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サラリーマン戦記 ~スローライフで世界征服~  作者: 笛伊豆
第五部 第一章 俺が後ろ盾?

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14.竜虎対決?

 ナーダム興業舎に着くまでにレイリさんと色々話した。

 雑談だったけど。

 帝国軍情報局長であるにも関わらず、レイリさんは俺に対して全情報公開(フルオープン)だった。

 いいの?

 守秘義務とかあるのでは。

「皇族方はそのようなものを超越致します。

 それ以上にマコトさんおよびその随伴騎士や配下の方でございますので。

 これ以上安全な方々はおられないほどです」

 さいですか。

 皇族は不可侵(アンタッチャブル)

 そういうことか。

 もっともレイリさんにしたって皇族なら誰にでもペラペラしゃべるというわけではないということだった。

 俺の場合は皇太子殿下(オウルさん)どころか皇帝(アリヤト)陛下のお墨付きもあるんだそうだ。

 何それ?

「陛下より許可を頂いております。

 ヤジマ商会に対して帝国は何も隠しません」

「そんなことしていいんですか?

 帝国政府にも色々あると思いますが」

「陛下がご許可なされたのでございますよ?

 これ以上のものはありますまい。

 もっとも」

 レイリさんは瞳を燦めかせた。

「マコトさんは教団の後援(バックアップ)も受けていらっしゃいますね。

 秘匿順位(セキュリティ)に関しては帝国政府より上でございます」

 バレてる!

 それはそうか。

 ユマさんすら恐れる帝国軍情報局だからな。

 あれ?

 レイリさんの役職って「帝国軍」の情報局長なんですか?

「左様でございます。

 帝国には他にも情報機関がございますよ」

 何と。

 でもそうだろうな。

 アメリカにも中央情報局(CIA)とか国家安全保障局(NSA)とか色々あるし。

 レイリさんの帝国軍情報局ってアメリカで言えば国防情報局(DIA)か。

 あれって長官が中将だったはずだから、つまり将軍だ。

 てことはレイリさんって軍の階級で言えば将軍?

「よくご存じでございますね。

 はい。

 私は帝国軍において将軍(ジェネラル)位を拝命しております」

 やっぱ大物だったよレイリさん!

 オウルさんは大佐だから、階級で言えばレイリさんの方が上だ。

 軍隊に所属している間は本来の身分が停止されるらしいから、名実共にオウルさんより立場が上だったわけか。

 もっとも今はオウルさんが退役? した上に帝国皇太子になってしまったから立場が逆転しているけど。

「私とオウルの間には身分があってないようなものでございます。

 それに今は共にマコトさんの配下。

 同格と言って良いかと」

 いや、レイリさんはまだ帝国軍辞めてないしヤジマ商会に入舎してないから違うと思います。

「心は既に」

 ヤバい。

 冗談なのか本気なのか判らん。

 オウルさんは露骨に本気だったからある意味簡単だったけど、レイリさんは複雑そうだからなあ。

 早いとこユマさんに押しつけよう。

「ユマ殿。

 ソラージュ王国ララネル公爵家令嬢、というよりはヤジマ商会戦略室長のユマ・ララネル殿でございますね」

「そうです。

 ユマさんがヤジマ商会を仕切ってますので」

 言ってしまっていいのか判らないけど、その程度の情報はレイリさんのことだからとっくに知っているはずだ。

「お目にかかるのが楽しみでございます」

 レイリさんは簡単に言ったけど、ちょっとビビッているような。

 それ以上はお互いに踏み込まないことにして、俺たちはナーダム興業舎に着くまで当たり障りがない会話をして過ごした。

 レイリさんは博識で気持ちがいい人だった。

 頭は切れる。

 いや激発する方じゃなくて、一言言えば十くらい理解するというか、聖徳太子的な頭脳の持ち主だ。

 さすがオウルさんの親戚。

 知能指数で言えば俺が知り合った人の中でもトップクラスなんじゃないのか。

 天才にも色々なタイプがあるな。

 ひょっとしたら知力に限って言えばユマさん以上かもしれない。

 そんな物凄い人にも関わらず、レイリさんは俺と会話の水準を合わせてくれていた。

 これ、バリバリにチェーンしたレーシングカーで公道走って信号待ちするようなもんじゃないのか。

「とんでもございません。

 私はマコトさんについていくだけで精一杯でございます」

 レイリさんが慌てて否定した。

 そんなはずはないでしょう。

「マコトさんの心の深淵が深すぎて、恐ろしく大量の断片的な情報(データ)が飛び交っている事が判る程度ですので。

 それでいて瞬間的に結論に収束する。

 素晴らしい」

 さいですか。

 またアレだな。

 俺の表層意識の下を乱れ飛んでいるいい加減な思考を拾っているらしい。

 結論に収束しているんじゃなくて、単にそう考えているだけなんだけどなあ。

 まあいいか。

 グダグダ話しているうちにナーダム興業舎に到着してくれて助かった。

 俺の家ということになっている屋敷の前にはユマさんが待っていてくれていた。

 ひょっとしてレイリさんが来るのを知っていた?

