺をじっと見つめてからため息をついた。

「……仕方がありませんね。

 判りました。

 お引き受け致します」

 会長代理、ゲットだぜ!

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