「違います。

 さすがに帝国軍情報局長殿をお連れになられるとは私にも予想外でございました」

 ユマさんは俺とレイリさんが馬車を降りるのを待って頭を下げた。

「マコトさん。

 お帰りなさいませ」

 それからレイリさんの方を向いて礼をとる。

「初めてお目にかかります。

 レイリ・ナルシナ殿。

 私がユマ・ララネルでございます」

「これはご丁寧に。

 レイリでございます。

 ユマ殿」

 綺麗なお姉さんと綺麗な娘さんの単なる初顔合わせに見えるんだけど、やっぱ何か厨二病的なアレが辺りに充満している気がする。

 でもいいのだ。

 お二人は出会った。

 後は任せた。

 俺は関係ない。

 もう引っ込んでいいよね?

「どうぞお休み下さいませ。

 お部屋のご用意は出来ております。

 我が(あるじ)

「ありがとう。

 それでは」

 俺は頭を軽く下げるとその場から撤退した。

 圧倒されたのかハマオルさんとラウネ嬢も無言でついてくる。

 やっぱ怖いよね。

「いえその」

「とても私などがお相手出来る方々ではございません。

 (あるじ)殿はさすがでございます」

 二人とも逃げ腰かよ!

 気持ちは判るけど。

 俺は自分の部屋に逃げ込んでとりあえずシャワーを浴びた。

 考えてみたらオウルさんの皇太子登極式の後、拉致られてから皇帝陛下や重臣の人たちに引き合わされて、しかもその後色々あったんだよな。

 疲れ切っているぞ。

 精神的に。

 自分で判る。

「夕食まで寝ます」

「お心のままに」

 着替えを持ってきてくれたラウネ嬢に引きこもりを宣言して、俺はベッドに飛び込んだ。

 もう慣れたけど人生ハードモードだな。

 こんなに立て続けに色々やらされるサラリーマンは他にはいないと思う。

 疲れで目が冴えている気がしたけど、はっと気づけば窓から夕陽が差し込んでいたから眠ったんだろう。

 こうやって俺は現実(リアル)から逃げることで何とか正気を保っているのだ。

 それにしても、今日で面倒がお仕舞いならいいけど。

 オウルさんが正式に帝国皇太子になったんだから、俺はソラージュに帰っていいんだよね?

 でも、よく覚えてないけど皇帝陛下に何か約束したような。

 いやいや、ソラージュに帰ってからでも出来ると信じたい。

 ハマオルさんに呼ばれて起き上がり、またシャワーを浴びてから夕食に行く。

 密かに恐れていたけどレイリさんの姿はなかった。

 ユマさんもいない。

 竜虎対決はどうなったんだろう。

「和やかに話していました。

 最後に雇用条件などを詰めていたようです」

 ロロニア嬢が報告してくれた。

 やっぱりヤジマ商会(うち)に入舎する気か。

 いや、別に嫌とかじゃないけど。

 これもユマさんの大戦略に入っているのかなあ。

 確かに帝国軍情報局長を引き込めたら帝国内では無敵になるだろうし。

 今でも無敵臭いけど。

「雇用条件って判りそう?」

「それはまだ。

 所属はナーダム興業舎ではなくヤジマ商会になるようです。

 あの方の情報網は帝国に留まらないとのことで」

 やっばしか!

 ユマさんも言っていたじゃないか。

 帝国の情報機関はソラージュなどより遙かに優れていると。

 その組織の一つの局長(トップ)なんだよ?

 いきなり役員クラスになっても不思議じゃない。

 いや、繰り返すけど別に嫌だというわけじゃないんだよ。

 ただ、ますます凄い人が増えるなあと。

「必要な事です。

 ヤジマ商会はそろそろ国際ネットワークで動く時期に来ておりますので」

 パネェ。

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